文章を対話型鑑賞したら楽しかった話
すべりこみでアドベントカレンダーを書きます。
今年もたくさん原稿を書きました。悩みは尽きないものですが、特に今年の夏あたりは文章の引き出しを増やすにはどうすれば…..?を考えていました。
ライターになって数年、よくも悪くも自分なりの型というか手癖のようなものができてしまい、「なんか似たような言葉をこの前も使った気がする」「〇〇さんの原稿、思いつかない表現がいっぱいだな」と感じることが増えていたからです。
わたしの所属するinquireでは、日ごろの仕事で抱いた悩みや課題を楽しく研究する「編集・ライティング研究」という活動を続けています。今回、引き出しを増やすアプローチとして「文章の対話型鑑賞」をやってみたので、その経緯や方法を紹介できればと思います。
写経してみたら?
「引き出し増やしてえ・・・!」
と、敬愛するライターの先輩、西山さんに話してみたところ、文章の写経とかやってみてもいいかもね、とアドバイスをもらいました。
ここでいう写経はお経を書き写すのではなく、他の人が書いた文章を書き写してみることです。中高生のときに小論文の勉強などで、新聞の社説を写経した、あるいはするといいと言われた人は多いかもしれません。
私自身は文章の写経を一切やったことがなく、正直にいうと「書き写して意味あるんかな?」くらいに思ってました。
とはいえ、尊敬する人に勧められたことはとりあえずやってみる派なので、とりあえずやってみるかと思ったわけです。
めっちゃ楽しいのだが?
で、これまた尊敬するRisa Akitaさんの記事をいくつかBearで写経してみたら、めっちゃ楽しいのだが?となりました。
読んで分析するとき以上に、言葉選びや表現、文章の緩急に意識が向きやすい。打ちながら「この言葉使わないなあ」とか「ここで体現止めするのいいなあ」とか「この段落畳み掛けているなあ」とか色々発見があったのです。
また、相手が上から順に原稿を書き手が書いていくプロセスを疑似体験できるからか、「ここは熱量こもってるな」「ここはサラッと書きたかったのかな」といった、書き手の考えにも想像が広がりました。
その数日後「写経したら楽しかったんすよ!」と西山さんに鼻息荒く話す機会がありました。ついでに写経したときの気づきをシェアすると、話が盛り上がり、新たな気づきも得られました。写経した後、誰かと話すと、もっと楽しいぞ・・・?
文章の対話型鑑賞
「写経はいいぞ!誰かと話すともっといいぞ!」と、さっそく社内の会議で話したところ、代表のジュンヤさんから「文章の対話型鑑賞」というキーワードをもらいました。
「対話型鑑賞」については、以前編集を担当したCULTIBASEの記事で詳しく紹介されています。「作品から感じることや考えることは一人ひとりの感性によって異なる」という前提に立って、「違い」を複数人のグループで共有し、作品への解釈を深めていく美術教育の手法を指します。
わたしが写経によって鑑賞し、誰かと共有し、新たな気づきを得られた経験は、他者や自分自身を探究し、その刺激によって、アイデアやインスピレーションが生まれる対話型鑑賞で得られるものと、近いのかもしれない!
そう思い、編集ライティング研究のテーマとして、自分なりに文章の対話型鑑賞会を数回試しに開いてみました。ここからはどうやったかを共有できればと思います。
文章の対話型鑑賞のやり方
基本の流れはこんな感じです。
5分:対話型鑑賞の説明
15〜20分:写経タイム🧘♂️
25分:対話
10分:振り返りを記入
5分:チェックアウト
写経する方法は、後から他の人に共有できれば、デジタルでもアナログでもOKです。
写経タイム
写経タイムでは、以下のようなポイントを意識しながら、文章を書き写していきます。あくまで初めてやるときのガイド的に挙げているので、絶対にこれを意識せねばとかではありません。
文章表現の特徴
言葉選び
視覚的リズム
聴覚的リズム
句読点
漢字とひらがなのバランス
文章構成
論理展開
主張・メッセージ
対話
お互いのドキュメントを見ながら、一人ずつ「特に気になった文章の特徴とその理由」について共有していきます。「どこが気になったのか」や「なぜ気になったのか」を質問しあうと、より楽しいです。
そのうえで、気になったポイントの背景にある書き手の意図や想いは何だろう?をメインのテーマに話していきます。
テーマを設定しているのは二つほど理由があります。
まず、「好きに話してください!」よりも、一定のテーマが決まっているほうが、話が盛り上がりやすい、深まりやすいから。
もうひとつは、文章に活きるアイデアやインスピレーションを得やすくなるのではという期待からです。
以前、芸術活動におけるインスピレーションについての記事を編集した際、人がアートからインスピレーションを得るには、物理的な特徴(色や形、質感)に加え、心理的特徴(作者の意図、時代背景、創作過程)に目を向けることが大切だと知りました。
これを文章にあてはめると、言葉や表現といった特徴の奥にある、作者の意図に目を向けることなのではと思ったのでした。
振り返り
振り返りでは、文章についての気付きであったり、自分の文章に活かしたいポイントであったりを共有します。
得られる効能
何度かやってみて、以下のような効能がありました。
文章の引き出しを増やすためのアイデアやインスピレーションが浮かぶ
「次に原稿書くとき、こういうワーディングしてみようかな」
「このテーマなら、この前、写経したあの文体が活かせるかも」
例えば、今の執筆中の原稿では「記事のテーマから想起される映画作品やその一場面を絡めて、導入を書く」にトライしてみています(引き出しが増えるのと、引き出しから適切に使えるのは別の話)
その他にも
他の人と文章において大事にしたいことを共有できる
「『は』と『が』でやっぱ印象変わるよね!」
「とにかくわかりやすく」ではなく、読者に「どれくらいわかってほしいものか」を踏まえて、説明の方法や文章表現を調整するのが大事
自分だけでは気づかなかった、その文章や書き手の佳さに気づける
深まる愛!!!!!
あとは「原稿が一ミリも進まないときも、写経をすると、何かが進んでいる感じがする、書ける気がする」などの効能もあります。
というわけで、楽しいのでよかったら
文章についてああでもないこうでもないと話すのは楽しいし、学びも増えるし、いいことしかないなと思います。冬休みによかったらやってみてください🥳