世界平和とは何か
小池です。
先日「世界平和」を実感してきました。
なにそれ?
2024年6月6日はライブハウス・西永福JAM、杉並区の一角で世界平和に思いを馳せたのは僕ひとりではないはずです。
「MAX NIGHT」
ーJAM 6TH ANNIVERSARYー
このポスターと同様に、音楽性も(個人的に)正反対なミュージシャン同士の対バンでした。MOROHAというバンドは漢字一文字で表すならば「魂」です。他方でchelmicoは「陽」と表せると思います。太陽のもとで白い光に照らされた黒い魂たちは、世界平和へと至りました。何を言ってるんだ、と思う方々のためにもう少し説明します。
先攻はchelmicoから、 圧巻のステージを展開。前髪をシースルーにしながらステージの端から端まで駆け回る RachelとMamiko。曲の合間にコールアンドレスポンスを呼びかける2人。練習の時間を設けてくれる。「大きな声で」「コールはズレてもいいよ」「でも声出さなくてもいいよ」溢れだしてとまらない優しさ。「みんな踊って」「下手でもいいよ」。声がズレたってダンスが下手だっていい、そんな2人の声掛けに僕は救われたし、他にも救われた人はいると思う。
MOROHAの客層というのは良い意味で屈折した人が多い(と思う)。そんなMOROHAのファンたちが手を挙げてリズムに乗って身体を揺らしてフゥー!と声を出して、こんな素敵な空間をつくりだしたchelmicoには脱帽。僕ももれなくライブで声を出すのも身体を動かすのも苦手。しかしあの場にいた人間の多くがchelmicoに身体を委ねて、それは1つの世界平和の実現だった。
まるで「この世界に負なんてあるの?」と問いかけるようなchelmicoは誰も取り残さない。15曲をあっという間に走り抜けるRachelとMamikoと%C(DJ)。chelmicoの前にあるのは笑顔以外ありえない。
圧倒的な「陽」に溢れたライブハウスはMOROHAへのプレッシャーとしてのしかかる。個人的にだけれど、少しやりづらそうに見えた。それは、MCの時間にUK(Gt.)が「chelmicoのあとにMOROHAはお客さんイヤだろうな、俺が客だとしてもイヤだもん」と笑ってしまうくらいに。しかし俺たちのMOROHAはそのままで終わらない。
その瞬間、今回の対バンのハイライトは「拝啓、MCアフロ様」だと確信した(そしてそれはその30分後に裏切られることになるのだが)。ともかく、売れないバンドマンに別れの手紙を書いた"バカな女"のその愛に涙しないものなどいるだろうか。その後には失恋したアフロの友人へと捧げる「Apolo11」、いわく失恋した人には傷を癒すよりも、叶わなかった未来を想像させる方がいいんじゃないか、というアフロの気づかい。正直何を言っているんだと思ったが、しっかりパフォーマンスで説得されました。「永遠はちゃんとあるんだよ」と。
普段よりも愛の歌が多いと思ったら、最後は急遽予定を変更して新曲「愛してる」。アフロの愛の対象は恋人にはかぎらない。一体どこへ向けた愛なのかはわからない、でもわかる。わかってしまう。愛に溢れた今夜のMOROHAも1つの世界平和を目指していた。
最後の曲終了後、アフロが「アンコールやります!」と宣言、どよめく会場。MOROHAは基本的にアンコールはしないからだ。しかも「せっかく今夜ラッパーが3人いるんだから」と言うとお客さんの期待が最高に高まる。なんと!chelmicoとMOROHAのコラボレーション。アフロは"アフ子"になって詩を書いてきた、そしてchelmico「balloon」に参加、ビッチな女で参加しようとしたアフ子だったけれど、それはまずいと軌道修正したらしい。本当に本当に最高のchelmico feat. アフロだった。それに続いてMOROHA feat. Rachel & Mamiko。「スペシャル」という選曲がベストマッチング。RachelとMamikoも詩を書いてきた。正反対に見えるバンドが、1つに溶け合う、これも今夜の世界平和の1つでした。
「世界平和」なんてスローガンは日に日に陳腐化している国際情勢。虐殺、侵略、排外。この世には絶望しかないのか、と暗がりにひとりで塞ぎ込む人は増えているのではないでしょうか。(一見)平和な国である日本にいても、インターネットやメディアを通じて世界の残酷さの前に打ちひしがれる、そんなことは珍しくありません。
今夜のイベント「Max Night」は絶望に沈み込む人々にとっての希望になったと確信しています。私たちは目の前の世界平和を1つずつ達成していくしかありません。そしてMOROHAとchelmicoがいるかぎり、私たちはひとりではありません。「魂」と「陽」のあいだには「愛」がありました。それが世界平和であると実感したのが、6月6日の出来事でした。(小池)