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職員室の内側23-新規採用教員の研究授業―


 40年ほど前、私が教員になったころは新採用教員もほぼなく、研修の一環として自分の授業を公開する研究授業などする必要もなかった。最近の教員の世界では新規採用1年目~3年目、10年目と一年に複数回の研究授業を行い、指導教員や管理職の講評を受けなければならない。新規採用の教員たちは日常の授業や業務に加えて、研究授業の内容の検討、指導案の作成に追われることになる。これ以外にも外部に出張して研修を受けなければならない。私の新規採用時にくらべ、大きな負担がある。

 教員の場合、採用されると即戦力として生徒の前に立たなければならない。企業では新人研修がおこなわれ、先輩社員にサポートされながら、一人前の社員に育っていくが、教員はいきなり一人前となる特殊な世界ともいえる。教育実習で授業を経験しているとはいえ、大学では教員の仕事について細かく指導するわけではない。4月の着任前に研修はなく、4月1日着任した瞬間から学校業務に参加し、1週間後にある授業の準備をしなければならない。教員の世界はオンザジョブトレーニング(OJT)の最たるものである。まさに走りながら学び、義務を果たしていくのである。試行錯誤しながら経験を積んで、なんとか自分の教員のスタイルを見つけていく。失敗も見当違いのこともあるが、それが教員に育っていく良き方法とも考えていた。

 現在の新人教員は研修が多い。これは恵まれている面もあるが、精神的負担は大きいのではないかと感じる。先日、採用1年目の教員の研究授業を見学した。生徒と年齢が近いこともあり、ICT機器を使いながらわかりやすい授業を行っていた。若いゆえに、主題がはっきりしなかったり、授業のメリハリがなかったり、生徒に深く考えさせる時間にものたりなさを感じた。授業後は指導教員や管理職、同僚教員との協議会があった。私は参加できなかったが、その中で自己の授業についての気づきがあり、その後の授業改善につながっていくことを期待している。
 授業の王様として、ひとりよがりになりがちな教員の世界で他者に授業を見てもらうことは必要だと考えるが、準備の負担が重いのも事実である。
また、見学する者が校内に限定され、他教科の管理職である場合、馴れ合いの研究協議に終わってしまう場合が多く、研修の意味をなさないこともある。

 「授業を見たり、見られたり」することは教員の授業力の向上に役立つので、学校を越えて見学することは大切である。また各学校を巡回して、教育内容や授業にアドバイスをするスーパーバイザー職を設置することも必要だと考える。新人教員、指導教員、管理職にも負担が大きい研究授業が形式ではなく効果的なものにする必要がある。
 研修の必要は感じるが、もう少し回数を減らし、新人教員自身が自由に研修方法や内容を決められるようにした方が良い。
のびのびと学び、仕事ができる環境になれば、教員の仕事の魅力も増し、教員の志望者増加するのではと感じている。

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