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雪中の梅

1月も中旬頃になると、鎌倉でなくとも、通りすがりの個人宅の庭の梅の木の蕾がふくらみはじめ、日当たりのいい所では開花していたりもする。たったひと月前は、年の暮押し迫り、新年の支度で忙しかった。

そして、年が明けると、いつ2度目の緊急事態宣言が出されるかドキドキしつつも、なんとなくめでたい気分になる。外界では水仙が咲き始め蝋梅の花からはがいい香りがただよい、紅白の梅で一気に賑やかになり、冬の寒さの中にも着実に季節は春の階段を上っている。今年は雪はちらほらと降りはしたが、まだ積もるには至ってない。北の国では大寒波で大雪で大変な思いをされている人も多いのに、私は『雪中の梅』という和菓子を買いに鎌倉へ行った。

美鈴の包装紙に丁寧に包まれた品は、それをほどくと『雪中の梅』と和紙の熨斗が掛けられてされている。

その下には山崎方代さんの短歌が詠まれている。

『ふかぶかと 雪をかむれど 億万の 春の蕾はほころびんとす』


その包みを解き、薄紅の箱を開けるとその中に『雪中の梅』が静かに眠っていた。

12か月ある季節の中で、1月だけに作られる季節の和菓子

今月を逃すと来年の1月まで、1年待たないと巡り合えないのだ。

やはりこれに巡り合うのは、今でしかなかろう。

白い淡雪かんに咲く紅梅の梅。

茶色い枝は羊羹で薄く作ってある。

美味しい日本茶で頂こう。新しくお茶を入れなおした。お茶は私の場合、八女茶かそうでなければ知覧茶と九州のお茶が好きだ。

雪中の梅が優しく口の中でほどける。梅の枝に積もった雪が、陽の光を浴びて溶けだすかのように。


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