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生まれて死ぬまで

 あと、どれくらい生きなくてはいけないのだろう。救いはどこにもないように思えて、早くわたしを連れていってくださいと願った。その願いは叶えられることはなく、今もこうして彷徨いながら生きている。

 ビニール傘をさしてると雨粒の流れがよく見える。一筋、また一筋と流れては落ちていく。大きい雨粒だった。それをずっと見てた。お気に入りのカフェの窓際の席に座って、歩いていく人たちを見ていた。誰も彼もいつかここからいなくなる。この景色も建物もいつかみんな消えていく。犬を連れた人が犬に笑いかけた。小さな子どもを連れた父親らしき人が子どもが話しかけているのを無視してスマートフォンを眺めてる。わたしはそれをただ眺めていた。

 どこを切り取っても空は青くて、わたしのどこを切り取っても赤い血が流れていることと似てる。でも空はきっとずっと青くて、わたしの体はいつか塵に返る。

 消えたいと思ってた。願ってた。死ぬよりも消えたい。消えてしまいたい。跡形もなくなくなりたい。それがわたしの希望の光だった。いつかこの世界からいなくなれることがわたしの救い。わたしの希望の光。なのにその光はいつのまにか消えていて、その代わりに、この体がある限り、この世界を生きぬかなくてはいけないことに気がついてしまった。このミッションは少々きつい。人にそれぞれの「使命」があるとしたら、わたしの使命は生き抜くことなのかなって思ってみたりする。過酷だ。この世は、この世の文化は過酷。楽しんだもの勝ちだなんて到底賛同できない。その勝利の先には一体何があるのか。わたしの知らない宝石がそこに落ちているのなら、その宝石を見ることはわたしには叶わない。でも、いい。

死ぬまで後どれくらいだろう。生まれることと死ぬことだけは人間には選べない。でもいつか必ず死ぬ。死ねる日がくる。だから今日も生きられる。

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