星を拾った夜
星を集めに出かけよう、と思って部屋を出た。
だって昨晩は流星群の夜だったもの。きっと幾つかは落ちた流れ星がまだ残っているのに違いない、、そんな気がしたものだから。
――という訳で、部屋のドアをキチンと閉めると、階段を降りて夜の街へと出たのだった。(そんな時、何だかステキな事が待っている気がして、少しだけ心が浮き立つんだ、いつも。何故だろ)
最初、星のなる樹を見つけたと思った。
よもやこんな処にと思ったのだったが、暫く外に出ないでいた間に季節は変わり、街はすっかりilluminationに彩られていたのだった。
見れば向こうの通りの街路樹にもたくさんの星が瞬いている。
路地を曲がると道が暗くて最初は物のカタチでさえも判然としなかったけれども、よくよく目を凝らすと、あったあった銀色に輝く光の欠片が。
アスファルトの隅でぴかぴか光っている小石は、あれは星の欠片なのに相違無い。ズボンのポケットに幾つかの星を詰め込むと、それでもうぼくはすっかり満足してしまったのである。
そうしてその晩、ぼくはベッドの枕元にお星様を並べると、夢の続きのように眠ったのだった。
夢の中でも星の光に包まれるような、そんな気がして・・・。
ところが暫くして目が覚めると、枕元にただの小石が無造作に散らばっているのを発見したのである。
はてな、これが一体星の欠片であったのか。或いは時刻になると再び輝き出すのだろうかと思い、暗くなってから改めて取り出してみたりもしたけれども、やはりそれは元のままなのであった。
空にある時にはあんなに綺羅々々と輝いて見えたのに、地上に落ちてくるとどうして輝かなくなるのだろう。空のうえで光を出し尽くしてしまった所為なのか、それともこれはやはり最初から夜露に濡れた小石が水銀燈の灯に反射して見えていたに過ぎなかったのか。
結局のところ僕は、その後何だか急にぼんやりとしてしまって、いつしか持っていた小石も何処かへやってしまったのだった。
では星集めに出かけたあの晩の行動がすべて徒労であったのかというと、実はそうでは無い。
僕にとって、やはりあれは必要な夜だったのだ。
ジッサイその夜の僕は、タイヘンに価値のある拾いモノをした、という事になるのである。