「いつぞやは」を2回観た感想
シス・カンパニー公演「いつぞやは」
作・演出:加藤拓也
出演:平原テツ、橋本淳、鈴木杏、夏帆、今井隆文、豊田エリー
劇場:シアタートラム
観劇日:2023年9月6日(水曜)18:30~/2023年9月24日(日曜)14:30~
近年注目している加藤拓也氏の新作。主演は窪田正孝さんの予定でしたが、初日を迎える5日前に怪我(骨折)のために降板を発表。急遽、平原テツさんが代役を務めることになりました。平原さんも、共演者も、関係者の皆さんもさぞかし大変だったと思います。
僕は初日から10日ほど経った舞台を観たのですが、加藤拓也氏ならではのリアルな会話と緊張感を堪能しつつも、「窪田さんが演じていたら……」という邪念を拭えずに観てしまいました。主人公は、かつては演劇に情熱を燃やしていたものの、それをあきらめて、次の目標を見定められないままにガンに侵されて(しかも、ステージ4)しまう男。飄々とした雰囲気が漂うキャラクターで、おそらくは窪田さんの当て書きだったと思います。
平原さんは代役とは思えないほど見事に演じているものの、どうしても窪田さんの姿が重なって見えてしまいました。でも、演劇って、上演中にも進化を続けるものじゃないですか。それで、平原さんが主演の座組でしばらく上演が続いてから、もう一度観てみようと思いました。
そして、19日後に再度観に行きました。おそらく、脚本も演出も変わっておらず、特に平原さんに寄せた作品になっているわけではなかったのですが、平原さんが演じることが当たり前に見える作品に進化していました。いや、と言うよりも、平原さんだけでなく、橋本淳さんも、鈴木杏さんも、今井隆文さんも、登場人物それぞれの個性が際立ち、みんなが主演にも見える作品にも仕上がっていました。実力がある役者が集まった作品って、いい形で熟成していきますよね。
ストーリーについて詳しく書きませんでしたが、青春の切なさや後悔など、ちょっと痛みを感じる作品です。でも、重くなりすぎず、軽やかで清涼感もあるんですよね。ラムネのような……。
平原テツさんのクールな熱演を評価しつつ、将来、窪田正孝さんでの再演も観てみたいものです。
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