出来心
どうしてそんな話になったのか忘れてしまったが、休日の昼間に5歳の息子と話していた時のこと。
ぼく
「交通事故で頭を打って、その後、一生眠れなくなった人がいるんだよ。みんなが眠って嫌な事忘れてスッキリしてる間に何してたんだろうね?眠れないってつらいだろうね。」
子
「…その人、悪い人だったの?」
私
「どうだろうね。もし、いい人だったら可愛そうだね。」
息子はこの世の中において人に降りかかる災厄がいかなる法則によって起こるかを気にかけている。それは天罰というように、悪人にのみ降りかかる神のイカヅチの如きものなのか、それとも万人に気まぐれにある時突然訪れるものなのかを。
ぼく
「でもさ、そもそも、いい人とか悪い人とかっているのかな?いい人の中にも悪い心があるし、悪い人の中にもいい心があるんじゃないかな?息子にも、パパにも悪い心があるでしょ?少しは。」
子は頷いて言う。
「ママにはある?」
ぼく
「ママが帰ってきたらきいてごらん?『ママにも悪い心があるの?』って」
子
「うん」
私
「その時にね、もしかしたら、口では『ママには悪い心はないよ』って言うかもしれないけど、その時は壁に映るママの影をよく見てるんだよ。ママに気付かれないようにこっそりとね。」
子
「なんで影を見るの?」
親
「もしママが嘘をついてたら影に角が生えてるから。実は本当のママじゃない人がなりすましてたりして…」
子はみるみる表情を曇らせて
「…やめて」
子供ってまだ現実世界はこうだっていうタガがないから、こっちが「〜だったりして」と想像を膨らませるとすぐにその気になる。
それをいいことに、しばしばぼくは世の中の闇をチラつかせたりする。なぜそんなことをするのだろう?自分の中の悪い心がそうさせるのだろうか?