自分なりの導入文のパターンを整理してみた
ライターを始めた頃、原稿を書くかとファイルを開いた後、導入文・リード文ですぐに手が止まってしまうことが多々ありました。白状すると、今でもよくあります。
手が止まるときは、だいたい何を言うべきか、どう言うべきかどちらかで悩んでいることがほとんどです。何を言うべきかはさておき、どう言うべきかは一定のパターンがあるのではと思い、パターンを整理してみることにしました。
導入文・リード文の役割って何なのか?
筆者が普段関わるウェブメディアでは、導入文やリード文を「想定読者に先を読み進めたいと感じてもらうための文章」と位置づけていることが多いです。いち書き手としても、導入文やリード文では、読者が文章について能動的に関わりたくなるような、少し身を乗り出したくなるような体験をつくれたらなと思っています。
合わせて気をつけているのが、読者の意思や読む力を尊重しない導入文やリード文を書かないことです。「センセーショナルな事実を冒頭に持ってきたら良いんでしょ」とか「読者は『どう役立つか』を強調しないと読んでくれないよね」とか。間違いではない部分もあるとは思いつつ、一概には言えないこともあるだろうし、読者を信頼していないようで避けたいなと。それに、自分が読み手の立場だったら悲しいとも思うからです。
なので、以下にまとめた導入パターンも「このパターンならオールオッケー!」とかではなく、大切な読み手に大切な原稿を読んでもらうために、どういう入り口があると良いのだろう?を考えるきっかけにしてもらえたら嬉しいです。
1. 背景や課題の提示
想定する読者が興味を持っていそう、あるいは持ちそうな社会背景や課題を、実際のニュースや統計を持って提示するパターンです。
記事の主題が、その社会背景や課題をどのように象徴するのか、あるいはそれらに一石投じるものなのかを説明します。
例:2018年、日本企業によるスタートアップのM&Aが、件数・金額ともに過去最高を記録した。 米国に比べ、日本はIPOによるイグジットの割合が多いことで知られていたが、状況は少しずつ変わりつつある。
ただ、M&Aを果たした起業家は、ロックアップ期間を終えると退任し、次のチャレンジへと進むことが多い。 しかし、そうした“通説”に囚われず、別の選択肢を選ぶ起業家もいる。
https://www.fastgrow.jp/articles/gram-koide
このパターンで書くときは、読み手が「本当にそうなの?」と疑問を抱くことがないよう「どのような情報を踏まえて、こういう社会背景や課題があると思ったか」を示すようにしています。
2. 個人の考えや悩み、体験シェア
個人の考えや体験を共有し、それに対して記事の主題がどのような学びや気づきをくれるのかを示すパターンです。
例:大学生の頃「ビジネス」という言葉が苦手だった。当時、私はこの言葉に人や社会への想いは二の次、ただ利益を追求する手段、という印象を抱いていた。今思えば、かなり浅はかだった。
社会人になって数年。心から共感できる活動が十分な収益を立てられず、ゆるやかに後退していく様子を何度か目にした。想いを形にし、誰かに届け、社会をよりよくしていくために、「ビジネス」は不可欠なのだと痛感した。
学生時代の偏った見方を恥じるとともに、確固たる思想を保ったまま、事業を伸ばしている人の姿に、強く惹かれるようになった。“1冊の本だけを売る森岡書店の店主、森岡督行さんも間違いなく心惹かれるビジネスを営む一人だ。
https://unleashmag.com/2018/12/06/morioka_shoten/
このパターンは、近しい考えや体験を共有している読者に読んでもらいたい記事で用いることが多いです。むりやり主題に合わせた個人の考えや体験を書こうとしても、違和感が残ってしまうので、このパターンで書ける記事と書けない記事は結構分かれる気がします。
3. 情景、人物描写
記事の主題を象徴するような、取材相手の様子や取材先の様子を描写する。記事の主題に関心のある人に「面白そう!」と感じさせるパターンです。
