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新型コロナウイルス流行中に演劇の公演をしたのでその記録

7月10日現在、東京は昨日200人超の陽性患者が発生、第二波ではない、問題ないと報道されている今日この頃。一月後にはいろいろ明確になってるでしょうが……

と、ひとまずリアルタイムな情報を冒頭につっこんで、こういう時期にこの文章は書かれたんだと分かるように爪痕を残したところで、本題です。

コロナ禍の真っ只中(多分、第一波と第二波の狭間の期間? 緊急事態宣言が取り下げられてから一か月後位)に実際に小規模ながら演劇の公演を行ってみて感じたことを羅列していきます。
いまから、公演を企画する人は状況が大きく変わっていると思うのでそこまで参考にはならないでしょうがルポとして。

そもそもどんな公演?

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こんな感じの公演。(写真は観客の皆さんがTwitterにあげてくださったものから抜粋しました。多謝)
ギャラリーを借りて演者が7名、客席が10席程度のごく小規模な企画です、これより規模が小さいってカフェ公演くらいかしらって感じ。
作品の時間軸が現実世界と同期しているパターンなので、キャストは1名を除いて他はみな自然とマスク着用。だって、現実世界でもマスクをしているから。
規模が小さすぎる+劇場以外での公演なので、そういう点ではあんま参考にはなりませんね。


感染対策について

これはもう、神戸市のガイドラインを基準に、公文協が出してるガイドラインにできる限り沿ってやりました。
現時点でどういう風に感染するかは分かってはおらず、あとになってみれば半ば迷信みたいな内容も含まれているんでしょうが、こればかりは仕方ない。
具体的には、
・客席と舞台(演者)を2mは離す。
・客席同士もできる限り2m離す(客席同士向き合うことはないので最低1m)
・演者もお客さんも発熱してないかチェックしてから来館
・お客さんはマスク着用、なければ劇団側が提供する
・入り口で手指消毒
・会場は換気のためにドア、窓を開放
・共有物は提供しない(アンケート記入用のペグシルとかですね、アンケート自体とらないことも考えましたが、紙の表面を経由して容易に感染するという報告は目の届く範囲ではなかったので今回はアンケートあり)
・受付の担当者は使い捨ての手袋着用
・金銭の受け渡しはトレー使用
今ぱっと出てくる限りではこんなもんでした。普通の飲食店では守れない事項も多々あるので、役者が発声、発話していることを除けば普通の市中よりは感染対策してるなというのが率直な感想。なんでまあ、問題点があるとしたら、役者から発せられた飛沫が2mの間に地面に落ちるかどうかってところでしょうか。

感染対策についてはやることやってあとは天命を待つという感じなので、そこまでナーバスにはなりませんでした。

会場の換気性能自体もそこまで悪いという印象はなかったので(=外へ声は漏れていたので騒音的なケアは必要ですが)クラスター化待ったなし!という緊迫感はなかったですね。
そもそも市中の感染者数が相当に少ないと思える時期でしたし。

オンライン稽古について

今公演は通常の稽古は本番直前の二回だけでした。
理由は簡単で、
①一か月前に公演することが決まり(五月下旬に緊急事態宣言解除→6月頭に公演準備開始→7月1日より本番)そもそも稽古の日程を調整するのが困難
②感染対策(稽古場への移動経路で感染する可能性がある)
の2つです。イメージだと②のために稽古をさけることになると思いがちですが、実際は圧倒的に①が大きいです。

そもそもがコロナ禍で混乱している最中なので、皆それぞれ置かれた状況が違いますからね、なかなか集まれないわけです。
また当時演劇の稽古を受け入れる施設はほぼなかったと思われますし、オフラインの稽古自体がかなりハードルが高いです(自前で稽古場を持ってる団体以外は稽古できない位の認識の方がたぶん正しい。まあ、カラオケが解禁され始めた時期だったのでそういう場所で集まるとか一工夫すればどうにかなるかなって感じでした)

そもそも感染者が出たらその時点で公演が中止になる可能性が9割以上でしょうから、役者視点は知りませんが経済的リスクを負う主催者としては絶対に感染者を出すわけにいかないのでオフラインでの接触自体を避けたい気持ちがあります。

というわけで、zoomなどでオンライン稽古するわけですが(うちはDiscord使用)所感は以下の通り

・稽古の代替にはならない(当たり前)
→台本の読み合わせ等なら代替できますが、役者間の物理的な距離、立ち位置がらみは壊滅的ですのでどうにもなりません
・集まるのは容易
・稽古場代がかからない
・深夜でも稽古可能
・交通費などの負担が減る

という感じでした。まあ結局、うちの公演も公演直前のオフライン稽古2回でなんとか体裁を整えたというのが実際ですのでオンライン稽古は普通の稽古の代替にはなりません。

ただ、経費面と機会面では優れているので、稽古全体の2割くらいをオンラインに移行するのは、慣れは必要ですが十分ありだと思います。
withコロナとは関係なく、今後は稽古の在り方について最新技術を取り込んで模索していくのは必須でしょう。

ソーシャルディスタンスを保った客席について

さっくりまとめたいのに文章が増えてるので、ここからは簡潔に!

