ご一緒にどうですか?
2020年4月、わたしはTwitter(現在はX)を見ながらスマートフォンを握りしめて悶絶していた。新型コロナの影響で行き場がなくなってしまう山形の観光果樹園の果物が、6ヶ月間に8種類・42kg届くフルーツ頒布会のツイート(現在はポスト)をみつけたからだ。
「あー!これ絶対おいしいやつ!お買い得!でもちょっと多くて食べきれないかも…あー、でも…魅力的…あー。」
と悶絶するるわたしに
「シェアするー?」
と声をかけてくれたのが劇団無国籍の斎藤大典さんだった。
かくしてわたしは山形のおいしいフルーツを受け取りに大典さんと国久さんご夫妻のお宅へ半年間、毎月お邪魔することとなった。
コロナ禍で公演が次々と中止になり仕事も減り最小限の世界で生活していたあのとき、“フルーツを受け取りに行く“という名目でほんのひととき会って話をする毎月の時間を、わたしはとても楽しみにしていた。もしかしたら、というか確実に、フルーツより楽しみにしていたと思う。
時期が時期だけに、話の内容は決して楽しいものだけではなかったはずだ。三角フラスコと劇団無国籍のメンバーは30代〜50代で、新型コロナウィルスの流行以外にも育児やら仕事やら親の介護やら自分の病気やら社会やら時代やらなんやらかんやら、とにかくままならぬものを抱えてままならぬ毎日を生きている。気力も体力も時間も著しく消費する演劇を創作するにはちょっと腰が重くなっているし、実際の腰痛もある。
それなら。
「シェアするー?」
おいしいものを分けあうように、重い荷物を分けあうように、ビスケットいちまいをはんぶんこにするように。ひとつの劇団だけでは難しいことも分けあって創っていこうぜ!そんであわよくば予想しなかった新しいとこに行ってみようぜ!という気持ちで声をかけたのが今年の2月。任せて安心なスタッフのみなさんも参加してくれて、まだ先なのに公演を楽しみにしてくれるお客さまもいて、嬉しくとても心強い。驚いたことに嬉しさも心強さも分けても減らない。むしろ増える、無尽蔵。シェアしてよかった。
お客さまと作品の世界を、劇場で時間と空間を分けあうのはもう少し先になりますが、大胆に繊細に創り上げていきますので楽しみにお待ちください。どうぞよろしくお願いします。
三角フラスコ
瀧原弘子