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KID A MNESIA

■ 1999年

70年代の後半、オカルトブームみたいなのがあって、超能力っていうかスプーンを曲げたりとか、あなたの知らない世界の心霊写真とか、宇宙人とかUFOとか、ネス湖のネッシーとかね。小学生だった私にはその辺のものは強烈に刷り込まれているわけで、まぁそのオカルトの最たるものがノストラダムスの大予言なんですが、1999年に恐怖の大王というのがやってきて人類は滅亡すると言うような予言なんかですが恐怖の大王というのは巨大隕石で、地球に衝突することで気候変動で人が生きることができなくなるとか、核兵器のことで核戦争が起きて人類が死滅するとか、そんな週末予言があったことは多くの方がご存知だと思います。
子供の頃から、どちらかというと怖いモノ知らずというか恐れ知らずのでお化けとか暗闇とか全然平気な人間なんですが、子供向けのオカルト本に描かれたノストラダムスの大予言の挿絵、隕石のせいか、核爆弾の爆発のせいか、真っ赤に焼けたような街に死んだ人や壊れた車や瓦礫が宙に浮いているものがあって、その絵はインパクトがあって今だに憶えています。さすがにちょっと怖かったのかもしれません。
その怖さと同時に思ったのが、1999年になったら自分は31歳だということでした。31歳のオッサン。自分はどんなあオッサンになっているんだろう?31歳、31歳、31歳...何故か、31歳という年齢がもう元気な活き活きとした人間の終わった後のようなイメージを持っていたんですね。だから、どうせ(楽しみの終わった)31歳という年齢で全人類皆んながお終いになるならまぁそれでもいいか、というような気持ちがあったんだと思います。

■同い年のトム・ヨーク

1968年生まれ、レディオ・ヘッドのトム・ヨークとは生まれた年が同じです。タメということですね。
トムが幼少の頃を過ごしたスコットランドやイングランドのオックスフォードに子供向けのオカルト本やノストラダムスの予言本があったかどうかは知りませんが、物心ついた時にはビートルズは存在せず、幼少の頃にロック黄金期のロックやソウルやファンクに潜在的な影響を受け、ティーンエイジャーの頃バンクを通過して、ライブエイドをリアルタイムで観て、MTVや産業ロックを通過する過程でロック音楽に興味を持ったという意味では外からのインプットされたものの影響は同じようなモノ、同じようなタイミングだったのではないかと勝手にシンパシーを感じています。
トムだけでなくレディオ・ヘッドの他のメンバーも同世代なので同じようなものに影響を受けたのではないかと思うのです。
なので、パブロ・ハニーが産業ロックのカウンターとしてに出てきたシュー・ゲイザーの集大成のようなアルバムだと聴こえましたし、ベンズは70年代から続くロック音楽をルーツとしたロックの現代的な表現だと感じました。特に、High and Dryはロックのフォーマットで奏でられる音楽として最もモダンな(時代性を反映した)音楽だったと思います。
1997年にリリースされた ”OK Computer” は一聴してすぐに、これはプログレッシブロックだと感じました。もしPink Floydが離合集散することなく存在していたら、こんなアルバムを作ってくれたのではないだろうかという風に聴きました。
この変化はレディオ・ヘッドが、トム・ヨークがより自分のやりたい音楽にフォーカスしていっている事による進化だと言っても良いのではないかと思いました。
前のアルバムから関与していたナイジェル・ゴルドリッチのプロデュースも含め本当に素晴らしいロック音楽だと思います。
トムのボーカルがかなりか細く聴こえるのはその歌唱法のせいか、プロダクションのせいか、そこにもう少しロック的な厚みがあれば、聴きながら一緒に口ずさめるようなものであれば、私の人生屈指のアルバムになっていたかもしれないと思うくらい、本当に最初に聴いたときの身体の震えみたいな感動を今でも憶えています。

