【ネタバレあり】無期迷途 泡沫の酔夢 4章 対局の相手






エイレーネーはここが夢だということを知っていた。
この世界の全ては彼女の意思に従っている。
局長はそこであることに気づく。
「ある者の意識に従う」という不穏なイメージはまさにブラックリングと同じことに。
彼女が知っていた事は局長にとって想像をはるかに超えていた。
新型狂瞳病の裏にある目的を知れば、局長は戦慄するだろう。
エイレーネーは言う。
安心して。明晰夢というやつよ。その限界と定義は明確。
私はブラックリングのように自分の意思で現実をコントロールすることは出来ない。
局長は問う。
どうしてこんな幻想に頼るんだ?
あなたは現実でも全てを征服できる。
あなたはクイーンの社長だろう?望んだことは成し遂げられる。
あなたの欲望と歩みを止められる者はいない。
エイレーネーは答える。
あなたの言う通りよ。だからこそ、だからこそ、時には退屈を感じるの。
私は多くの望みを実現させたけど、どれも私を満たしてはくれない。だから好奇心に駆られる。
噂に聞くメローはわたしにどんな楽しみをくれるのか。
永遠に私に退屈させる事がないのか。
エイレーネーは対面している幻影を見ていた。
その幻影はとても冷静でチェスに集中している。
そこで局長はエイレーネーが対局相手を探していることに気がつく。
局長はエイレーネーとディスチェスで対局することになる。

エイレーネー 使用 駒(キング) ゾーヤ

エイレーネー 使用 駒(キング) ラングリー
チェス盤がリセットされた際に並べられた駒
白(局長)
ゾーヤ ハーメル ヘカテー ヘラ
黒(エイレーネー)
Mr.FOX 辰砂 メイス ナチャ
エイレーネーに4連敗した局長はまだ1勝も出来ていない。
見兼ねたエイレーネーが局長にアドバイスをする。
「駒」を理解し、「対局」を理解する。
人に性格がある様に駒の動きには法則性がある。
その性格は彼女(駒)達の命運を決める。
優れたプレイヤーは駒の法則性をよく知り、上手に使う。
エイレーネーの駒についてのアドバイス
ゾーヤ
強い駒は、進む途上の全てを壊す。
1人で軍を成し、適う者はいない。
でも、彼女は知らない。
自制心を持たず、盲目的に前に進むだけ。敵の罠にかかればすぐに崩壊してしまい、切り捨てなければ被害が波及していく。
ハーメル
虚無の駒。敵陣に入り込んでも攻撃を受けない。
無差別に全ての人を癒し、全ての人を守る。
彼女は自分のペースに従うから局長に動かされることはない。
局長がピンチに陥っても彼女は振り向かない。
ヘカテー
頑固な駒。将の傍にいれば、極限の力を発揮する。
でも、一旦慣れた場所を離れると使えなくなる。
いつでも崩れ、いつでも捨てられてしまう。
局長(プレイヤー)
将は自分の場所を守り、駒を駆使して自分を守るべき。
プレイヤーがやられたら、他の駒が生きていても意味がない。
プレイヤーがすべき事は局勢を読み、観察し、計算し、判断し、彼女達を最大限活かす方法を決めること。
必要とあらば勝利の為に切り捨てる洗濯をしなければならない。
局長がそういう物言いを好きじゃない事は分かっている。
チェス盤の上でさえ、彼女達を駒として見れないなら現実での勝利はなおさら難しいわねとエイレーネーは言う。
エイレーネーは局長の事を知っていた。
将でありながら、安全な場所を離れ、一人で敵陣へ乗り込んでいる。
自分の代わりに彼女達にリスクを負わせることを考えていない。
だから私と一緒に閉じ込められている。
私はあなたに期待している。
第九機関の特別な新人。MBCCの局長。BR-004の特別な関係者。
エイレーネーの目的(局長の見解)
エイレーネーはメローを探りたい。
新型狂瞳病の力あるいはナチャがどこまでやれるかを見てみたいから局長に邪魔されたくない。
結果から見れば、明晰夢は想像された1つの世界を完全に支配することが出来る。
現実では、夢遊病者は自分の精神波動を形ある「汚染」として具現化出来る。
エイレーネーは既に夢の中の世界をコントロール出来ている。
ならば次は、現実と繋がることが出来れば彼女は明晰夢を通じて意識的に現実をコントロール出来るようになるだろう。
これが彼女が欲しいものなのだろうか?
エイレーネーのアドバイスに対する局長の反論
(彼女達は駒ではなく仲間である)
ゾーヤ
いつも暴力で道を開く。彼女は短気で偏執的だが、いつでも人の為に戦い、愛する者を振り返る。
ハーメル
ハーメルの見ている世界は常人とは違うが、そのよそよそしさは彼女が冷淡だからではない。
彼女は彼女なりに他人を世界を愛している。
広い世界には彼女のための舞台があるはずだ。
彼女はきっと観客を見つけられる。
ヘカテー
ヘカテーは命令に従順だが、魂がないわけではない。
不器用だが彼女はこの混乱した世界を理解しようと努力している。
感情を持つ彼女には未来の可能性が沢山あるだろう 。
ヘラ
ヘラをみくびってもらっては困る。
あなたは彼女が必死に戦う姿を見たことがないのだろう。
彼女は大切な人のためなら、どこまでも強くなれる。
自分(局長)
私はあなたではない。
将でもチェスプレイヤーでもない。
私は彼女達と肩を並べ、共に盤上に立っている。
あなたの作ったこの運命の盤上において、私は彼女たちの仲間でありたい。
局長はエイレーネーに言う。
傲慢なあなたには見抜けないだろう。
駒はいずれ「規則」を覆し、あなたの妄想に過ぎないこの命運を打ち破る。

エイレーネー ・泡沫
結局、局長はエイレーネーには勝てなかった。
だが、エイレーネーは局長を対局の相手。私の友人として認めてくれた。
悩める心が晴れたら戻ってきてちょうだい。思う存分ゲームをしましょう。
次はあなたが愛する現実の世界がいいわね。と送り出してくれる。
局長を送り出した後、エイレーネーは対局場へ戻る。

