George Harrison, in 1987
■カッコいいミュージシャン
ティーン・エイジャーの僕が熱病にかかったようにあらゆるロックと言われる音楽を聴き漁っていた1987年、ジョージ・ハリソンというミュージシャンが颯爽と現れるのです。"Got My Mind Set On You"という曲と『Cloud Nine』というアルバムを提げてです。というのも、この曲、アルバムを発表した頃のジョージは積極的にメディアに出ていてロングインタビューが洋楽を取り上げる日本のTV番組なんかでも放送されて、全米No.1ヒットとなった"Got My Mind Set On You"と共に「ジョージ・ハリスン、カッコいいー」という感じで強烈に印象に残っているのです。そのカッコいいジョージ・ハリスン、元ビートルズのメンバーであることはもちろん知ってはいたのですが、リアルタイムで見たジョージの姿はビートルズの四人のメンバーの一人である姿と上手く重なっていなかったような気がします。
■ビートルズのジョージ・ハリスン
ビートルズの解散というロック史における大きな不幸がもたらした一番幸せなことはジョージ・ハリスンが解放されたことなのかもしれないと思ったりします。
それもビートルズを聴き始めた13歳の頃よりずっとずっと後になってのことなのですが、ビートルズの中心にはジョン・レノンがいて、その傍にポール・マッカートニーがいて、ムードメーカー的にリンゴがいて、それが関係するかどうかはわからないのだけれど、一番年下のジョージはちょっと隅に追いやられた存在のようなイメージがあります。
勝手なイメージなんですが、ビートルズというバンドの中におけるちょっと隅っこに追いやられた位置だったからこそ、ジョージは淡々と良い演奏をしよう、良い曲を書こうと努力していたような感じがします。
ビートルズの晩年にはレノン/マッカートニーに勝るとも劣らないコンポーザーになっていたと思います。
ビートルズ解散後にジョージは『All Things Must Pass』という大傑作アルバムを発表します。1970年リリースのこのアルバムに収録されている曲を聴くと、1987年の『Cloud Nine』に入っていても違和感のないメロディがあったりして、ジョージもまた、時代を超えたアーティストであったと伺えます。
"Got My Mind Set On You"と『Cloud Nine』が大ヒットしたのは、1987年当時、ビートルズを知らない10代の若者が先入観なく、聴いた結果だと言われてますが、正にそういうことだと思います。
■シングル Something / Come Together のTシャツ
ビートルズが実質的にはもう一つのバンドとしては機能していない状態であったにもかかわらず、最後になんとか作られたアルバム『Abey Rord』に収録され、そこから Something / Get Back が両A面としてシングルカットされました。"Something"はジョージ・ハリスンが書いた曲です。先に述べた『All Things Must Pass』に収録される曲と同時期に書かれたようです。後に、多くのミュージシャンにカバーされ、ビートルズの曲としては”Yesterday”に次いでカバーされている名曲ですが、フランク・シナトラもマイケル・ジャクソンもこの曲をレノン/マッカートニーの曲だと思っていたという逸話もあります。そんなことからも、最後の最後まで、ジョージがビートルズとして、いい仕事をしたにもかかわらず、レノン/マッカートニーの影に隠れた存在でした。後追いでビートルズを聴いている僕にはなんとなく解せない気持ちもあってか、1987年のジョージ・ハリスンが起こしたロック史上最大、再成功のカムバック劇は痛快に思えるのです。
今回紹介するのはジョージの曲 Something がプリントされたTシャツです。
そして、前回のリンゴTシャツでも紹介したナンバー・ナインのジョージ追悼コレクションから『All Things Must Pass』がドット絵になってスーパーマリオのようになったジョージ・ハリスンのTシャツです。
■エピローグ
最後にとても好きなエピソードを。
ジョージ・ハリスンは2004年に58歳の若さで亡くなります。癌だったそうですが、その病気療養先のスイスにリンゴ・スターがお見舞いに行った時の様子をリンゴが振り返っているものがあります。
ジョージの容態は良くなくて、リンゴは寝たままの彼の様子を見守ることしかできなかったんだそうです。そんな最中、リンゴの娘さんも病気にかかってしまい、リンゴはスイスからボストンの娘さんの所に行かなければならなくなりました。心配顔にリンゴがそのことをジョージに伝えると、ジョージは「僕も一緒に行って欲しい?」とリンゴを気遣う言葉をかけたそうです。
その時の様子を振り返って涙ぐんだリンゴがそれが彼から聞いた最後の言葉だったと言うのですが、ビートルズがロックバンドであり、リンゴとジョージはそのメンバーだったんだと感じたエピソードなのです。