Back to 80s/ネオ・マイアミ殺人事件
誰も俺たちを止められない!
教えてくれベイブ! 俺たちは何処へ向かってる?
あの夕陽の向こうに俺たちの街がある!
ーー
シンセサイザーの残響で目を覚ました俺の横には、ダッシュボードに足を乗せながらこちらを見るジェニーがいた。
「寝坊助さん。今通報があってダウンタウンでまた殺人よ」
「起こせっての!」
飛び起きた俺はフェラーリ288“クリムゾン・バイト”のエンジンをかける。
ここはネオ・マイアミ。
ネオンと非道が錯綜する、沈まぬ夕陽の街。
13分署殺人課の刑事である俺は、相棒のジェニー・サマーズと幾多の難事件を解決してきた。
ーー
夕陽がつくるヤシの木の影を眺めていたジェニーは、そっとラジオの音量を上げる。
「遺体の胸にまた焼けた手形があったそうよ」
ネオ・マイアミの市民を震え上がらせる正体不明の連続殺人犯。気にいらねぇ…俺たちを嘲笑っていやがる。
「“クローム・グローブ”め」
アクセルを強めにふかすとV8エンジンが唸りを上げ、俺たちをネオン溢れる巨大なビル群へ導いていく。
ジェニーはこちらを向いて言った。
「ねえニック、あなたは夢から覚めても、奴を捕まえたい?」
「たとえ夢の中でも現実でも関係ない。俺は奴を許したりはしないさ」
〈誰も俺たちを止められない!〉
「なら、起きたら『ホットラインはネオ・マイアミ』で検索して。この街は今私たちの世代だけが見てる夢の波なの。向こうであなたに会えたなら、あいつを捕まえられるかもしれないわ」
〈教えてくれベイブ! 俺たちは何処へ向かってる?〉
ーー
目が覚めるとパソコンの前で寝ていた。
SNSはまた連続殺人のニュースで盛り上がっている。
不思議な夢。
「〈ホットラインはネオ・マイアミ〉」
検索すると一人のアカウントがヒットした。
@Jenny_neo_Miami
「ネオ・マイアミは実在する。シンセの波はここまで来ているの。ニック、私に会いに来て。」
僕は、いや俺は、相棒をまた待たせちまった。
(続く)