見出し画像

竹花貴騎〜面白いマーケティング〜

 マーケティングと広告はしばしば混同されるが、根本的には異なる概念である。マーケティングは、顧客のニーズを把握し、そのニーズに基づいて商品やサービスを設計し、提供するプロセスを指す。一方、広告は、その商品やサービスを市場に広めるための手段であり、マーケティングの一部と考えられる。言い換えれば、マーケティングは戦略的アプローチであり、広告はその戦略を実行するための具体的な手段である。


集客をしたいなら集客をするな

 集客につながる方法には主に四つのアプローチが存在する。これを恋愛に例えると分かりやすい。

  1. アドバタイズ(広告): これはナンパのようなものであり、多くの人に一斉にアプローチする方法である。

  2. マーケティング: これは特定の対象を狙い撃ちにして、相手に自分の魅力を伝えることである。

  3. プロモーション: 第三者を通じて自分の魅力を伝える手法であり、例えば友人からの推薦などが該当する。

  4. ブランディング: 相手から「好き」と言わせるような、自らのブランド価値を高めることに焦点を当てる。

 マーケティングとは、商品やサービスを消費者に届けるための戦略やプロセスである。初心者にも理解しやすいように、マーケティングの基本的な要素をいくつか紹介する。
⚫︎ターゲット市場の特定
 マーケティングの第一歩は、誰に向けて商品を販売するのかを明確にすることである。これを「ターゲット市場」と呼ぶ。たとえば、若者向けのファッションブランドは、若者の嗜好やライフスタイルに合った商品を開発する。
⚫︎商品やサービスの開発
 次に、ターゲット市場のニーズに基づいて、魅力的な商品やサービスを設計する。消費者が求める特徴や品質を考慮し、他社との差別化を図ることが重要である。
⚫︎ プライシング(価格設定)
 商品の価格設定も重要な要素である。市場調査を通じて、消費者が受け入れやすい価格を見つけることが求められる。また、競合他社の価格も考慮する必要がある。
⚫︎ プロモーション(宣伝)
 商品の魅力を伝えるために、広告やSNSを使ったプロモーションが行われる。ここでは、消費者に商品を知ってもらい、購入意欲を喚起することが目的である。
⚫︎ 配送と販売
 商品をどこでどのように販売するのかも大切である。オンラインショップや実店舗、または両方を活用することで、より多くの消費者にアプローチできる。
⚫︎ フィードバックと改善
 マーケティングは一度きりの活動ではなく、常に改善を行う必要がある。消費者の反応や市場の変化に応じて、戦略を見直すことが重要である。

◾️マーケティングの本質

 マーケティングは、市場が求めるニーズを理解し、それに基づいて商品設計、プライシング、販売場所の選定、導線設計などを行うことを含む非常に広範な概念である。ただし、マーケティングが効果を持つためには、経験と知識の蓄積が必要であり、単なる理論だけでは不十分である。相手が何を求めているのかを理解する「共感力」が重要な要素となる。
 例えば、ある人が好きな相手に対して特別なアプローチをすることが恋愛でのマーケティングに似ている。相手が喜ぶことを意識して行動することが求められるが、他者の反応をよく観察し、本音を理解することが肝要である。これは、調査データに基づくものではなく、実際の行動データから得られる情報である。

◾️本音のニーズを見極める

 企業が新商品を開発する際には、消費者のニーズを理解することが不可欠である。しかし、言葉で表現されるニーズと実際の行動との間にはしばしばギャップが存在する。このギャップを理解することが、マーケティングの成否を分ける要因となる。
 例えば、マクドナルドが行った市場調査では、多くの消費者が「ヘルシーな食事を求めている」と答えたにもかかわらず、実際に売り出したサラダは思ったほど売れなかった。この現象は、消費者の表面的な声に惑わされてしまった結果であり、実際には「今日はちょっと贅沢をしても良い」といった本音が存在していたことを示している。言い換えれば、消費者は健康を意識する一方で、その日ごとの気分や状況に応じて行動が変わることがあるのだ。このような本音のニーズを無視してしまうと、企業は適切な商品を提供できず、市場での競争に後れを取ることになる。
 また、ラムネのケースも同様である。「飲みやすい方がいい」との消費者の声に応え、ビー玉を抜いた結果、売上は激減した。この出来事は、ラムネの「懐かしさ」や「飲みにくさ」が実は消費者にとっての重要な魅力であったことを示している。消費者は、自らの言葉では「飲みやすさ」を求めつつも、実際にはその独特な体験を求めていることが分かる。このように、本音のニーズはしばしば意識的には表現されず、消費者の潜在的な欲求として存在するため、行動データを通じて理解することが求められる。本音を見つけ出すためには、消費者の行動を観察することが必要である。

