【TOP日記〈23〉】未亡人と純潔とそうでないナニカと
無意識です。
いつもならここで
くだらない近況などをうだうだ語るところですが、
今回の本編がマジで長文になってしまいましたので
割愛してちゃっちゃと始めます。
それでは早速、本編。
ダオスの城に突入。
道中ロディと別れることになるもダオスを追い詰める。
惜しくも逃がしてしまい、次の手がかりを探す。
モリスン邸にて出迎えるのは
エドワードの妻シフ。
ひょっとして「主婦」が名前の由来?
「まぁ、ルーングロムさん」
「ごぶさたしています
エドワードについてはたいへん気の毒なことに…」
「いえ、あの人のことです
きっと後悔などしていないはずですわ
だから、お気になさらないで下さい…
ところで、今日はどんなご用ですの?」
「はい実は、
エドワードの書斎に通していただきたいのですが」
「構いませんわ、でも…
鍵がかかっていて、入れないのです」
「この鍵ではありませんか?」
「まあ、なぜ?」
「以前、エドワードから頼まれたのです」
「そういうことでしたら、どうぞこちらへ」
ルーングロムもシフも
あまりにも気丈に振る舞うものだから
むしろ少し息苦しい…。
案の定、例の鍵はこの部屋のものでした。
おそらく、『見られないため』『入られないため』というよりは
『この部屋に導くため』『指し示すため』の鍵だったのでしょう。
「あいつは、昔から一人で、ある研究を続けていたんだ
それは、時間転移についてだ
その集大成が、この本というわけか…」
「どうなの?」
「…簡単に言うぞ
超古代に栄えた王国が、海底に沈んでいるらしい
名をトールというが、その王国は信じられない技術で
時間転移を実現していたというんだ」
「超古代都市トール?」
「でも沈んだんじゃ、しょうがないじゃん」
「信じられない技術だと言っただろう?
文面から察するに、
まだその都市は滅んではいないらしい
だが、その海底まで行く手段が無いと書いてある」
「確かにそんな技術も魔術もないからね」
「だが、ウンディーネの力を借りれば
必ずしも不可能ではないとも書かれている」
「それでトールって、どこにあるのさ?」
「位置的にはベネツィアの北東、
およそ100キロの沖合いだ」
「で、どうするつもりだい?」
「ベネツィアから船を出してもらうつもりです」
「そうか、できれば私も行きたいんだが、
そうもいかないしな
それでは、がんばってくれよ」
私の個人的な妄想ですが、
この部屋にあるのはそれだけじゃなかった気がします。
盟友であるルーングロムに宛てたメッセージも
きっとエドワードは残していったのではないでしょうか。
この部屋ではないにしろおそらくシフにも…。
「それじゃあベネツィアに向かうとするか」
「待って下さい
トールに行ってしまったら
もう戻って来られないかもしれません
でしたら、
先にユグドラシルを救う方法を考えないと…
私達の時代ではユグドラシルが朽ち果てています」
「だとしたら…」
「マナが失われていて、魔術も使えない、
というわけだな
とすると…」
「魔術でしか傷つかないダオスには勝てない…
ってことになるじゃん?」
「その通りだな」
「なんか、頭がこんがらがったんだけど…」
「つまりだ
君達の時代でも魔術が使えるように、
ユグドラシルが枯れない方法を見つける
その次に、ベネツィアから船で沖合いに出て
トールが沈んでいる位置を調べるんだ
わかったか?」
だそうです。
私が解説する暇もなくどんどん整理されていく。
少しくらい余地を残してくれてもいいのよ?