・1m間をあけるのはきつい→定員が減れば収益は減る
・ただ観客的には快適→そもそも小劇場は客席間が狭くて不快な面があった、味と言えば味ですが
・複数列の平置き客席でも舞台が見やすい→前方の客席列が”疎”なので

収益悪化、というか席料の高騰はもともと赤字のしょーもな演劇界隈的には致命傷なので劇場の席数はどんな手を使ってでも戻すことになるでしょうが(もしくは公的扶助で劇場使用料を半額程度に落とす手がありますがこれはいつまでも続けられないでしょう)
隣と1m離れている客席は快適です(断言)
そういう意味で客席の在り方(およびチケット料金)を考える契機にはなったんじゃないでしょうか?

値段が30%アップする代わりに、”隣席と接触しておらずゆったりしていて、荷物を置く余裕もある席”を選べるなら、そちらを選ぶお客さんは普通にいると思いますよ。少なくとも自分はそうです。

マスクを着用して本番をすることについて

・声の通りについては、心配するほどではない
・ただし、言葉の聞き取りやすさは低下します→トレーニング次第でマスクをつけていても聞き取りやすく発話できるのかもしれませんが……
・上記の問題が気になるなら素直にマイクなどで拡声してください。コスト面は知りませんが

・見た目について
→表情が読めないのは致命傷と思えませんでした、そもそもお面や全面を覆うマスクをつけることが前提の芸能って多いですからね。人間の認知能力でカバー可能な範囲
→ただ、例えばシェイクスピアの作品をやる際にいわゆるサージカルマスクをつけるのは不可能でしょう。見た目が面白すぎます。お能みたいに、ロミオの仮面、ジュリエットの仮面を作って内側にサージカルマスクを貼り付ければ公演はできますが……

・副次的な効果として、湿度が保たれやすいので役者が喉を傷めるリスクは低減しそうです。まあそもそも痛めるような発声するなって話ですが

本番当日までの心境

これはもう、とにかく感染してくれるなの一言です。

今公演については感染リスクは交通事故にあうリスクと同程度だったと思いますので、気にしないというのが合理的な態度でしょうが、そうはいかないのが人情です。

通常の公演の五倍は胃がキリキリしますので覚悟してください。

声楽系列とかいまだに公演自体が不可能な感じですが、合唱団とかワクチンが出来上がって団員全員が抗体を持てる時期(二年後くらい?)まで理論上舞台に立てないですよね、だって練習ができないから(正確には練習の感染リスクが高すぎるから)

肺をやって選手生命を失うリスクを負って団員全員で感染するという手段もありますが、70人くらいの合唱団で実際に全員感染したらたぶん再起不能になる人が出てきます。
冷酷無比な殺人マシーンみたいな集団でもなければこれを看過することはできないでしょう……

やった方がいいの?やらない方がいいの?

これはもう単純にやらない方がいいです。

うちは
ちょうど感染の波の狭間にいることを認識できた+一か月の準備期間でどうにかする目途が立つタイプの作風だった(とはいえ、いつもより作品の精度はどうしても落ちます)+団体として二年間冬眠には耐えかねる
という三つの条件があったので、ひとまずやりましたが(実際には思想的な部分が強い)

そもそも赤字が前提の小劇場と呼ばれるしょーもな界隈でこの状況下で公演をやるなんてリスクとリターンが全く釣り合いません。

そういう意味で今回のコロナ禍は演劇に限らず日本特有と呼ばれる習い事、おけいこ事、趣味の延長界隈のアマチュア文化にとどめを刺すかもしれませんね。

まあそういう状況だからこそ、狂戦士のごとく戦場に赴く輩が出てくるのも間違いありませんが(うちの劇団もそっちの仲間、ドン・キホーテ系列だったようです)

そういう狂戦士に朗報があるとすれば、少なくとも現時点の関西エリア程度の流行状況(県単位で見た時に日に数名程度の陽性判定)であれば、供給が減ってることもあってお客さんはわりと来てくれます(ちょっと感動しますね)

あと、国が金を出すと決めた分の公的な補助は普通にたくさんあるのでうまく活用すれば経済的な難局もあるていどはカバーできます。

結局、志と何がしたいかの問題ですね。

以上、とりとめのない乱文を失礼いたしました。

また会う日まで。


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