2010年のレバノン -トリポリ
~お前はクリスチャンか~
トリポリと聞けば、カダフィ大佐で有名なリビアの首都を思い浮かべるが、レバノンにもトリポリという街がある。
首都ベイルートに次ぐ、レバノン第二の都市だそうだ。
トリポリをブラブラしていた時に、カフェのテラス席にいた男たちに声を掛けられた。
はっきり覚えていないが多分、「お前はブルース・リーかジャッキー・チェンの国だろ」「いや、日本はカンフーじゃなくて、空手だ」的な会話が初めにあったと思う。
レバノン滞在中は何度も「アチョー」とカンフーポーズで声を掛けられた。
それはさておき、会話が進んだ中で、
「お前はこれか?」
と、彼は両手の人差し指で十字を作って聞いてきた。
「これ」が何のことか分からず、ぽかんとしていると、
「Christ?」と聞かれた。
「お~、No、No」
「I'm …」と言いながら両手を胸の前で合わせて合掌のポーズを取り、
「Buddhist」「日本はほとんどがBuddhistだ」
と答えた。
「ふーん。Buddhistは教会か?」
「Buddhistはお寺だ」
みたいなやり取りをした記憶がある。
そこにいた人たちは全員ムスリムだったが、キリスト教徒の悪口が会話の中で出てきたことは覚えている。
レバノンという国を辞典か何かで調べてみると、「首都ベイルートは中東のパリと呼ばれ」「大統領はキリスト教徒、首相はイスラム教スンニ派、国会議長は同シーア派から選出されることになっている」という記述が必ずあり、そこだけを読めば何となく、宗教的な融和が取れている、華やかな国かなとも思ってしまう。
中東に位置しながら、キリスト教徒も多くいる国。他のアラブ諸国とは違うこともレバノンに行ってみたいと思った理由の1つだ。そこで暮らしている人たちは、どのような人たちで、異教徒の人のことをどう思っているのかなというのも気になった。
その答えが、トリポリでの会話だった。
やはり宗教が違えば、特にキリスト教とイスラム教では歴史的なこともあり、お互いを尊重しあって共生するというのは難しいのか、と思わざるをえない経験だった。