日々是随筆-理念なき民主主義を考える-

先の衆議院選挙では、政治的理念よりも現実の生活の向上を具体的に主張した政党が議席を伸ばした。アメリカ大統領選挙でも「平等」「ダイバーシティ」「民主主義の危機からの脱却」を唄ったハリス候補が敗れ、「移民防止」「インフレ抑制」「国産品保護」という具体的な政策を訴えたトランプ氏が当選した。2つの選挙をみると、投票のポイントは高尚な理念ではなく、自分の生活にメリットがあるかないかが大きな比重を占めているように思える。差別発言や人を貶めるような主張があっても、自分にメリットをもたらすならばその候補を選択するといえる。私はこのような投票行動は近視眼的で、中長期の見通しに欠けた危険なものだと考える。

手取り収入を増やすのは良い政策であるが、それを達成するための財源が明確でなく、減収する税収をどう賄うかが不明である。不足する税収はさらなる国債発行を生み、日本の財政赤字がさらに悪化する危険性は隠されている。近い将来、自分たちの首を絞める不都合には目をつむっているのである。トランプ氏の主張政策にも短期的・刹那的な政策であり、アメリカ合衆国や世界をあやうくする。

本来民主主義は人間の理念を達成するためにあると考える。その意味で2つの選挙は将来への不安をもたらす。また、日本とアメリカの投票率は50%を少し超えるものであった。両国とも40%を超える国民が投票に参加していない。このような投票率が本当の国民の意思を示しているかには疑問が残る。声をあげない声が政策には反映されない現実は国民全体の幸福を実現できていないのではないか。2つの選挙結果は民主主義の将来に暗雲をもたらしていると考える。ひとりひとりの国民が現状および将来を真剣に考えなければ、両国および世界の将来は危機的なものになるだろう。


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