【毎日映画_0069/1000】9/4_『希望の灯り』
あまり記憶にないことをぼんやり思い出しました。
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『希望の灯り』(2018)
監督:トーマス・ステューバー
脚本:クレメンス・マイヤー
主演:フランツ・ロゴフスキ
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〈ストーリー〉
旧東ドイツの巨大なスーパーで、在庫管理として働くことになった主人公:クリスティアン。ある日、別部署の年上の女性に恋をします。
親しくなった2人でしたが、クリスマスパーティー以後突然、彼女はクリスティアンを突き放し、そして仕事にも顔を出さなくなりました。
かつての悪友たちと酒を浴びるように飲むクリスティアン。その荒れようは、仕事にも支障をきたします。
管理責任者のブルーノは、そんなクリスティアンを慰めます。
何かを失いながら懸命に生きる人たちの物語。
〈感想〉
無機質な商品棚と、そこにかかるクラシック音楽が美しい映画でした。美しいというか切ないというか。
クラシック音楽に合わせて踊るフォークリフトをぼんやり見ていたら、倉庫で働いていた自分のことを、少し思い出しました。
東京へきて間もない頃だったか、バラエティ番組のADを辞めて仕事を探しているときだったか、本当にいつだったか思い出せないんですが、高井戸にある山崎パンの工場で、3万個のアップルパイを各配送先ごとに(3〜5個ずつ)仕分けする深夜バイトをしていました。
無口なところは主人公と同じでしたが、バイト仲間?や管理責任者とは口をきくこともなく、恋するような相手も見つからず、配送先と個数の書かれた表を1枚渡され、ただひたすらに(コンビニで見かけたことないですか?)
グレーのトレイにアップルパイを仕分けしていました。
誰とも話さないのに、全然寂しくなかったなーと思います。今の方が全然寂しいです。
この映画の登場人物たちは、(いや、人間誰しも?)いろんなものを失くしながら生きていると思います。
特に主人公の管理責任者:ブルーノ。いま働いている巨大スーパーは、まだ東ドイツだった頃、そこはトラック運送会社でした。ブルーノはそこで働く運転手だったのです。
転職や引っ越し、失恋なんかも、ある種なくしものだと思うんですけど、本当に国がなくなっちゃうとか、どんな気持ちなんだろうなと思います。
大切な人が亡くなっちゃうのとはまた少し、違う気持ちなんだと思います。ブルーノの気持ちは映画で観ていただくとして、
この映画、大きな「喪失感」の映画でした。
ぽっかりと何か穴が空いたまま、淡々と働く人たちを観ていると、自分もただ淡々としていた頃のことを思い出します。
美しいものをぼーっと観ることって、こういうことを考えやすくするのだなと思います。
おかげで、その大きな喪失感の中にも、何か小さな希望みたいなものがあったなということも思い出しました。
映画でもなんでも、極端なものを観ると、(今回の映画でいうと、なくしものをした人たちがこれでもかというくらい出てきて)逆の小さなことも見えてくる感じがします。
アップルパイを仕分けしながらも寂しくなかったのは、次はこんな仕事したいな、なんてことを考えていたからだと思います。
いま寂しいな、なんて言っているのは、なくしものが大きすぎて、小さな小さな希望が見えていないんだなと。
よーく見てみると、ちょっとした目標とかあるはずなので、それに向かってチョコチョコ歩きはじめようかな、と思えた映画でした。
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