「陽の家」のどこがグッドデザインなのでしょう(グッドデザインBEST100受賞報告)
昨年9月に発表した「陽の家」が、2020年度「グッドデザイン賞BEST100」に選ばれました。
審査員評として、うれしい講評をいただいております。
シンプルで気持ちの良さそうな平屋が低価格で実現されているところが高く評価された。今までのMUJIの住宅は、2階建てや3階建てで主に都市的な環境を想定したものとなっていた。『陽の家』は平屋で、田舎暮らしや別荘にも向いた住宅となっている。汎用性を重視して、面積をミニマルに抑えながら、内部空間が外部へと連続するような工夫がなされている点が良い。サッシが袖壁に収納されて全開放できたり、深い軒が気持ちの良さそうな半外部空間を作っている。コロナ渦で家でアウトドアライフを楽しむ人が増えているがそういう時代に合ったデザインにもなっている。
「陽の家」については、発表時に「平屋が理想の家になる」という連載コラムとして、5回に分けてそのコンセプト、思いについて語っていますが、グッドデザイン賞BEST100受賞に気を良くして、改めて、「美しい」という主観的な言葉を使わずに、「デザイン」と「機能」のマッチングという観点から、いくつか自画自賛してみたいと思います(笑)。
自画自賛(1) 全体フォルム
建物全体の形態は、最初は平屋と外のつながりを重視し、中庭型や路地型などを検討して、結局最もシンプルな「ただの箱」にたどり着くまで、1年の開発予定期間が結局、丸2年かかってしまいました。
「ただの箱」にすることで、すべての空間が外部とつながり、つながることでコンパクトな内部空間が外へあふれ出し、同時に豊かな外部空間が中に入り込む。そして建物自体のコストは抑えられています。
IT技術の進歩、働き改革、さらには自動運転の進化などで、「毎日決まった場所に通う」という呪縛から解かれるであろう、これからの時代(コロナ禍で図らずもその時期は格段に早まりましたが)に、どんな場所でも建てやすく快適に、という基本コンセプトに合致した形態は、結局これだったのだ、と確信しています。
自画自賛(2) 外壁杉板仕上げ
常に目と手の届くところにあるので、経年変化を楽しみつつ、メンテナンスもし易いという、平屋ならではの外壁として、国産杉板張りを採用しています。
これにより、この家のコンセプトである、「どんな場所にも建て易い」に沿って、どんな場にも馴染む質感を実現できています。
自賛自賛(3) 全開口サッシ
内と外とをシームレスにつなぐための「道具」として、既製のアルミ製全開口サッシに行きつきました。アルミサッシの精度の高さと耐久性を生かしながら、アルミという素材と杉の外壁との質感の違和感を、オリジナルデザインの「戸袋パネル」を組み合わせることで、解決しています。
また、このサッシは、全開口するために、外壁の外側に取り付ける機構になっており、そのために内部床と外部ウッドデッキを完全にフラットにすることができるのも採用の大きな理由です。
あくまで「既製品」であるこのアルミサッシの採用が、リーズナブルなコストにも貢献しています。
自画自賛(4) 勾配天井
同じ床面積の2階建てと比べて、2倍の平面的な伸びやかさが取れる平屋の「欠点」は、単調な天井高さといってもよいかもしれません。
その単調さを解消し、縦方向への「抜け感」を演出しているのが、屋根の勾配をそのまま室内に反映させた「勾配天井」です。
この水平梁も束もない勾配天井は、無印良品の家すべてに共通する特殊金物補強構造(SE構法)による「登り梁」なくしては実現できないもので、このような開放的な空間でありながら、高い耐震性能も併せ持っています。
すべては「感じ良いくらし」のために
今回ご紹介した以外にも、細かいディテールや素材、構造や断熱性能などの見えない部分に、「自画自賛」ポイントは山ほどありますが、グッドデザイン賞BEST100に光栄にも選ばれたのは、それらの総合評価であると同時に、最も重要なポイントは、すべてが、少し先の未来を見据えた「感じ良いくらし」のために考えつくされている点ではないかと考えています。
みなさんは、このような「陽の家」のこだわり、そして少しだけ未来の「住まいのかたち」についてどのように感じ、お考えでしょうか。
ぜひ、みなさんのご意見をお聞かせください。