「家の価値」について考える
モノの価値
家に限らず「モノ」には、想い出や思い入れなど、お金には替えられないプライス・レスな「価値」と、お金に換算できる「価値」の両面があるのではないでしょうか。
お金に換算できる価値とは、「いまいくらで売れるか(買いたい人がいるか)」という「市場価値」であり、所有者の思い入れに関係なく、文字通り市場(世間)が評価することになります。
たとえばクルマの場合、人気車は10~20年落ち、あるいはそれ以上でも高い値がつき、なかには新車価格より高く売買されることがあります。
どのようなクルマが「人気車」になっていくかというと、時代を超えて美しいデザインや高い性能を持ち、かつ整備状況のよいもの、ということになるのではないでしょうか。
さらには、そのような人気車のパーツも市場価値が生まれるので、古い車でも部品を手に入れることが可能になり、より永く良好な状況を保ちやすくなる、という好循環が生まれているようです。
家の価値と築年数の関係
家人気車の市場価格と全く同様のことが、アメリカの家にも当てはまるようです。
古い家でも、使いやすく、美しく、きちんと手入れされた家は、高く評価され、ときには新築時より高い値がつくこともあるというのは、よく聞く話です。
日本ではどうでしょう?
こだわり抜いて建てて、とても大切にきれいに住み続けていても、築年数とほぼ比例して市場価格は落ちていきます。家の場合は立地も価値(売りやすさ)の大きな要因となるので、立地条件にもよりますが、木造住宅の場合、築25年前後で建物査定価格はほぼゼロになってしまうことが多いようです。
「どんなに住みやすくて、きれいな家でも」です!
なぜそのようなことになるのでしょうか。
いろいろ調べてみると、どうも木造住宅の寿命(使用可能年数)=30年前後という、実際の木造住宅寿命とは異なる認識が根深く浸透していることが一因となっているようです。
家の寿命の誤解の要因のひとつに、「法定耐用年数」があげられます。
「法定耐用年数」とは、法人税法の減価償却額を算出する際に、財務省が定めた資産ごとの「耐用年数」のことで、木造住宅は22年、鉄筋コンクリート造の住宅は47年、などと決められています。
この年数はあくまで税法上の経費算出のために定められたもので、けして建物の使用可能年数ではないのですが、建物自体の寿命と混同されているのではないでしょうか。
ちなみに、乗用車の法定耐用年数は、4~6年です。しかし、10年以上の中古車でも、その性能や整備状況がきちんと反映された価格で売買されていることを考えると、家が築25年前後で一律に値がつかない、というのはやはり腑に落ちないところです。その理屈だと、あの法隆寺も査定ゼロということになってしまいます (笑)。
さらに、国交省が2006年に「住生活基本法」を公布した際に、参考資料として発表した、日米英の「滅失住宅の平均築後経過年数の国際比較」というグラフ(図1)にも要因がありそうです。
これはあくまで住宅が解体された時点での築年数の平均です。まだ使える状態なのに壊されるものも多く含まれており、どこにも「寿命」とは記されていません。しかし、「日本の住宅は欧米に比べて、こんなにはやく壊されているのか」という驚きとともに、「日本の住宅寿命は30年」という認識を印象づけてしまったのかもしれません。
では、実際の家の寿命はどのくらいなのでしょうか。
(図2)は、小松幸夫早稲田大学理工学術院教授が、区間残存率推計法という、人間の平均寿命を割り出すのとほぼ同様の手法で、家の寿命を推計した結果です。
この調査結果から、実際の木造住宅は30年どころか平均でも65年も使われていることが解ります。
なぜ、まだ使える家が壊されるのでしょう?
(図1)と(図2)から、日本の住宅は、まだまだ使えるのに30年で壊される家が相対的に多い、ということを表しているといえるのではないでしょうか。
(図2)の家の寿命データは、あくまで平均ですから、30年で壊されている家が多いとすると、90年以上使われている家も多い、ということになります。
そう考えると、25年前後で査定ゼロという日本の中古住宅流通の常識は全く理にかなっていませんが、長年受け入れられてきた背景には、まだまだ使えるのに30年前後で壊される家が多いという現実があるからという見方もできます。
では、日本の家はどうしてたった30年で壊されてしまうのか、次回以降考えていきたいと思います。
みなさんは、日本の家の寿命と、査定価格について、どのようにお考えでしょうか。
ぜひご意見・ご感想をお聞かせください。