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職員室の内側20-公立高校の志願者減を考える-

 先日の調査によると、都立高校への志願者が減少している。東京都では全国に先駆けて私立高校進学者の授業料負担を実質的にゼロにする支援が行われている。そのため私立高校進学による経済的な壁が引き下げられている。
さらに各私立高校は公立高校に比べて、教育内容の魅力化を図りやすい。
英語教育の充実、海外修学旅行、外部と連携した探究学習の高度化など。
また校舎等の施設も綺麗で魅力的である。ソフト面でもハード面でも魅力があり、教育費の負担も少なくなれば、進学先として選択するのは当然である。
 さらに東京の私立校は全国的に有名な大学の付属高校が多い。付属中学校や付属高校に入学できれば、大学受験の経済的負担、生徒の精神的負担を減らして有名大学に進学できる。このエスカレーターに乗ることは保護者にとって大きな魅力であろう。大学付属校では特進クラスを設置して、系列大学への入学を保障しながら、さらに上位の難関国公立大学や難関私立大学へのチャレンジするチャンスを与える学校も多い。進学先を確保しながらさらに上を目指せる環境がある。
 私は長い間、都立学校の進路指導をしてきた。東大、京大、東京科学大、一橋大、国公立大学医学部への進学も多数支援してきた。卒業生の50%が現役で国公立大学に進学したこともあった。これらの学校の生徒は進学先の保証もないままに、受験にチャレンジしていた。毎日学校に残り、遅くまで学習に励んでいた。眠くなるからと寒い廊下で学習したり、立ったまま学習したり、時には同級生同士で教え合い、励まし合っていた。塾や予備校に行くことなく難関大学に進学した生徒も多い。
 一般に受験学習など無駄だという議論もあるが、自分のめざす目標に向かって、何を学ぶべきか自主的に考え、計画的にチャレンジしていくことは大変意義があると考える。このような戦略的な経験をした生徒は大学進学も充実した学びや研究生活をしていることが多い。大学院への進学者も多い。
 このように公立学校で苦労しながらも粘り強く、自分のキャリアを見出していくことは生徒に大きな成長をもたらすのであるが、このような魅力を保護者に伝えることは難しい。
 公立学校は授業料以外の負担も私立高校に比べ少ない。多様な生徒と多様な教員がそろっていることも魅力である。どのような学校を選ぶかは個人の自由であるが、目に見えない公立学校のもつ力や魅力に気づいてもらう努力も必要と考える。

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