◾️行動観察の重要性

 本音のニーズを見極めるためには、消費者の行動を観察することが最も効果的である。行動観察は、顧客が自らの言葉で表現するニーズとは異なる、潜在的な欲求を理解する手段として重要な役割を果たす。実際の行動は、言葉では表現しきれない本音を反映しており、これを把握することで、企業はより正確な商品やサービスの設計が可能となる。
 例えば、美容室での行動観察において、顧客が自分の髪型をセルフィーとして撮影している場合、実際には髪型そのものに対する興味以上に、その変化を他者に見せることが重要であることが分かる。この観察から、顧客が求めているのは髪を切る技術ではなく、むしろ魅力的な写真を撮る技術や、SNSでの自己表現であると解釈できる。ここでの洞察は、マーケティング戦略を策定する上での貴重な情報となる。
 また、カフェの例では、犬を散歩させる飼い主たちが片手にコーヒーを持ちながら話をしている姿が観察される。この行動は、犬と一緒に入れるカフェの必要性を示しており、消費者のニーズに基づいた新たなサービスを創出するきっかけとなった。このように、行動観察から得られた知見は、単なるアイデアの枠を超え、実際のビジネス機会を生むものである。
 さらに、行動観察は、消費者が抱える本音のニーズを理解するための手段として、特に効果的である。消費者が何を欲しているのか、どのような環境でその欲求が高まるのかを把握することで、マーケターは商品やサービスを最適化し、競争優位を築くことができる。このプロセスは、マーケティング戦略を策定する際に非常に重要であり、実際の市場における競争力を高めるための基盤となる。
 本音のニーズを見極めることは、マーケティングにおける成功の鍵であり、消費者の行動を観察することにより得られる深い理解が、企業の成長と繁栄に貢献する。したがって、マーケターは、単に消費者の意見を聞くだけでなく、行動データをもとにした分析を重視する必要がある。これによって、より適切な戦略を構築し、消費者の期待を超える商品やサービスを提供できるようになるのだ。

◾️市場の選定

 マーケティングにおける「市場の選定」は、ビジネスの成功に直結する重要な要素である。市場を選ぶ際には、特に競争が激しい「レッドオーシャン」と、競争が少ない「ブルーオーシャン」を意識する必要がある。
 美容院はレッドオーシャンの代表的な存在で、競合が非常に多い。このような市場で成功するためには、差別化戦略が求められる。TTPPP(Time, Type, Price, Place, People, Size)というフレームワークを使い、ビジネスの運営時間やサービスの種類、価格設定、立地、人々のニーズ、規模を考慮することで、競争を避けられる新しい市場を見つけることが可能である。例えば、美容院は通常昼間に営業しているが、夜間営業することで新たな顧客層を獲得できる可能性がある。
 実際の成功事例として、あるスタンドコーヒー屋が挙げられる。この店は通常400円で1日50杯の売上だったが、営業形態を見直し、山の駐車場で販売することで600円で1日150杯を売ることに成功した。このケースは、競争の少ない環境でニーズに応えることの重要性を示している。
 競合が多い市場ではリスクも大きく、争いを避けることが鍵である。ニッチ市場をターゲットにすることで、より高い利益率を得ることができ、安定したビジネスを展開できる。したがって、市場の選定はマーケティング戦略の中心であり、消費者のニーズや競争環境を適切に分析することが成功に繋がる。

まとめ

 マーケティングは、消費者の本音を理解し、それに応じた戦略を練ることが必要不可欠である。行動観察を通じて得られた知見をもとに、市場での競争を避け、効率的に利益を生み出すための場所を見つけ出すことが、マーケターの重要な役割である。このように、マーケティングは単なる集客手法にとどまらず、企業戦略の基盤となるものであり、時代の変化に応じた柔軟なアプローチが求められる。

▼私はこれらの動画を見て学んでいます▼


いいなと思ったら応援しよう!