story 断片
古老がひとり
ふしくれだった指に
ある断片を持ちながら
思案にくれている
来る日来る日も
その場所にいて
同じものを見つめている
ふしくれだった指に
ある断片を持ちながら
その紙切れは
一体どこに
収まるんですか…
古老は
驚いたように
私を見た
いや
古老が見たのは
私ではない
記憶の向こうに
霞んで見える
確かにあった
遠いあの日を
ことばはこころ。枝先の葉や花は移り変わってゆくけれど、その幹は空へ向かい、その根は大地に深く伸びてゆく。水が巡り風が吹く。陰と光の中で様々ないのちが共に生き始める。移ろいと安らぎのことばの世界。その記録。