おじいさんと大にゅうどう

むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。
ある日おじいさんが山にしばかりにいくと、どこからか
「うおおおん、うおおおん」
と、なにやらぶきみなほえごえのようなものがきこえます。
ふしぎにおもったおじいさんが、こえのするしげみのおくのほうへとはいっていってみると。。。
そこには、三つ目の大にゅうどうがうずくまって、口もとをおさえておんおんと こえをあげているすがたがありました。
おじいさんはとってもこわかったけれども、三つ目の大にゅうどうが あんまり こまりはてているように見えたので、おもわずにげるのもわすれてちかよって こえをかけました。
「お、大にゅうどうさん、どうしたんじゃね」
「どうしたもなにも、むしばがひどくてかなわんのだ」
大にゅうどうがじぶんの口をふさいでいた手をひろげると、ふだんはとっても ながくておそろしげに見える きばに、あちこち まっくろな あな が あいて ぼろぼろになっています。
「なるほど、これは いたそう じゃの」
いつもなら、こわくてにげだすはずのおじいさんですが、このときばかりは なぜかへいきで、大にゅうどうをたすけてやりたいきもちになりました。
「どれ、このさきに、どんなびょうきも けがもなおす ふしぎないずみがあるときく。その水で きばをあらえば、なおるかもしれんて」
「なに、そんなところが。では じい、わしを そこへ つれていってくれんかい」
こうして、大にゅうどうとおじいさんは、たすけあいながら、けわしい山みちをわけいって そのふしぎな水がわきでるいずみにたどりつき、きばをあらうと あらふしぎ、たちまち むしばのあながふさがって、もとのとおりの りっぱなきばになりました。
「じい、ようやった。このおれい、かならずするからおぼえておくがよい」
大にゅうどうはそういうと、じいさんをむんずとつかんで かぜのように いっしゅんでおうちの前へとかえしてやり、そしてじぶんは、あっというまに山のどこかにきえていきました。

それからしばらくたったある日のことです。
その日もおじいさんは、山でしばかりをしていましたが、おうちのあるほうがくから、なんだか こないだとはまたちがった、きみょうなこえが きこえてきます。
おじいさんがあわてておうちへかえってみると、おうちの前には見たこともないような、けむくじゃらのばけものがいて、おばあさんをおうちからつかみだそうとしているところでした。
おばあさんは ぶるぶる ふるえながら、おうちのいちばん大きなはしらにしがみついてなんとかふみとどまっています。
「お、おばあさん、だいじょうぶか!」
おじいさんはとっさに、かってきたしばをかごごとそのばけものになげつけましたが、ばけものはへっちゃらです。
「なんだ? ふん、じじいがかえってきたか。かまわん。おまえもいっしょに。。。」
ばけものがいいおわらないうちに、とつぜん、みちのわきからひとかかえもある大きないわがころがってきて、ばけものをよこっとばしにはねのけました。
びっくりしているおじいさんとおばあさんの目の前にあらわれたのは、あの三つ目の大にゅうどうです。
「やいこらばけもの、このじいをこまらせるものはわしがゆるさん」
「なにをいうか、こいつらはわしのえもの。。。」
「しらんわい!」
みなまでいわせず、大にゅうどうはその大きなりょうの手でばけものをくるくるっとまるめると、山のむこうのそのまたむこうの、もっとむこうにむかって、ぽーんとなげとばしてしまいました。
「じい、こないだは」
「あ、いや、こちらこそ」
おじいさんとおばあさんは、ばけものをおいはらってくれた大にゅうどうに、ごちそうをたぁんとつくってふるまいました。
大にゅうどうはそれをぜ〜んぶたいらげると、ああうまかった、またこまったことがあったらいつでもわしをよべ、といいのこして、また、いちじんのかぜとともに、山へときえていきました。
もちろん、ごちそうをたべたあとは、しっかり、はをみがいていったということです。
めでたしめでたし。
さ、ねんねしよ。

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