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でみすけ
いわばどこでもドアなのかもしれない。
僕の居場所。
何聴こうかな。
いつも決まった曲のくせして、少し悩んだふりをする。そうしていれば、大好きな君の元へたどり着くまで、あっという間に時間が過ぎるから。たった1分、それすらも、短く感じられるように。
正確には55秒。君は今日も真っ白だ。僕は君のせいでこんなに日に焼けたのに。扉を開けてすぐに、目に入る席。それだけで心は満たされていく。少し屈んでそこにそっと座った僕は、すぐに扉を閉める。
そう、ここは、僕の居場所。
しん、と静まり返った空気を、一呼吸飲み込む。まだ眠っている君を起こそうと、簡単にボタンを押せば、元気に返事をする。いつも寝起きのいいやつ。
「でみすけ」
この車をそう呼んでいる。
でみすけは、僕が僕であることを咎めない。
僕がどれだけ泣いていても、笑っていても、怒っていても、何も言わずにずっとそばにいてくれて、日々の喧騒から僕を別世界へと切り離す。
君じゃないと得られない静寂を毎日でも浴びたいのだ。
君は僕の生きがいなんだ。
でみすけは、フルノーマルだし、僕のせいでバンパーは抉れているし、ピカピカでもないし、こんなこと言ったら、みんなには後ろ指を指されるかもしれないけれど、僕はでみすけが1番かっこいいと思っていて。もし、本当に後ろ指を指すなら、でみすけじゃなくて絶対に僕を指して欲しい。僕が悪く言われるのは構わないから、もうこれ以上君を傷つけたくないんだ。
いつだって、でみすけと一緒に見る景色はどこでも、僕にとっては余りにも美しいんだ。
だから、僕とずっと一緒に走ってね。だめそうだったら、天国で、また。