まずはユグドラシルを救う方法。
すぐ側のアルヴァニスタで聞き込みをしてみると
こんな話を聞くことができます。
「おばあちゃんから聞いたことあるんだけど…
ミッドガルズの北西、
ヴァルハラ平原の西にある森に
角の生えた白馬がいるんだって
その白馬は清らかな乙女にしか会わないそうよ」
他に手がかりはないので行ってみますか。
ヴァルハラ平原に行くには
まず船でフレイランドへ。
「船の旅っていいよねぇ~
潮風が気持ちいい~」
「みなさん、聞いて下さい」
「どうしたの?」
「ユグドラシルを復活させる方法を考えていました
私の法術でなんとかならないかと…
でも、今の私の力ではどうすることもできません」
「それで?」
「ユニコーンの力を借りようと思います」
「ユニコーン?」
「ユニコーンは法術師の証し
この世界のどこかにいるはずです」
「しかし…
ユニコーンに会えたとしても、
そう都合よく力を貸してくれるだろうか?」
「それは…わかりません
わかりませんが…」
「今はそれしか頼れないってことなんだね
ミント 行こうよ
ユニコーンを捜しに、きっと見つかるよ」
「クレスさん…
ありがとうございます」
「そうと決まれば早速行動だな」
いつにも増して語気の強いミント。
強い意志を感じさせる口調。
彼女は『ユニコーン』に賭けるだけの
心当たりがありました。
……
少し日を遡ったある夜のこと。
ミントは夢を見ていたのでした。
それは幼い頃の夢。
母といる日常の風景。
母の耳に静かに輝くイヤリングを見つける。
幼いミントはそれを欲しいとねだるが、
大切なものなので渡せないと母。
「これはね、お母さんのお母さんからもらった
大事な大事な法術師のあかしなの」
母のイヤリング…
そのモチーフは一角の白馬「ユニコーン」。
ユニコーンは法術師の象徴だと言う。
幸せな風景。
失われた過去の風景。
……
灼熱のフレイランドからしばらく北上し
ヴァルハラ平原を西側に抜けると
いつの間にか辺り一面は雪景色となります。
寒暖差で体調ぐちゃぐちゃ。
そして雪原には、
部分的に木々がこんもり密集している場所が。
「この森か?ユニコーンがいるという森は?」
「はい、おそらく…」
「ミント、どうしたの?」
「まぁ、ミントに何か考えがあるんだろうが…
女性しか、しかも清らかな乙女にしか会わないとは…
いくら神の使いとはいえ、わがままな馬だな…」
「馬ではなくて、ユニコーンですよ」
「別にどちらでも構わないような気がするがなぁ…」
「とにかくこの森は安全そうだから、
アーチェと二人で行っておいでよ」
「あ、あたしも?(汗)
私はちょっと…」
………へぇ。
クレスはキョトンとしているが
クラースは何かを察した様子。
「わ、わかったわよぉ
ミント、行こ…」
女二人で森の奥へ。
一見ダンジョンのようなマップになっていますが
「安全そう」との言葉のとおり、
敵は出現せず、野生のユキウサギがうろうろ。ほっこり。
突然、耐えかねたように踵を返す。
「あ、あたしはあっちに行ってみるから、
ミントはそっちをね」
「ど、どうしました?
アーチェさん?」
逃げるように走り去るアーチェ。
背中に後ろめたさが漂います。
「あ、待って下さい…
…アーチェさん、本当にどうしたのかしら?」
ミントも物を知らないというかウブというか。
ユニコーン。清らかな乙女。
清らかでない読者なら何を言っているかわかりますね?(暴言)
ミントひとりで歩を進めると
案外最奥はすぐそこにあります。
ついに遭遇。
「あっ!ユニコーン…
…本当に…
驚いて逃げたりしないかしら」
こちらに気づいているのかいないのか
凛とツンとボーッとしている様子。
恐る恐る近づいてみましょう。
「あの…」
「私に何か御用ですか?
かわいらしいお嬢さん」
やっぱり喋ります。白馬は喋るんです。
「よかった…人間の言葉がわかるのですね
あの…私の話を聞いていただけますか?
この世界の人々や、
動物達の命に関わる大切なことなのです
私、法術師のミント=アドネードと申します
実は…」
一方そのころ男性陣はというと。
「……」
「……」
「ひまだな…」
「ええ…」
「二人が戻ってきたら、私達も森の中を散歩してみようか」
「そうですね」
「……」
「……」
「ところで…」
「…?」
「クレスはミントのことをどう思っているんだ?」
「どうって…
どういう意味ですか?」
「つまりだなぁ…
……
いや、やめておこう」
「気になるなぁ…」
「……」
白々しく視線を森の中へ逃がすクラース。
その視線の先に異変を察する。
「どうしました?」
「森の中に邪悪な気配が…」
「えっ!?」
「……私達の事情は、今お話しした通りです」
ミントは事の顛末をユニコーンに話し終えたところ。
しかしユニコーンは固く口を閉ざしている。
「信じていただけませんか?
……
私にはこれ以上うまく説明できませんが…
お願いします、信じて下さい」
白馬はまだ口を開かない。
二人(?)の間にしばしの沈黙が流れる…。
すると突然、
沈黙を打ち破るように何かが飛来。
「危ない!!」
「我ガ主人ノ名ハ、だおす!
主命ニヨリ、貴様の魂ヲモライ受ケニ来タ!!」
ダオスの手下達に囲まれ絶体絶命のミント。
それはそうとこいつらの台詞、変換が面倒。
今ここで言うことじゃないかもしれんけど。面倒。
「ミント!!」
颯爽と駆けつける男性陣。
横たわるミントとユニコーンを視野に入れるや否や
敵をすばやく成敗。快刀乱麻を断つ。
「ミント、大丈夫か!?」
「私は大丈夫…
それより…」
ゆらゆらとした足取りでミントは
ユニコーンに駆け寄る。
そこに遅れてアーチェも到着。
「みんな大丈夫!?
