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山下美緒 クラリネットリサイタル

【過去の演奏会より】

日時 2024年11月15日(金)19時から
場所 住友生命いずみホール(大阪市)

クラリネット:山下美緖
ピアノ:仲地朋子

【演目】
ドビュッシー作曲 第一狂詩曲
バッシ<ヴェルディ>作曲 歌劇「リゴレット」による演奏会用幻想曲
シューマン作曲 幻想小曲集 作品73
バーンスタイン作曲 クラリネットとピアノのためのソナタ
マントヴァーニ作曲 バグ
ブラームス作曲 クラリネットソナタ第2番 変ホ長調 作品120-2
ピアソラ作曲 アヴェマリア(アンコール)


リモージュ(フランス)歌劇場のクラリネット奏者を務める山下美緒さんが大阪でコンサートを開くとのことで聴きにいった。

初めのドビュッシー作品からホールの隅々にまで響き渡る妙なる調べは全開だった。クラリネットとピアノはお互いに主張するのではなく、寄り添い音色を作り合い、溶け合わせていく響きがとても気持ちがよく、2人で一つの音楽の世界を創り出しているのがわかった。リサイタルというよりデュオだった。

クラリネットは上から下までとても透明感、清潔感にあふれる音で、時にはマリンバのようにキレよく転がり、弦楽器のようにどこからともなく現れて消えていく長い息づかいが素晴らしかった。特に高音の音色はが音程の良さもあって心地よく、いつまでも聴いていたい気持ちにさせてくれた。

舞台上の伴奏ピアノはスタインウェイのフルコン。蓋は全開。ピアノのパワーを考えると1本のクラリネットの音は呑み込まれてしまうのではないかと心配したが、まったく違った。ピアノ伴奏の仲地朋子さんの音色の作りは職人芸だった。バランス感覚も抜群で、なんの無理もなく自然に音楽が流れていった。見事だった。

オペラ「リゴレット」のアレンジ作品は、深刻なストーリーをまったく感じさせない、どこまでもイタリア的な明るく声楽的な響きで、あらためてこの音楽がイタリア産であることがよくわかった。このような演奏ができるのは海外歌劇場で仕事をする山下さんならでは、と納得できた。

クラリネットとピアノの相性のよさは後半のバーンスタイン作品でも感じられた。それまでとは一転、リズミックでクラリネット的な高音の特徴やスローな現代アメリカ的な響きを聴くことができた。

また現代作曲家マントヴァーニ作曲「バグ」は無伴奏の前衛的な作品で、クラリネットの音や技術の可能性を追求するような作品だったが、ここでは山下さんの持つたくさんの音色が聴けて、あらためてクラリネットという楽器の奥深さを感じた。若い感性できちんと表現していたのが印象的だった。

シューマンやブラームスは少々攻略に難儀し、楽器調整に手間取っていたようにも見えた。やはり彼女の得意は10年間活躍しているフランスなどラテン系の音楽(イタリア・フランス)なんだろうと思った。

いずみホール820席は満席とはなっていなかったが、舞台での所作やたくさんの支援者やファンに囲まれていたところは、人柄の良さを強く感じた。技術も高く、器楽奏者でありながら声楽的感性を強く持つ若い演奏家として、海外はもちろん、日本でも活躍を続けてほしいと思った。

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