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内視鏡検査

3月3日は胃の内視鏡検査だった。胃の内視鏡の検査はもう5年くらい前から受けている。バリウム検査は健康診断で以前からやっていたけど、バリウム検査が血液検査になったので、健康診断でもあの重ったるい、バリウムを飲む事はなくなった。

急性膵炎から嚢胞になって、消化器内科に定期的に受診するようになり、喉の違和感を訴えたところ、胃の内視鏡検査をすることになり、1年に1回検査をしていた。胃は軽い逆流性食道炎の所見がでたが、特に異常はなかった、それでも、喉の違和感はずっと続き消化薬を処方されながら、年に1回の内視鏡検査を受けていた。


2019年10月16日 いつものように胃カメラの検査。検査終了後に言われたのが、「本日は組織をとっていますので。。。。。」

そうなんだ、なーんにも気が付かず、口にカメラを入れたところから記憶は飛んでしまって、なにもわからなかった。「何かあるんだな」とそのくらいの軽い反応だった。「どうしよう、心配だ!」なんて気持ちは微塵もない。とにかく、この日は帰ってからも眠たかったひたすら眠たかった。眠りこけた一日だった。

2週間後の結果で、初期の食道がんが見つかり、1週間後の11月6日再び組織検査で胃カメラをの検査となった。

その後年明けの2020年2月に入院内視鏡治療となったわけだが、経過観察ということで4月1日(この日はアベノマスクの配布が発表され、まさかエイプリルフール?と思った)と9月16日(この日は私の何度目かの誕生日)に胃カメラをのんだわけです。

そして、今回は3月3日、桃の節句に胃カメラですよ!ありがとう主治医!ここまで日を合わせてくれるとは、たまたま偶然だけどね。

いつものように、血液検査と血圧測定を済ませ、着替えをして椅子に座って順番を待つ。もう、何度も検査をしているので、不安なことはない。胃カメラを突っ込まれゲーゲーするのはいやだけど、まあ看護師さんが背中をさすってくれるし動きようがないのでまな板の上の鯉になるだけだ。

名前を呼ばれる。

検査室の中に入ると、あの匂い病院とは場違いの匂いがする。

なんだろう?懐かしい匂い?

検査室が懐かしい処?確かに半年ぶりだけれど、そんなはずはない。でも、ここに入ると半年前もその半年前も、何度も何度も検査室に入るたびにこの匂いが鼻にまとわりつくのだ。それは、嫌な匂いでなく好きな匂い。

バニラエッセンにの匂い。

そう思っているうちに、鎮静剤のラインを手の甲に入れられる。左からはとれず右からの挿入になるが、今回はそんなに時間はかからなかった。

口を開けて数滴麻酔薬を吹きかけられる。

「あゝこれだ!」

バニラエッセンスの正体は麻酔薬だったのだ。

その時ある記憶が蘇ってきた。

子どもの頃家にバニラエッセンスの茶色の小瓶があった。お菓子など作るような家ではなかったと思うがあったのだ。その小瓶からは、ケーキがないのにケーキの匂いが、プリンなどないのにプリンの匂いがし、魔法の小瓶だった。ある日のこと、これを口の中に含めばケーキを食べた気分になる?プリンを食べた気になるかな?そう思った。

そう思ったら、やらずにはいられないのが私。誰も見てないのをいいことに、口を開けて魔法の小瓶を逆さにして数滴ポンポンポンと口の中へ。

さぞ、美味しい匂いに口の中が包まれるかと思いきや、とんでもなかった。

直ぐにペッペと吐き出したが口の中の感覚がすべて持っていかれ、痺れてしまった。匂いだとあんなにいい匂いなのに、口に含むと匂いがなくなりしびれてしまう。本当に魔法の小瓶だった。

魔法の小瓶と違うのは、すぐに吐き出すことができないこと。医師の指示があるまで口に含んでおかなければいけない。しっかり口の中に滞在した麻酔薬はその後のど元を通過する。あの時と一緒で口の中の感覚は何も残っていない。そのおかげで胃カメラという物体を飲み込むことができるのだ。

ラインから鎮静剤を投入され半分意識もうろうとする中、マウスピースから胃カメラが挿入される。看護師さんに背中をさすられながら、

「苦しい。。。苦しいけど。。。さあ、お行き胃カメラよ。そして、どこか私に悪いところがないか見ておいで、もし悪いところがあっても、見て見ぬふりしていいからね。私はちっとも構わないから。」

と、私は心の中で呟いた。

そして、検査はあっという間予定通りに終わり、私はしばらくの間眠りについた。


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