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滑落の記憶。

2023年1月 雲取山からの下山時に滑落しました。滑落1ヶ月後に書き留めた記録です。

<落ちた場所>
山頂から三条の湯に下りる途中。
急登と凍結箇所、落ち葉のラッセルも過ぎ三条の湯が見えて、気が緩んだ瞬間だった。1人がギリギリ歩ける細さの道で右手は壁、左手は崖。夏だったら水が流れている沢だった。目視では確認できない凍結があったと思われる。

<落ちたとき>
・ジェットコースターと同じように「あー」「わー」みたいな声が自然と出た。「キャー」じゃないんだなと冷静に思ったりした。
・何回転したか分からない。目を開けているのに景色が見えず「止まって、止まって」とひたすらに願った。
・走馬灯は見えなかった。
・止まった時は大きめの岩の上にテディベアみたいに座った状態。最初に手が触れたのはツルッツルの氷(カエルのお腹みたいだと思った)だった。
・ステンレスボトルが跳ね上がりながら音を立てて落ちて行くのが見えた。
・上を見上げると10mくらい落ちた模様。少し離れた所に大木があり、まずはそこまで避難しようと決心。
・崖をクライミングする時「いけるいける」「大丈夫」って自分を鼓舞している自分に自分で驚いた。我ながら生命力を感じた。

<無くしたもの>
・カメラのキャップ(カメラもボロボロ)
・モンベルのUL折りたたみポール
・タイガーのステンレスボトル 500ml
・防風グローブ
・サングラス
・nortecのチェーンスパイク
・片耳のピアス(帰宅後に気づく)

<滑落後>
・応急処置をして10km歩きました。
・強打した(筋膜が切れた状態)脚が徐々に腫れ出しズボンがぱんぱんに、通常の速さで歩くことが不可能になりました。
・体温が下がり出し、ダウンとハードシェルを着用し、フードも被って歩きました。
・体力の消耗が激しく、行動食を大量に食べ、水分は意識的に摂るようにしました。
・予定より3時間オーバーで下山しました。本来は12時に下山予定だったので、日没には間に合いました

山頂へ向かう途中の景色



<滑落してからの教訓>
1.チェストベルトやウエストベルトは重要!
全身に切り傷と打撲だったけど、腰骨や後頭部は守られました。ザックが背中から離れていたら...想像するだけで恐ろしいです。

2.チャックのあるポケットに貴重品を入れるべし!
スマホやお財布。使用直後は衣類のポッケに入れることもあるけど、幸いザックにきっちりしまっていました。お陰で被害額を抑えられたし、自力で帰宅できました。

3.水は分割して持つべし!
ザックの外ポッケにボトルを入れる人は多いと思います。重さもあるのでカランカラン...と底まで落ちました。ザック外付けのホルダーにナルゲンボトルと、詰め替え用のモンベルパックでザック内に1ℓ持っていたので安心できました。

4.帽子は被るべし!
モンベルのクリマプラス(薄めのニット帽)を被っていて貫通して切り傷とあざが出来ました。もっと厚手の二ット帽かヘルメットがあっても良かったくらいですが暑かったので....何も被らない状態だけは避けるべきかと思います。

5.ファーストエイドは直ぐ出せる・使えるものを!
崖を這い上がる途中で応急処置をしました。崖の途中でお店を広げることは出来ません。ザックの上部チャック付きポケットに入れていたので直ぐに出して最低限の処置が出来ました。顔や頭の傷を見るために鏡もあると良いと思います。絆創膏は剥がれにくいもいのを。絆創膏を取り出そうとして、アンパンマンの虫除けパッチが出てきて、涙が出そうでした。(夏の姪っ子用に持っていたものがそのまま)

6.レイヤリングはしっかりと、露出は最小限に!
下山の終盤で身体が熱くなっていたので、トップスはパタゴニアのR1一枚になっていました。中はベースレイヤーとミレーのアミアミ長袖。パタゴニアは何ヶ所か破けましたが、擦り傷とアザのみで深い切り傷が出来ることはありませんでした。下はミレーのドロワットウォームパンツ(裏起毛)とCXWのタイツ。破けはありませんでした。元々、1年中CXWを穿いて長ズボンが定番だけど、その方が良いと再認識しました。帰宅後、脱ぐのがめちゃくちゃ大変でしたがレイヤリングのお陰で切り傷、出血は最小限に抑えられた印象です。

7.グローブは夏も、必ず予備も!
滑落時はグローブを外して、ザックの外ポッケに入れていました。気づいたら落ちて無くなっていました。滑落時は無意識に手で身体を止めようとして、両手が傷だらけ、爪もボロボロ。一番、出血もしていました。応急処置の際にベースグローブを出して、装着しました。もう1つ軍手も持っていました。予備が無かったら、崖から登る際、不安が大きかったと思います。

8.ココヘリは入ってて正解!
使わなかったものの安心感がありました。最悪、死亡した時にも死体が発見されないと捜索費用ばかりがかかり保険が下りなかったり、死亡退職ではなく欠勤扱い(つまり社会保険料とか取られる)になったりするそうです。怪我だけでも家族に十分迷惑をかけましたが、最悪の事態を考えて備えることが大事だと思いました。

<その後>
帰宅後3日間は全身に湿布を貼って泥のように眠り続けました。水が溜まって膝が曲がらないため歩くことも時間がかか1ヶ月は在宅勤務をさせてもらいながら週1回、通院しリハビリ。2月には秩父の低山ハイクに行けるほど無事に復活しました。

<2024.10追記>
・ロキソニンの湿布は一度に貼っていい枚数が決まっています。胃や腎臓に負担がかかるそうです。
・今はココヘリは退会し、単発でモンベルの保険に入るようにしています。
・未だに下山の狭い道は恐怖感が強いです。
・未だに脚のあざが消えません(笑)

休憩時間の静かなオフィスにて。

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