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流体力学のあいつ
ナビエ-ストークス方程式
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に現れる
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が可愛いと評価され、流体力学のあいつ、などと呼ばれているらしい、と聞いたのは金曜日の会社、死にたいと呟くことの多い後輩君の口からだった。お付き合いのあるフィリピン人女性が日本に戻ってくる、クリスマスだしボーナスが消える、と嘆いている口が突然そんなことを言った。
フィリピン人女性についてはいろいろ突っ込みたいこともあったが、そこは知的な先輩面を崩したくないのでぐっとこらえ、
あ、そうなの?
と僕は反応した。学生の頃、ヒコーキに関する学問を専攻していたため、流体力学には時間をさいたけれど、流体力学のあいつについては初耳だった。
そうなんです。ナントカカントカ…
の後、後輩君は自分が学生だった頃の教授の非道を語りはじめたので、僕は心の中でフィリピン人女性にエールを送った。厚い財布ではないけれどこいつからは搾り取ってください、多分彼はそうされることに快楽と救済を感じるタイプだから、と見も知らぬ女性の顔を思い描きながら話しかけた。