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【新春犯人当て】天才美少女探偵・ふぁぼんの事件簿 ~四〇〇ml会長毒殺事件~

(※1/3 13:00確定版)
美少女名探偵ファボンといっしょに事件の真相を暴こう!

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応募〆切   2024/1/31(〆切後も景品はありませんが答え合わせは歓迎します)

INTRO

 ごきげんよう。私の名前はファボン・イリイニチナ・ファボルスカヤ。ロマノフ王朝にそのルーツを持つ名門ファボルスキー家の第十五代目当主にして、美妖精ルサールカも裸足で逃げ出す世界一の美少女。東京大学きらきら同好会に咲いた一輪の白いカモミール。
 ……そしてなにより、世界一の名探偵なのさ。
 さて。いま、私の目の前でひとりの男が死んでいる。せまっくるしい六畳の部室の床に四肢を投げ出し、眼を見開いて完全に絶命している。死因は、毒。男の足元には、口をつけたばかりのマックスコーヒー五〇〇ミリリットルペットボトルがひとつ。ボトルの口からはただの水が、とくとくと流れ出し、地面を濡らしている。男の傍らには泣きわめき、必死に声をかける男がふたり。そして、部室に残る最後の人物は、険しい目で私の顔を睨みつけている。
 睨みつけられるのも無理はない。だって、そのペットボトルの元の持ち主はこの私なのだから。その証拠にボトルの上部には黒いマーカーでニンヒドリンマークが可愛く書かれている。私の筆跡。間違いもしない、ほんの四〇分前に生協ショップで購入したマックスコーヒーだ。それを飲んだ男が死んだ。ならば、至極当然、まず真っ先に疑われるのはこの私。
 私を睨みつける眼が三対に増える。……まったく、レディーをそんな眼で見るなんて失礼じゃあないか。
 仕方ない。それでは、身の潔白を示すとしよう。
 もちろん、真実を解き明かすことによって。

事件篇 ~起きたこと~

 まずは今日一日を最初から振り返ろう。我らが東京大学きらきら同好会会長400㎖から、例会開催の連絡が届いたのは午後二時丁度のことだった。「今日一七時から部室で会議です、かかってこいや!」とグループチャットに一言。……嗚呼、ひと遣いの荒い会長サマだ。何もたちの悪い風邪の流行っているこんな季節に対面例会なんて。この命令に対し、きらきら同好会の良心、羽柴実くんと、夏祭ひとでくんは「四限が終わったら行きます」と返す。一方、物理工学科の百宙ちゃんは「実験が終わり次第向かいますね」とのこと。理系は実験があるから大変だ! 我が西洋史学専修とはまるで大違い。
 午後四時一〇分を過ぎたころ、私はゆるゆると大学に向かった。私の下宿から大学の南門までは五分とない。みなさんがご存じのように、東京大学きらきら同好会の部室は第二食堂の三階にあるから、南門からおよそ三分歩けばたどり着く。午後四時二〇分、私は道中の生協ショップに寄り道をした。お目当てはもちろん、温かいマックスコーヒー五〇〇ミリリットル。常々思うがこの世にこれほど美味な飲み物はない。これが大嫌いな人間は人生の半分を損していると思うね。誰とは言わないけど。
 店奥の加熱棚に、見慣れた全面真っ黄色のラベルを見つける。なんたる幸運、その日の在庫はこの一本がラストだった。小躍りしながらレジに向かっていると、
「やっほー、ふぁぼんちゃん、こんにちは」
「ん? 百宙か。もう実験が終わったんだ、早かったな」
 背後から声をかけてきたのは百宙。その右手には買い物カゴが握られている。
「会議用に飲み物買っとこうかな、って。ドクペとお水と、あと、400㎖のためのお茶。会長のお茶好きはほら、みんな知ってるから。ふぁぼんちゃんは?」
「私はもう買ったよ、いつものやつ。早いけど、二人で部室行こうか」
 そういって、私と百宙は会計を済ませ、部室に向かった。

 一階の受付で鍵を受け取り、部室を開錠。六畳間の雑多な部屋は大判コミックとフィギュアと、こたつ、扇風機、給湯器といった家電で埋め尽くされている。私はそそくさと入室すると、こたつの上にあったマッキーで、ペットボトルにニンヒドリンマークを書いた。……よし、これで間違われる心配はない。スクリューキャップをひねって開けると、部屋全体に甘ったるい練乳の強烈な香りが広がった。ずずっ……と一口。うん、この味。私は実に典雅な至福に包まれた。見ると、百宙はこたつにペットボトルを並べた後、ごみ箱を掃除していた。
「汚れがたまってると、嫌な臭いしますよね」と百宙。