例:開店、朝8時。閉店、夜11時45分(金土は12時45分)。飲食店や流行りの店が並ぶイーストビレッジ地区に125年前から立つイタリア菓子屋「Veniero’s(ベニーロズ)」の看板。目覚めの良い朝方の甘党から目の冴えた夜型の甘党までが、吸い寄せられるように集まってくる。ニューヨークには、リトルイタリーにある1892年創業のフェラーラ・ベーカリー・アンド・カフェや、1918年に開店したブルックリンのサヴァレス・イタリアン・ペイストリー・ショップなど、歴史あるイタリア菓子店は珍しくない。そのなかでもベニーロズは、人の集まる立地と他店よりちょっぴり長い営業時間でもって、「ちょっと夜に甘いものが食べたくなったから」「評判のいいニューヨークチーズケーキを試したかったから」で気軽に入れる人気店として有名だ。
https://heapsmag.com/venieros-italian-pastry-shop-team-work
このパターンで導入文を書いたことがほぼなかったため、敬愛するRisa Akitaさんの絶品な導入文を引用させていただきました。冒頭で、イーストビレッジ地区の全景から、とあるお店の看板にクローズアップ、扉が開く音を合図に、店内に吸い寄せられるように集まる人が映し出される。そんな映像が浮かぶようです。
4. 読み手へのクエスチョン
記事の主題について読み手に呼びかけ、期待される反応や答えに対し、これからの記事内容がどう位置づけられるかを示す。
例:「老い」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべるだろうか。漠然と、ネガティブなイメージを抱いている人は少なくないだろう。それも仕方がない。歳を重ねるにつれ、脳や身体の動きは衰えていくのだから。
20代の私は「若いうちにやりたいことをやらなければ」と自分に言い聞かせる。周囲も「まだ若いのだから何でもできる」と言う。まるで、老いたら何もできなくなってしまうかのように。
けれど、本当にそう言い切れるのだろうか?そんな、宛てのない問いに私たちを誘うのが、早稲田大学のドミニク・チェンゼミと橋田朋子研究室による合同展示、『Aging』だ。老いることを、「物体の経年変化」といったポジティブな意味を含む「Aging」という言葉から捉え直すために、学生たちが作品制作を行った。
https://unleashmag.com/2019/01/15/aging/
このパターンは読み手と一緒に考えを深めたいテーマについて書くときによく使っているような気がします。
5. 惹きのある発言
読み手が「お?」と読み進めたくなる驚きや意外性、面白みのある発言を、冒頭で共有するパターンです。
「待ち合わせしてたら電池がゼロになってしまって、マクドナルドで充電したんです。結局、1時間遅刻して、大前さん激怒だろうな、と思ってました」「そうだったんですね(笑)僕、『遅い』とか全然思ってなかったです」
3年前の出会いを笑いながら振り返るのは、小説家の大前粟生と町屋良平。当時、大前氏は『彼女をバスタブに入れて燃やす』で『GRANTA JAPAN with 早稲田文学』公募プロジェクト最優秀作品に選ばれ、デビューしたばかり。同プロジェクトの最終候補に残っていた町屋氏も、同年デビューを果たした。以来、町屋氏は、人生を憂うプロボクサーの内面を綴った『1R1分34秒』で芥川賞を受賞。大前氏は、昨年短篇集『回転草』を発表、読むものの意表をつく設定とストーリーが話題を呼んだ。
https://unleashmag.com/2019/05/21/report_machiya_ohmae/
このパターンは、登場人物や記事全体の特徴が明確にあり、その一端を伝えたいときに使うことが多いです。
ただ、安易に使ってしまうと「よく見るパターンね」と受け取られる可能性もあるので、明確な意図を持って使いたいパターンかもしれません。
パターンをはみ出した導入文・リード文を書くために
さて、色々書いてきましたが、このパターンに当てはまらない最高な導入文やリード文はこの世にごまんとあると思います。私自身もパターンは一定参照しつつ、そこからはみ出した文章を書けたらなと考えています。
最後まで読んでくださった書き手の方には、勝手ながら「一緒に最高な導入文・リード文を書きましょうね!」と大声で伝えたいです。他にもこういうパターンがあるよ!とか、1と2の組み合わせもありでは?とか、ぜひ教えてください\\\\٩( 'ω' )و ////