魔王、猫になる。〜魔王さまのほのぼの世界征服ライフ〜 第17話 魔王、こけらに惑わされる。
我輩は魔王である。名はトラ吉。
我輩は叡智を授かりし魔王として元世界に君臨しておった。
大いなる力が必要な戦も数多く乗り越えてきたのだ。
戦の力とは、魔王単体での力ではなく、兵士の数と戦術だ。
戦術については我輩自ら指揮をとれば何の問題もないが、兵士の数は悩みどころだ。
我輩は優秀な眷族を多く従えていたが、戦に投じるほどの数ではない。
その数を補うために、我々魔族は自らの片割れから生まれる魔物(こけら)を利用する。
上流階級の魔族であるほど、より優秀な魔物(こけら)を生み出すことができる。
そう、魔族の戦にとって兵士となる魔物(こけら)を生み出すことは非常に重要なことなのだ。
この世界でもそれが可能であれば、戦力を一気に増加させることが可能だろう。
「ちゃーちゃん、抜け毛ひどくなってきたからブラッシングしようか〜」
主人①よ、「ぶらっしんぐ」とな、よかろう。
だが、手にしている魔道具は初めて見るが何なのだ。
「お、こないだ注文してたファーミ○ーターだね。それアンダーコートがごっそり取れるらしいよ。」
主人②よ、また何か買ったのか。
最近、魔道具を買いすぎではないか。
「そうなのよぉ。めっちゃ楽しみ〜」
「そうだねぇ。どのぐらい取れるんだろ〜」
主人①②よ、顔が怖いのだが。
うむ。
その魔道具の性能とやらを試させてもらおうではないか。
『シャリ、シャリ、シャリ』
な、何だこの音は。
到底ブラシとは思えぬぞ。
か、かなり気持ちが良いのだが、このような魔道具に屈するわけに……。
「あ〜、ちゃーちゃん気持ちよくてひっくり返っちゃった。」
ば、馬鹿なことを言うではない。
腹の方でも性能を試したいだけなのだ。
「うわ……、ちょっとブラシの先端見てみなよ。」
「あぁ……」
ん?
何と、我輩の衣がごっそりとれているではないか。
少し心配になるのだが、大丈夫なのか。
「よし、これをまとめてこうしてっと。」
主人②よ、我輩の衣を集めて何をしだすのだ?
集めて手でこねているようだが。
「できた! 名付けてちゃー玉!!」
主人②よ、いい年をして何を馬鹿なことを。
「これを、このおもちゃの先端につけてー」
『ちょこちょこ』
な、なに!
先ほどの玉が動き出しおった。
我輩の片割れから魔物(こけら)を生み出したと言うのか。
そうか、我輩のこの猫の衣はそのような用途もあったのか。
これは、この世界での戦力拡大に使えるぞ。
「ほら、ちゃー玉だよ〜」
主人②よ、我輩の魔物(こけら)を我輩で試そうと言うのか。
魔物(こけら)が本物にかなうわけがなかろう。
「……」
は!?
我輩が自らの魔物(こけら)に惑わされるなどと。
主人②は、魔王である我輩の魔物(こけら)をも操ることができるのか。
これは調査が必要だ。
「お、ちゃーちゃんめっちゃやる気だよ!」
主人②よ、しばし付き合ってもらうぞ!
そう、その時が来るまでは。
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