ごみ袋を縛って部屋の外に出し、別のごみ袋をすぐにセット。綺麗好きな百宙らしい行動だ。
 私はスマホを開いて、グループチャットにメッセージを送った。「部室の鍵開けました。百宙さんと一緒です」。原則、きらきら同好会では一度開錠したらその日の鍵は開けっ放し。私が責任を持って鍵を管理することになる。
 コーヒーをもう一口啜ってほっと一息。その時、スマホのリマインダーがぴこん、と音を立てた。

 本日の予定:十六時三〇分から「指導教員面談」

 ……まずい。血の気が引くとはこのことだ。あと五分しかないじゃないか!

「ごめん、百宙! 面談あった。ちょっと行ってくる、会議には間に合うように戻るから!」
「ふぁぼんちゃん!?」
 コーヒーを一息に飲み干すと、ボトルをごみ箱に投げ捨てる。驚く百宙をよそに私は逃げるように部室を走り去った。

 それから三〇分後。卒論の進捗状況について指導教員にさんざん絞られた私は、夕暮れの中をトボトボと歩き、部室に戻った。扉を開けると、そこには羽柴実とひとでの姿があった。
「どうも」と羽柴実。
「400㎖会長は? まだ来てないのか?」
 私の問いかけに対し、ひとでは鼻水をずびずび啜りながら、
「グループチャット見てないんですか? バイト先からの電話で、建物外でお話し中です。会議までには終わると思いますよ」
 と鼻声で答えた。
「まったく、仕方ない奴だなあ!」
 羽柴実、ひとでと少し話しているうちに、百宙がやってきた。どうやら図書館に行っていたらしい。その後、一分足らずのうちに、見慣れた坊主頭が入室してきた。400㎖会長の登場だ。
「お待ちしましたよ、会長」
 これは、ひとで。
「まあ、まだ一七時の一分前やから許して」
 400㎖は聞き馴染んだ関西弁でそういうと、後ろを向いてコホコホ咳をした。
「おい、大丈夫かい?」
 私は会長のほうに身を乗り出した。
「いま薬を飲むから心配せえへんで」
 けれど、それが彼の最期の一言になった。
 ポケットから取り出した粉薬を一服し、卓上のペットボトルの中身を口に含んだ途端、彼は泡を吹いて昏倒したのだから。

出題篇

 さて、回想はこれにて終わった。私はゆっくりと眼を見開いた。
わが身の嫌疑を晴らすため、解くべき謎は二つ。

 一つ目。
 400㎖は誰に殺されたのか。

 二つ目。
 400㎖はなぜ私のペットボトルを持っていたのか。

 空気の圧迫感が増す中で、私は口角を釣り上げた。

 証拠は、すべてそろっている。

読者への挑戦状 


400㎖会長を殺したのは、ふぁぼん、羽柴実、ひとで、百宙のうち誰でしょう?

 ただし、以下の2点を前提とします。
①    犯人は単独犯です。
②    犯人以外は嘘をつきません。

資料篇

①事件当日の会話記録


②   3人の証言

羽柴実 「私は十六時四〇分まで授業を受けていました。その後、400㎖会長が紙コップがないと言っていたので、生協ショップに買い求めに行きました。しかし、販売していなかったので、一六時五五分に部室に行きました。その後、一分後にひとでが、さらにその一分後にふぁぼんがやってきました」

 

 ※授業出席にはアリバイあり。


ひとで 「わたしは一六時四五分まで授業を受けていました。その後、部室に向かいました。一六時五六分に部室に着きました。羽柴実が先にいました」


※授業出席にはアリバイあり。


百宙 「私はふぁぼんが部室を飛び出てから一〇分ほど部室にいました。すると、400㎖会長がやってきたので何口か話して、すぐに図書館に向かいました。その後一六時五七分に部室に戻りました」


 ※一六時一〇分の実験終了までアリバイあり。


 ※なお、全ての教室、および図書館は部室から約五分の位置にあった。


② 400㎖の薬

 バッグの中から処方箋が見つかった。

 ミカムラ製薬

 風邪用漢方薬(一四封)

 一日二回、朝夕にぬるま湯と共に服用してください。


問題文は以上です。みなさんの健闘を祈ります。


 


 



 


 



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