かけひき

少しだけ愛だとか恋だとかに、足元掬われたかった。
ちょうど良いところで貴女が、私を見てくださいと声をかけたから、私は貴女を好きになってしまったと伝えた。
貴女は、遠くの方を見ていて、ただその人の視線が返ってくるのを待ち侘びていた。
私はてんで、いろはも知らず、阿呆のように喜び勇んで、熱を上げた。
貴女が私から欲したのは、直向きな賞賛であり、私に触れたいだとか、私への求心でない。
気付いた途端虚しくなって、私はそっぽを向いた。
いつだって焦がれてるんだろ、貴女も私も。
柔らかい足元を、当然のように陣取って我が物顔で。
自分に熱を上げる誰かを待っている。
さらさら砂粒が、漏斗を伝うように、拱いている。
貴女がその人を食い散らかすまで。
私が貴女の足を掴むまで。

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