永遠の旅路――タイムマシンと記憶の物語①
序章:タイムマシンが生まれた世界
未来では、タイムマシンはすでに実用化され、特に驚くこともなく、あるからといっても変化はあまりない。
その基礎を築いたのは、かつては某メーカーとして知られていた「〇〇●」だ。
彼らが開発した回転型機構は、その効率的なエネルギー利用により、ゼロポイントエネルギーを安定的に扱う技術へと進化を遂げた。
そして、このエネルギーこそが時間移動の鍵を握るものとなった。
タイムマシンは、巨大な円筒状のロケットの形をしている。
乗り込むと、空へ向かう感覚とともに重力が反転し、天井が地面になり、地上が空に変わる感覚に包まれる。
この瞬間、物理的な位置だけでなく、時間そのものが移動するのだ。
そして、一度旅立つと、元の時間軸に戻ることは難しい。
帰還が可能だとしても、別の時間軸を経由して戻った先では誰もその存在を記憶しておらず、全くの別人同士のような関係になるという。
実際のところ、運良く帰還して前の世界の知り合いとまた知り合う事になっても、自分の知っているその人ではないし、本人もそれを覚えていない。
その世界の軸に合わせるように記憶は新しい世界に取り込まれ、時間には取り込まれない。
ただ、その世界の人になり、自然と暮らすようになる。
前の世界の記憶が残ることが一定条件であるようだが、基本的にないので特に問題とはならない。
私自身も、ある大切な人をこのタイムマシンで失った。
彼女は何を求めて旅立ったのか、今では覚えていない。
ただ、その後に残された虚無感だけが私の中に刻まれているーーー。
タイムマシンの技術と仕組み
タイムマシンの技術を語る上で重要なのは、「エネルギーの制御」と「時空の操作」の2つの要素だ。
2036年に実現したタイムマシンは、この両方を革新的な方法で組み合わせた装置だった。
開発のきっかけはある時点で、装置内の燃焼の挙動に特殊な物理現象が起きた事がきっかけだったようだ。
技術が進んだ事で、機構内部での燃焼が量子現象や時空間のゆがみを発生させる特性を持つようになったとされ、
それがタイムマシンの基礎理論につながったとされる。
燃焼プロセス中に微小なブラックホールやワームホールが一瞬形成された。という説が、しばらく経ってから言われ始め、そんな感じだったのだろうな、ということになっている。
しばらくその存在は噂程度だったが、いつのまにかある事になっていた。
今の時代でも識者はいつかは作れるだろうという感覚はあるだろうから、
そういう人たちはあるんだろうなくらいに思っていて、
それがゆっくり浸透してやっぱりあったんだなと一般の人たちでも認識され利用できるようになったのは15年くらい後だった。
タイムマシン技術の中心にあるのが、高密度エネルギーとゼロポイントエネルギーの応用、そして〇〇●が長年培ってきた回転型機構の技術の融合だ。
高密度エネルギーとゼロポイントエネルギー
高密度エネルギーは、時空を操作するための基盤となるエネルギー源だ。
これは通常のエネルギー源とは異なり、極めて小さな空間に膨大なエネルギーを凝縮する技術を必要とする。
タイムマシンのエンジンでは、これを生成するために「量子真空」と呼ばれる状態を利用する。
量子真空は、宇宙のどこにでも存在するエネルギー場だ。この場からエネルギーを取り出す技術は「ゼロポイントエネルギー」と呼ばれ、これがタイムマシンの動力の根幹となっている。
ゼロポイントエネルギーを安定的に取り出すことで、通常の物理法則では不可能とされる「時間の曲げ」が可能になる。
回転型機構の役割
ここで重要なのが、〇〇●が開発した回転型機構の技術だ。
これは従来の機構と異なり、回転運動を用いることでエネルギー効率を最大化する設計を持つ。
この回転運動が、高密度エネルギーの生成とゼロポイントエネルギーの制御に必要な「安定性」を提供する役割を果たした。
特にタイムマシン用の動力では、超伝導素材を使用して摩擦をほぼゼロに抑え、エネルギー損失を極限まで減らしている。
これにより、タイムマシンが必要とする膨大なエネルギーを短時間で効率的に供給できるようになった。
さらに、この回転運動は重力波の生成にも寄与し、時空の曲率を変化させるための「鍵」となっている。
時空の操作と重力波
タイムマシンが時間軸を移動する仕組みは、重力波を利用した「ワームホールの生成」によるものだ。
重力波は、時空を振動させる波動現象であり、これを人工的に発生させることで、時空の異なる点を繋ぐ「トンネル」を作り出す。
回転機構による高精度なエネルギー制御と、ゼロポイントエネルギーの供給が融合することで、このトンネルは安定化し、タイムマシンが安全に時間を超えることが可能になる。
ちなみに特殊な機構だが、昔からある技術が意外にもタイムマシンの基礎となったのは、
今後、次世代の技術として代替する予定だった、
電動化や自動化の新技術のエネルギー効率が天井打ちとなり、旧世代の技術も同時に存在し、改良が続いていたことや、
電動化や自動化において、エネルギーの「精密制御」を重視する事でエネルギーの効率化を図った為、
これが後の時空間での精密なコントロールするための技術基盤となったからというのもある。
ちなみにタイムマシンの容器は同時期に開発されていた核融合の「炉」が転用されている。