カート・コバーンがSmells Like Teen Spirit”のPVで着ていたTシャツ
■”Smells Like Teen Spirit”
NIRVANAのブレイクはMTVで『Smells Like Teen Spirit』がヘヴィローテーションされたからだということは世界的に知られた事実だと思います。
曲名がデオドラントスプレーの商品名からきているとか、ビキニ・キルのキャスリーン・ハンナが壁にスプレー書きしたのをカートが気に入って曲のタイトルにしたとか、あまりにこの曲をリクエストされることからカートはこの曲を演奏することを嫌がってセットリストから外したとか、トリビアにもならないネタがついいてまわる曲ですが、創造主のカート自身が忌み嫌おうと、ブッチ・ウィグがプロデュースしたアルバム『Nevermind』の一曲目のこの曲が私は大好きです。ラフなギターリフのイントロ、破壊的なドラムから一気に歪んでノイジーになるギター、ギターが単音になると地から沸き上がるようにベース音が鳴っていることがわかり、そのままカートの声が入ります。その声は身体の中から絞り出されたように聴く者に刺さります。ヴァースとブリッジは不気味に静かに展開しますがコーラスになると一気にギターにドライブがかかって溜まったパッションが一気に弾け出し、聴いている我々のテンションを爆発させます。ラフでノイジーなギターではありますがその輪郭が整っていますし、ドラムはタイム感より音の迫力を重視しているようですが、過剰にはなっていません。ベースラインはシンプルでリズムに乗っていますがうねるようでグルーブを生んでいます。何よりもカートの歌、ダブルボーカルの声が音の中心にあって他の音の迫力に負けていません。最高の曲の展開、最高のプロダクションだと思います。カート自身はこのアルバムの音づくり自体、気に入ってなかったようですが、やっぱり最高だと思います。もちろん時代性もありますし、技術的な問題、どれくらいお金をかけられるかという問題も当時のNIRVANAインディーで一枚、メジャーデビューアルバムという状況もあったはずですが、それでも90年代最高のアルバムとしてだけでなく歴史的な一枚として残っているのはやっぱりこのプロダクションにも一因あるんだと思います。
もちろん曲が素晴らしいのでMTVでローテーションされたのは間違いないのですが、このPVもなかなかウィットもあり、雰囲気もあり、きっとメジャーデビュー前なので少ない予算で作られたんじゃないかと、でも、とてもよくNIRVANAというバンドとその音を表していると思います。全体的に暗いスタジオの中に観客、ティーンスピリットだからハイスクールの生徒が観客になっていて、全く笑わないTATOOの入ったチアが誰ともなく応援をしていいて、その中をバンドが普段着のままライブ演奏をする映像。カートの顔にも影があり、フォーカスがあってなかったりして、とてもビジュアルでアピールしている感じはありませんが、またそれも迫力ある絵になっています。 本当に限られた予算の中でものすごくバンドとその音楽の魅力をもしかしたら最大限に発揮したPVかもしれません。
■グリーンのボーダー柄ニットTシャツ
そしてそのPVの中でカートが着用しているのがこのグリーンのボーダー柄のニットTシャツです。プリントもの以外のTシャツを紹介するのはおそらくこれだけになると思うのですが、生地もハイゲージで編まれたニットとなっているため、やっぱり着用した感じも他のコットンプリントものとは毛色が違います。
PVでは分かりにくいんですが、写真の画像なんかを見てみると、グリーンに細いイエローのラインが三本入ったパターンになっているボーダー、袖はちょっと長めで5分丈くらいになっている感じ、ニットでウールとアクリルの混紡のため自重でたるんと下の方に落ちる感じがすること、あとラグランスリーブになっていることなんかもわかります。そんな感じをこれはまぁよく再現しているかと思います。PVでカートが着ているものはもう少し首が詰まっていますかね。PVの中でカートはこのニットTシャツの下に長袖の白いTシャツを着ています。この長袖のTシャツの上に半袖Tシャツを重ね着する着こなし、まぁ夏以外にもTシャツを着用したい我々のような人間にとってはコペルニクス的な発見でした。Tシャツは夏に一枚で着るもの肌寒ければ何かを上から羽織るものと言う頭しかなかったのですから。まぁもともとは下着ですから肌の上に直接着るものではあるんですけど、別に絶対そうでないと困るわけではありません。もしかしたらシンプルに長袖一枚では寒かったからニットを重ね着しました的な単純なものだったのかもしれませんが、それでも私にとって(少なくとも)は、「おぉぉ」と唸るような感心すべきことなのです。90年初頭その頃から家でゴロゴロする時、長袖Tの上から半袖Tを着るようになって、私のクローゼットの一段目は常にTシャツがいっぱいに入っています。今でもそうです。大体30〜40枚くらいが常に置いてあってボロになったり、飽きて来て着なくなったりしたものが段ボールに詰められていってました。一部、オークションに出して売ってしまったり、着心地の良いものはパジャマになったりしました。パジャマになったものは頻繁に洗濯することになるので大体最後は首の後かわきに穴が開いて棄てられるんですが、運良く段ボールに入っていたものがサルベージされ今こんな所で役に立って皆さんにお見せできたりしているんです。
ということで今回はティーンスピリットとカートとTシャツの着こなしと今に至る話しでした。