魔王、猫になる。 第6話 魔王、王座を奪う。
我輩は魔王である。名はトラ吉。
魔界では、王であるこの我輩にこそふさわしい神器と名高き代物を数多く保有しておった。
その中でも、我輩が最も気に入っておったのは王座であったな。
意外であろう?
魔王だからといって武器を好むわけではないのだ。
我輩は叡智を授かりし魔王ぞ。
我輩の知恵に変わる武器など、いかなる世にもありはせん。
では、なぜ王座が気に入っておったか教えてやろう。
王というのはああ見えて座り仕事が多いのだ。
第2話を見てもらうとわかるが、定期的にしもべが我輩への忠誠を誓いに来るのだ。
つまりは、この世で言うところの付き合いというやつだな。
とは言っても、長時間座ると言うのも難儀なものでな。
腰をやった時もあっての。
そんな時に、人間界に1日中顔色も変えずに王座に座りっぱなしの王がいるという朗報が舞い込んできたのだ。
しかも、そやつは腰痛にも苦しんでおらんと言うのだ。
我輩はその情報に真っ先に飛びついて、次の日にはその国を滅ぼし、その王の王座を奪い取ってやったわ。
奪い取った後でわかったことなのだが、それは神器とされる王座で、座ればひとたびに腰痛が治ってしまうというのだ。
早速、我輩も座ってみたら度肝を抜かれたわ。
なんとその椅子は、足首から太もも、尻から腰、背中から肩、はたまた頭にかけて、なんとも心地よい圧力で指圧をしてくれるのだ。
動力は魔力であったが、魔王である我輩にとって魔力など売るほどあったのだ。
営業時間は常時稼働しっぱなしよ。
ちょいと昔話が過ぎたが、この世にはそのような王座は存在しないであろう。
だが、せめて我輩のこの丸みを帯びた身体にぴったりな王座を見つけたいものだ。
「じゃじゃーん! ついに買っちゃいました! 骨盤矯正チェアー!(ドラ◯◯ん風)」
「うわ! それ結構するやつだろ! ちゃんと使って元とれよ。」
主人①よ、なんだその「こつばんきょうせいちぇあー」というのは。
食えんのか。
くだらん。
「設置してみたよ! 早速座ってみよう!」
騒々しくて目が覚めてしまったでは……なに!?
主人①よ! それは椅子とな!
その曲線、その包み込むような背もたれ。
我の身体のためにあるようなものではないか。
「よいしょ……」
『ささっ!』
「あ! 危ない!」
「え……なに? って! ちゃーちゃん!」
主人①よ、早い者勝ちぞ。
「「……」」
主人①②よ何を呆けて我輩の王座を見ておるのだ?
「これいくらしたんだっけ?」
「お、恐ろしくて言えない……」
主人①よ、値も張るとな。
まさしく魔王である我輩にぴったりではないか。
どれ、王座も見つけたことだ。
我がしもべチャッピーでも待つとするか。
そう、その時が来るまでは。
ーーー
主人が王座を奪還しようとするも、反撃に出るトラ吉
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