世界の再構築者は3匹の猫耳少女に殺される!? 2-7 最愛の妹③
「家族が来ていると言われて来てみたのですが、あなたは誰ですか? 私にはもう家族はいないのですけど……」
頭の中が真っ白になる。
どうして……。
今朝までは俺のことを覚えていたはずなのに……。
今、目の前の事実をなんとか否定しようとする。
だが、現実は非情にも容赦なく事実を叩きつけてくる。
俺を見るスズの瞳が事実であり、その瞳に俺は他人として写っている。
そんなはずはない! だって……。
さらに、その事実を否定しようとするが、
いや、これは現実なんだ……。
口から出そうになった言葉を飲み込んだ。
改めて考えてみると、俺は逃げていたのだ。
妹だけは大丈夫。
自分の中でそう勝手に言い聞かせて、こうなる事を考えないようにあえて避けていたのだ。
自分にとって最も恐ろしい事であるから。
だが、もう逃げられない。
スズの瞳に写る自分の姿は事実であり、受け入れなくてはならない現実なのだから。
胸を抉り取られたような強い痛みを感じたが、自分の心をぐっと押さえ込んで。
「ごめん。間違いだった。」
「え?」
昇降口を後にした。
俺は、スズに無理矢理にでも自分のこと思い出させたかった。
妹と2人で歩んだ道には、思い出が語り尽くせないほどあるのだから。
しかし、思い出を語ってどうにかなるほど甘い状況でないことは、今までの経緯からも推測する事ができる。
ここまできたら、もう現実だの何だのはどうでもよい。
俺と強い絆で結ばれていた妹の記憶、いや、思い出すらも奪われたのだから。
先ほど考えていた現実離れした「誰か」の存在を否定する事ができなくなった。
ここで悪あがきをしたからといって、俺の知っている妹は戻ってこないだろう。
今はただ、妹の無事が確認できたのだから、これ以上のことは望む必要はない。
そして、俺が次にやることはもう決まっている。
その「誰か」を探してこの状況を元に戻させる。
それが、たとえ自分の手の届かない場所にいるものだったとしても諦めるつもりはない。
「妹を取り戻すためなら何でもやってやる。」
決意を口にすると守衛小屋のある校門まで力強く歩き出した。
守衛さんに笑顔を返すと、妹の通う学校を後にした。
「やっぱりあなたは面白いわぁ。」
その帰り道、背後から艶っぽい女の声が聞こえた瞬間、目の前が暗くなり意識が遠のいた。
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