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職員室の内側15ー探究学習② 残念な探究学習ー
〜調べ学習に終わった 残念な探究学習の結果〜
今年度、私は探究学習指導の担当からはずれた。2年生の探究学習は昨年度までのゼミにおける教員と生徒、生徒同士の対話を通じた活動から経済産業省の探究事業に採用されているプログラムを活用することになった。
毎回のゼミでは生徒は一人一台端末を開き、そこで提示される課題に取り組むことになった。内容は探究をするためのスキルや自己の考えを広げたり、深めるプログラムである。課題はオンライン上に提出する形式であった。1時間のゼミは生徒ひとりひとりが端末に向かって作業するため非常に静粛に進んでいく。
この方式で1つ問題が生じた。ゼミ担当の教員から、生徒がどんな成果物を提出し、探究学習のどの段階まで進んでいるが見えないという苦情が出来てきた。昨年度までは生徒の学習内容はゼミ担当教員にteams上のデジタルデータか紙で提出され、生徒の進捗状況がわかる状況であった。この問題を解決するために、2学期に入ってようやくゼミ内での教員と生徒、生徒同士の進捗状況を発表することになった。
こうしたゼミ活動を経て、12月に入り、各ゼミ代表による成果発表会をおこなった。発表会は2段階あり、最初に16名の代表生徒が2年生全員の前でプレゼンテーションを行った。このプレゼンテーションに対して、生徒が投票をして上位8名が次の発表会の代表に選ばれた。次の発表会は1年生全員の前で8名の生徒がプレゼンテーションをおこなった。私はこの成果発表会を見て、衝撃を受けた。それは高校の探究学習の悪事例とも言えるプレゼンテーションが行われたことである。
私が感じた課題は3つあった。
探究テーマが広すぎる。またあいまいでありとても高校生が短期間に探究できるテーマでなかったことである。
探究手法が不十分であり、文献検索、先行研究、リサーチがしっかり行われていないことである。
プレゼンテーションが論理的でなく、何を主張したいか不明確であったことである。全体的に単なる調べ学習、それも中学校段階によりも劣る内容であった。
経済産業省採用の探究プログラムで半年以上何を学習してきたのか疑問を感じた。それ以上にこのような探究テーマや探究学習をゼミ担当の教員たちは何を指導してきたのか理解することができなかった。
例えば、「日本の経済をよくする方法」というテーマを生徒が出してきた場合、とても高校生が探究できる内容ではないので、日本の経済の問題点とはなにか、よくするとはどういうことか等のリサーチ&クエスチョンをじっくり行う必要がある。リサーチ&クエスチョンを繰り返すと当初のテーマは探究することができないことが理解できる。そしてテーマを見直して、あらためてテーマを設定することになる。
探究テーマは「コンビニエンスストアにおける商品配置の研究~消費者の目をひく配置とは~」など日常生活に根差したものが望ましい。また文献研究だけでなく、自分の足で確かめるフィールドワークができるとより具体的なものとなっていく。
探究を単なる調べ学習にしないためには教員、他の生徒、あるいは大学生等によるティーチングアシスタントといった他者の目を通じてテーマや問を磨いていく必要がある。問立てと対話が探究の肝であると考える。その意味で今年度の探究学習は探究の肝が抜け落ちていたと感じている。
次回の記事では、3年制の高校における探究学習の在り方を提案したい。