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【景観考察】有明北橋と東雲運河(東京都江東区)

 ある講義の課題でやった内容をnoteに転載してみようかな、と。「好きな橋梁と水辺空間を取り上げ景観考察をする」という課題です。記録として残しておきたいな、ということで。
 文系大学の学生である私視点で書かれています。未熟かつ間違い等多々ありますが温かい目で見ていただけると幸いです。

2024年度景観計画論 期末レポート


■取り上げる好きな橋梁と水辺空間

東京都江東区
有明北橋・東雲運河周辺の水辺空間
 
 有明北橋は、豊洲エリアと有明エリアを結ぶ橋で、環状2号線の一部である。2車線道路と歩行者・自転車分離がされた歩道からなり、上下線合わせて2橋梁からなる。加えて、中央上部にはゆりかもめの橋梁が通る。
  東雲運河は有明北橋と交差し、東京湾へと続く。有明側は有明親水海浜公園として、豊洲側は豊洲ぐるりパークの一部として整備されている。

出所:地理院地図Vector(作成者一部加筆)

■景観の3つのアプローチを踏まえた考察

1.視覚的アプローチ

 ①上下線それぞれから見える多様な景観 ②ゆりかもめの橋梁がもたらす額縁的効果、③アーチを描く橋桁設計がもたらす効果、の3点から考察する。 

①上下線それぞれから見える多様な景観
 
有明北橋周辺は多ジャンルの建造物がみられる。豊洲市場をはじめ、東京五輪開催地となった有明アリーナなどの運動・大規模集客施設、マンション、東雲運河に沿う遊歩道といったジャンルに富んだ建造物で溢れており、多様な景観を形成している。さらに、歩行者と自動車だけではなく、ゆりかもめの鉄道も走り、交通景観という点からも多様性がある。加えて、橋を歩くシーン景観と、ゆりかもめから見るシークエンス景観で、高低差による見え方の違いという点での多様性もある。

有明北橋からみた豊洲水産市場 (撮影日:2024/06/26)
ゆりかもめ車内からみた木遣り橋方面 (撮影日:2024/06/26)
有明北橋からみた五輪関連施設 (撮影日:2024/06/26)

加えて、幅員の広い道路と、密集していない建造物、交差する東雲運河の開放性が、遠くに偏在するタワーマンションをはじめとする高層建築物、運河の地平点に見えるレインボーリッジといった複層的な景観形成をしている(写真2)。
 さらに、日中と夜間での景観差も特徴的である。橋の間接照明と、建造物の夜景景観の一体的な景観形成がされている。

有明北橋夕暮れ時の様子 (撮影日:2023/12/18)

②ゆりかもめ橋梁がもたらす額縁的効果
 
橋梁の構造として、上下線独立した有明北橋の中央、高い位置にゆりかもめの橋梁が位置する。橋から対向車線を挟んだ景色をみるときに、下部には有明北橋自身が、上部にはゆりかもめ橋梁が位置するこの位置関係が、額縁のように切り取った構図でみることができる景観形成がされている。

東雲運河遊歩道からみた 有明北橋とゆりかもめ橋梁 (撮影日:2024/06/26)

 額縁構図様の景観が、景観対象物の建造物や運河を引き立てる効果をもたらすとともに、自身がカメラになったような感覚や劇場のスクリーンで景観を見ているような一体感を演出している。四方が囲われる額縁構図ではなく、左右は見る人に視覚いっぱいに広がるワイドアスペクト比のような状態が、より臨場感をもたらしているといえる。
 さらに、橋の方向に対して垂直に景色をみるとき、ゆりかもめの橋梁が景観対象物をほぼ隠さない高さ関係にある。これらを踏まえ、当エリアのビュースポットは、橋梁がもたらす額縁効果を感じられる当該箇所であると私は思っている。

南側からみた豊洲水産市場とレインボーブリッジ (撮影日:2023/12/18)
南側からみた豊洲水産市場とレインボーブリッジ (撮影日:2023/12/18)

③アーチを描く橋桁設計がもたらす効果
 有明北橋は取り付け道路面から、中央の橋脚部分が高くなるようにアーチ型の構造になっている。(※橋梁構造はアーチ橋ではない)

 この構造によって、路面は若干の坂となっている。それにより、中央部に近づかない限り橋を渡った反対側をみることができない。この特徴が、橋を渡った先への期待と高揚感を演出している。2.身体感覚的アプローチで詳しく述べるが、この橋の特徴として、ライブ・イベント等へ訪れる人々や、豊洲市場へ訪れる人々といった、遠方利用者が多く利用するという特徴がある。これらへ訪れる高揚感と相まった演出がされている。
 実際に、国際展示場方面から豊洲市場方面へ歩くと、橋桁の構造と、東雲運河の中洲の自然も重なり、途中まで豊洲市場が隠されているように見える。橋の中央へたどり着くと、突如として姿を現し、サプライズ感を演出している。また逆方向へ歩くと、豊洲エリアとは雰囲気が異なる有明エリアを強調するような演出をしている。

国際展示場方面から豊洲市場方面 (撮影日:2024/06/26)
豊洲方面から国際展示場方面 (撮影日:2024/06/26)

2.身体感覚的アプローチ

有明北橋周辺は大きく分けて①周辺住民・通勤者、②物流事業者、③遠方利用者の3ジャンルの利用者、通行者がいるといえる. ①周辺住民・通勤者 イベント非開催時など、日常風景として、周辺住民と思われる人々の利用が目立つ、徒歩で移動する人、シェアサイクルで移動する人、運動の一貫でランニングやウォーキング、サイクリングをする人などがみられる。

