創作 ポーチュラカ
夏子は小さい頃から、花でいっぱいの祖父母宅の庭が大好きだった。
庭は広く、祖父母のそばで、じょうろで水やりをしたり、種まきをするのは楽しく、自然に花の名前も覚えていった。
祖父母の家は、夏子の住むマンションから車で2時間ほどかかる。中学生になると、頻繁には祖父母の家を訪ねる機会が少なくなり、長く泊まれる夏休みを、心待ちにしていた。
中2の夏休みだった。晩御飯のあと、夏子の進学の話になった。
なっちゃんは、将来何をしたいの?
行きたい高校はもう決めてるの?
花が好きだから、花のことを詳しく勉強したいんだ。
そう・・。大学に行ってから勉強するか、
園芸科のある高校に行くのかな・・。
この近くに、全国大会でも優勝する園芸高校が
あるけど、知ってる?
ううん、知らない。
高校で花を勉強するところがあるの?
そう。スベり高等学校って呼ばれてるんだけど、
全国からここの学校に入りたいって
人気があるんだって。
へぇ、そうなんだ。
明日行って見ようかな・・
翌日。夏子は祖母と一緒に、スベり高等学校に行ってみた。歩いて20分ほどだった。道路から校門まではなだらかな登り坂になっていて、道路を挟んで斜面は、色とりどりの花がいっぱい咲いていた。
あっ、ポーチュラカだ!。すごい!
いっぱい咲いてる!
夏子は思わず声を出した。これほど広く両面に咲くポーチュラカを見たことがなかった。
昔から綺麗なの。
園芸部の生徒さんと地域の皆さんで、
毎年植えて、手入れされてるみたい。
坂をのぼり、校門に着くと、滑莧高等学校と刻まれていた。
おばあちゃん、なんて読むの?
すべりひゆ。だから、ポーチュラカなんでしょうね。
そういうこと・・。素敵だね。
私もここに行こうかな・・
《完》
ポーチュラカ(和名:ハナスベリヒユ)は、一年草で、夏にかわいい花を咲かせます。ヘッダー画像は、こちらのサイトから使わせていただきました。
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たらはかにさんのこちらの企画に参加しています。
いつもありがとうございます。