いったい何があったの?」
「しっかり…」
「さきほどの話、信じていますよ」
「えっ?」
「お嬢さんの心の中には一点の曇りもない…
私は姿を変えて、お嬢さんの力となりましょう…」
そう言うとユニコーンは
光となって消えてしまう。
ミントの手に残ったのは『ユニコーンホーン』。
気高きユニコーンの荘厳な角。
「ユニコーンは法術の象徴
それがあれば、ユグドラシルが復活できるな!」
クラースさんもうちょっと空気読んで
「はい
ユニコーンホーンから、
法術の聖なる力を感じます」
「よし、それじゃあ精霊の森に行こう!
ところで…
アーチェ、どこに行っていたんだ?」
「え、あ、あの…
あ、あたしじゃ…
ユニコーンは会ってくれないだろうなぁ、
なんて…」
「はぁ?」
「む、昔、彼氏がいて
その…」
「?????」
「う、うるさいなぁ!
とにかくあたしじゃ
ユニコーンに会えないってことなの!!
早く精霊の森に行こうよ!!
そういうことなんです。
深く訊いてやるなクレスくん。
この一件はやっぱりなかなか印象的で、
アーチェの代表的なエピソードとして
後世にも頻繁に語られることになります。
ネットって怖いね。
さすがにここからじゃ精霊の森は遠すぎるので
『パッと行く』で行きましょう。
「みなさん、さがって下さい
私が、今使える、最高の法術をかけてみます」
ミントが術を唱え発動しようとすると
ユニコーンホーンがとてつもない光を発する。
「な、何だ!?
どうなっているんだ!?」
「ユ、ユニコーンホーンの力が、
つっ、強すぎて…」
「ミント、
早くユニコーンホーンから離れるんだ!!」
「いけません!!
途中でやめたら…
ユニコーンホーンの力が
暴走してしまうかもしれません!!
そんなことになったら、
ユグドラシルが…」
「ミントー!!」
「お父さん、お母さん…
私に、力を…
強い力をください…」
森を超え周囲一帯が強い光に包まれ、
その力がユグドラシルに収束していく。
そして一瞬静かになったかと思うと
一転、
巨大な光の柱となって噴出する。
大爆発のような勢いに一同は
あたりに散らかってしまっていた。
一番に起き上がるのはクレス。
「みんな、大丈夫か?」
ようやっと立ち上がり
ふと見上げた先には。
「やったぁ、ユグドラシルが元に戻ったぞ!!」
枯れて老木のように小さく萎んでいた姿は
跡形もなく、
まるで青春のような溌剌とした若さを湛え
かつ数百数千の年を経たように堂々とした
全てを抱擁するほどの立派な大樹がそこにありました。
「ミント、すごいぞ!
よくやったな」
「やったじゃん!」
大樹の中から光を伴って姿を現したのは
世界樹の精霊マーテル。
「力が…湧き上がってくるようです
これは、あなたの法力なのですね」
「いえ、私だけの力では…
ユニコーンと、みなさんの協力が、あったから…」
「そんなことないよ
法術をかけたのはミントじゃん」
「そうだよ、ミントの力があればこそ、だよ」
「ありがとうございます
これで私も、もうしばらく生き長らえそうです…
ですが…
マナが、枯渇しようとしていることに
変わりはありません」
「それは、おそらく魔科学が原因だろう…
あれだけの力を引き出すには、
相当なマナを消費するだろうからな」
その言葉を聞くか聞かないかのうちに
あっという間にマーテルの姿は消えていきます。
「消えちゃった…
もう少し、話してくれてもいいのに…」
「彼女も精霊だからな
本当は、この世界に姿を現すのさえ
たいへんなことなんだ
しかし、マナが枯渇するとは、
まだ理解できないが…」
「もしかして…」
「どうした、クレス?」
「ダオスがミッドガルズを執拗に襲ったのは…
魔科学を、滅ぼそうとしたためかなぁと思って…」
「マナの力を、利用するためにですか?」
「魔科学の力を、恐れたからかもしれないよ
だってダオスって、魔術でしか傷つけられないじゃん?」
「まあまぁ、ここで議論したって始まらないだろう」
「そうだな、直接会って確かめるまでだ」
「じゃあ、トールに行こっか?」
「そうですね」
「おそらく、これが最後の戦いになるだろう
準備は、しっかりやっておこう」
「はい!」
__________
今回はここまで。
いやー長かった。
とりあえずユグドラシルの復活までやってしまいたかったんですが
まさかここまで長くなるとは。
次回、超古代都市トールに挑む。
時間転移はできるのか。
できたとしていつ?どこへ?
お楽しみに。
「快刀乱麻」という言葉は『うえきの法則』で覚えた
無意識でした。