世界の再構築者は3匹の猫耳少女に殺される!? 2-6 最愛の妹②
「なんだか場違いだよな。」
昇降口へと来たタカシは正面にあった来客用の椅子に座ってスズを待っていた。
その間、何人もの生徒が往来していたが物珍しそうな視線を向けてくる。
校舎の中に入っても、やはり地震などなかったかのように静かであった。
横切る生徒に地震の被害を確認しようと何度か声をかけようとしたが、直前で言葉を飲み込んでしまう。
皆、あまりにも平然としているからだ。
先ほどまでの出来事が本当に事実であるか自信がなくなる。
(俺が焦ってたらスズも不安になっちゃうよな。)
タカシは一度冷静になって、先ほどまでの出来事を振り返ることにした。
少なくともタカシが通っている高校の校舎内は地震により混乱していた。
この学校はタカシの学校から自転車で数分の距離しか離れていない。
まさか、地盤の関係でここでは揺れがさほど大きくなかったのだろうかと考えてみる。
だが、それもありえないだろう。
仮にそんなことがあったとしても、ここまで来る途中の街中でも多少の被害が出ているはずである。
それが高校の校舎を出てすぐの街中でさえ井戸端会議が開催されていたほどだ。
おばさま方が笑いながら話していたところを見るに、あの規模の地震の直後に笑い話など考えられない。
校舎の外には地震の影響はなかったと考えて良さそうである。
(学生証か。)
説明がつかない事ばかりであるが、学生証に至っては、一度無くなったのにもかかわらず気づかないうちに戻ってきていたのだ。
いったいどういうことなのか見当がつかない。
守衛さんに見せる直前に学生手帳を開いて学生証が入っていないことはタカシ自身も確認済みであった。
さらに職員室で担任に学生手帳を開いて見せた時に至っては担任も含めて確認済みである。
見間違いなどではない。
先ほどまでは確実に無かったのである。
それが、このタイミングで学生証が戻ってきたことは謎ではあるが不幸中の幸だった。
こんな真昼間に学生服でうろついていたら補導されかねない。
そこで学生証が無かったら今度こそ警察のお世話になってしまうところだ。
(それにしても、誰も俺のことを覚えていないってどういうことなんだ。)
これについては、生徒だけならクラスぐるみの虐めとして説明がつきそうではあった。
だが、担任も含めてタカシの事を覚えていなかった事が不可解である。
ニュースなどで見たことがあるが担任もグルとなった虐めというのも世の中にはあるとのことだ。
しかし、学校にはタカシが在学していた記録すら残っていなかった。
担任どころか学校ぐるみの虐めなどありえるのだろうか。
学校はそんなメリットがないことを率先して行う理由がない。
そう考えると。
(ありえないよな。)
誰かが意図的に皆の記憶と学校の記録を操作して、あの学校からタカシという存在を抹消したのだろうか。
校舎だけの地震や学生証の件もそれに付随する事象なのか。
タカシはそう考えたところで。
(バカバカしい。)
自分の考えが明らかに現実離れしすぎていることに気づき、考えるのをやめた。
人間にそんな事ができるはずがない。
(人間には? 人間以外なら……。いやいや、また、俺は何を考えてるんだっての。)
もう人間では説明できない。
頭の混乱がピークを迎え視線を下に落としていると、誰かの足が視界に入っていることに気づく。
ゆっくりと顔を上げると、そこには妹のスズが立っていた。
スズは無事だった。
安堵から、タカシの瞳から一筋の涙が頬へこぼれ落ちた。
「よかった。スズ、無事だったんだな。」
また妹の、スズの笑顔が見れる。
そう思い、スズの顔を見るが。
「あなたは誰ですか?」
タカシは、残された唯一の支えを失い地獄の底に突き落とされた。
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