■1999年以降

そして1999年を迎えるワケですが、いよいよ世紀末ということで、ノストラダムスの人類滅亡予言もちょっとだけ盛り上がっていたようです。しかし、当然のごとく、恐怖の大王は現れず、私もトム・ヨークも31歳になっていました。まぁ、私の事はさておき、トム、レディオ・ヘッドは傑作”OK Computer”に次ぐアルバムを制作していました。そして翌2000年20世紀最後の年にリリースされたのが "Kid A" でした。ちょうどその頃、私はseason7の#38#39でお話ししたようなゴタゴタがあり、アルバムリリース時に購入はしたものの、ほとんど聴いた時の思い出がありません。じっくり音楽を聴くと言う余裕がなかったのです。耳にしてはいたと思うのですが、感想を持ったり聴き込んだりと言う事はがなかったのです。その翌年2001年に短いスパンでリリースされた "Amnesiac" についても同様でした。なのでこの2枚のアルバムはレディオ・ヘッドのアルバムの中では印象が薄く好んで聴いたものではありませんでした。なんとなく「あー、そっちの方面に行っちゃったのか、もうロックバンドのアルバムではなくなってしまったなぁ」といった驚きも感動もない印象を持っていたと思います。なので、レディオ・ヘッドへの興味も急速になくなった感じがしていました。数年後、"Hail to the Thief" の先行シングルThere,There,のPVをテレビで見て、その異様な緊張感がかっこ良くロック的な感じがして良かったんです。なので、その後のアルバムも聴いていますが、あの時 There,There,が流れなければ多分レディオ・ヘッドをフォローすることはしなかったと思います。なので"Hail to the Thief" も"In The Rainbow"も好きなアルバムです。

■キッド A ムニージア レビュー

と言ったところが、僕の中のレディオ・ヘッドなのですが、
"Kid A" も"Amnesiac" もロックを変えた(ポストロック的)名盤と言われています。そう言われて聴いても、個人的には、やっぱり基本ロックのフォーマットで作られている音楽が好きなので、あまりピンと来ていませんでした。"Kid A" リリースから20一年、"Amnesiac" からは20年が過ぎました。
この2枚はほぼ同時期にレコーディングされた双子のようなアルバムと言うことで、今回最新のマスタリングがほどこされ、同時期にレコーディングされた未発表曲と合わせ"Kid A Munesia" として3枚組でリリースされることが発表されました。その時、そんなに触手は動かなかったのですが、限定のTシャツ付きセットがあるのを知って思わずポチっと購入ボタンを押していました。そして届いたのがこの動画を撮影してる前日になります。3枚組にしても"Kid A"と"Amnesiac"が変わるわけではないので、そこの印象はあまり変わらないのですが、20年前にアルバムの収録から外れた曲に何かその時のレディオヘッドが何にフォーカスしていたのかを感じることができないかと言った観点で聴いてみました。
思うに"Kid A" も"Amnesiac"もポスト・ロックやエレクトロニカを狙って作ったというより、曲を作るアプローチをあえて変えることで新しいものを作ろうとしたのではないかと思ったりしまさそた。例えばメロディーとかギターのコードやリフみたいなもの、ロック的なフォーマットを排除して、ゼロから構築し、曲としての体裁を整えてできた曲が2つのアルバムになったのではないか、と言う想像しました。三枚目の未発表曲もロック的では無いものの、構築作業の過程のような状態の曲が多く、最終的な形まで練られていない分だけ、少しだけ未完成で生々しいものが多い印象です。ただやっぱりロックのフォーマット以外のところで何かを作ろうと言う意図の感じられるものであります。そういう意味ではレディオ・ヘッドというバンドにとってもロック音楽そのものにとっても必然的なものだったようにも思いました。
個人的に思うのは"Kid A" "Amnesiac"以降、さらに新しい試み、ポストロック的なチャレンジは無いように思います。
レディオ・ヘッドがチャレンジの結果として"Kid A" "Amnesiac"を作ったのかどうかは分からないので、そういったアプローチでロック文脈の音楽を作った人やバンドと言い換えてもいいと思うのですがもう20年もそういうロック音楽には出会ってないような気がします。
そういう意味では"Kid A" "Amnesiac"は、やはり重要なアルバムだったんだなぁと、20年経過した今だからこそ感じることができました。という今回のセット再発のお話です。

■キッド A ムニージア 限定Tシャツ

私が購入したもっと重要な理由は先程申し上げた通りセットのTシャツが付いているからです。"Kid A" "Amnesiac"の両方のアルバム・ジャケットともに抽象的な絵が描かれています。これはスタンリー・ドンウッドと言うアーティストが描いていて、そのアート・ブックも出たいいたりするのですが、この頃のものはちょっと不気味なんです。まさに人類が滅びた後の世界のような"Amnesiac"の赤色もあのノストラダムスの大予言を描いた子供向けの本の挿絵のようなイメージもあって、なんとなく1999年の後の世界のような… Tシャツはそれほど不気味な感じではなくスタンリー・ドンウッドのアートワークと象徴的なワードが並べられたTシャツデザインになっています。


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