 身体感覚アプローチから考えると、第一に歩道空間のデザインと東雲運河に沿う遊歩道のデザインに触れたい。
第一にいえるのは、橋の歩道空間において、歩道の自転車、歩行者の分離と、それが容易に可能な幅員の確保が実現している点であるといえる。

有明北橋の歩道空間の様子(ゆりかもめから撮影)  (撮影日:2024/06/26)
有明北橋と豊洲ぐるりパーク遊歩道 (撮影日:2024/06/26)

 豊洲エリアではdocomoをはじめとするシェアサイクルサービスが浸透しているほか、自転車移動が占める割合が高い。一方で徒歩移動する人々もみられる上、ただ渡るだけではなく、橋で佇む人々もみられる。これら移動安全性を確保した上で、橋上の滞在可能性も確保しているのは、歩道の自転車、歩行者の分離と、それが容易に可能な幅員の確保にあるといえる。
 第二に、運河沿いの滞留スペースと通行可能性の確保を実現している点であるといえる。

 冒頭で述べたが、有明エリア側は有明親水海浜公園として、豊洲エリア側は豊洲ぐるりパークの一部となっている。それぞれが別々の公園となっており、構造の違いなどがみられる一方、双方の遊歩道は広いスペースを確保し、運動、移動の場として機能を果たしている。加えて、湾岸エリアでは住居地区を持ち合わせる一方、郊外などと比べ、自然空間の整備と、滞留スペースが不足する印象がある。しかしながら、運河周辺では、周辺施設と一体となった自然空間が創出されており、周辺住民などにとって、憩いの場であったり、滞留拠点としての効果をもたらしていたりするといえる。

 一点課題とするならば、両岸遊歩道から橋へのアクセスに課題があると感じる。豊洲エリアは豊洲で、有明エリアは有明で、というような分断されたような空間づくりが行われており、橋がもたらすアクセス性が両者溶け込んだ空間づくりに期待したい。
 
②物流事業者
 
有明北橋は片側3車線、上下6車線から道路が形成されている。特徴として、第一通行帯部分にトラック等物流事業者の路上駐車がみられる。交通量も著しく多いわけではない上、広大な車線もあり、一旦の駐車場所として機能している。一方、当橋上は駐車禁止区間となっており、道路交通法に抵触する事案が多発している。使いやすさと法律の調整が課題であるといえる。

有明北橋の駐車車両 (ゆりかもめから撮影) (撮影日:2024/06/26)

③遠方利用者
 有明エリアには商業施設である有明ガーデン内にコンサートホールである東京ガーデンシアター、東雲運河沿いには有明アリーナや有明GYM-EX、有明コロシアムといった大規模集客施設が集まり、多くの遠方からの来訪者が集まるエリアである。大規模集客があるとき、会場外にも一定数来場者を受け入れられる空間が必要である。その機能として、先程述べた有明親水海浜公園の空間が機能している。
 さらに、多くの路線が乗り入れる地下鉄有楽町線の豊洲駅から有明エリアに向かう際に有明北橋はルートの1つとなる。多くの人を受け入れられる幅員の広い歩道空間も居心地の良さや使いやすさをもたらしているといえる。

 

3.意味的アプローチ

 古くから水運の役割を果たしてきた東雲運河、東京湾岸エリア開発の象徴ともいえるゆりかもめ、紆余曲折を経て開場した豊洲市場、そして東京五輪2020の歴史を感じられる空間として存在しているといえる。
 現在では有明北橋と東雲運河周辺は、東京五輪のシンボルロードのような役割を1番に担い、それらの施設を核とした周辺開発が特に有明エリアで行われている。

整備工事中を伝える有明親水海浜公園の案内サイン (撮影日:2024/06/26)
整備中の旧新豊洲Brilliaランニングスタジアム (有明に移転中) (撮影日:2024/06/26)
五輪開催の歴史を残す案内サイン (撮影日:2024/06/26)

 東京五輪の歴史を残す場所として、エンターテイメントの拠点という新しい姿を現しつつ、視覚的景観の多様性とともに、多様性であふれる意味的アプローチが進んでいる。

 

■その水辺環境を選んだ理由・私にとってそこはどのような場所か

 第一に、私が景観の3つのアプローチで述べた点が好きであるというのが理由である。空間の開放性と滞留可能性がある場所が、私にとっての「心地よい」空間である。この環境はそれを満たしている。さらに、写真を撮る趣味の中で、現代建築物を撮ることが好きである。被写体景観として、この環境が好きであるのも理由である。
 

 第二に、この環境が、自身の大切な思い出と重なる場所であるからである。ここに初めて訪れたのは2023年の12月で、東京ガーデンシアターで開催されるライブに向かうためだった。時間の都合上、最寄りのバス停行きではなく、ミチノテラス豊洲行きに乗り、会場へ向かうときに偶然通ったことで出会った空間であった。ライブへ参戦する高揚感と、初めてみる当エリアの景観の美しさに感動を覚え現地へ歩いた記憶が色濃く残っている。

 さらに、それ以降、何度か有明エリアで開催されるライブへ行く機会がありその思い出も強くある。友人と参戦し、終了後ライブの余韻で放心状態の中、感想を語り合い、豊洲駅まで練り歩いたこともある。ライブの華やかさとそのエピソードトークに花を添えるような景観、静かで落ち着いた空間、心地よい海風が今も強く記憶に残っている。これらの思い出とともに、有明北橋とその周辺を歩く時間があった。

はじめて有明エリアに来たずとまよ愛のペガサス東京公演(2023/12/18)
放心状態で豊洲まで気がついたら3キロ歩いていた浦島坂田船 USSSソロフェス(2024/02/11)

 これら理由から、私にとってこの環境は私の思い出と共にある空間である。好きな景観と環境が広がる場所であるとともに、大切な思い出を保存するメモリのような存在でもある。      

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