『オイディプス王』の話
どうも、私です。
今日は「深夜に目が覚めたので、何となくTVをつけたら昼ドラなんて比じゃないレベルのギリシャ悲劇が繰り広げられていた話」をします。
お付き合い下さい。
◆
小学生の頃のとある夏。
深夜に目が覚めた私は、眠れない時間を過ごしていた。眠ろうとすればするほど、目は冴えていく。
「眠くなるまで、TVでも見るか…」
とふと、TVをつけてみた。
そこには屋外の舞台に立つ、野村萬斎さんと吉田鋼太郎さんが映し出された。
あ、安倍晴明だ。
野村萬斎さん=映画『陰陽師』の安倍晴明役のイメージしかない当時の私の前で、2人は取っ組み合いの喧嘩をし、群衆が慌てて仲裁に入っている。理由は分からないが、なかなか緊迫したシーンである。しかも、2人から繰り出される台詞から察するに、舞台はどの時代かはさておき海外。話している内容は小学生が理解するには難解すぎる言葉のオンパレード。
とその時、舞台奥の扉が開いた。出て来たのは、麻実れいさん。
あ、クモさんだ。
映画『ジャイアント・ピーチ』のクモさんを演じていた彼女もクモさんのイメージが強く、当時は名前と声しか知らず、宝塚歌劇団雪組で男役トップスターを務めていたことすら知らなかったが、私が今までに出会った女性の中でも特に美しい人だと思ったし、今でもそう思っている。
エキゾチックで妖艶で美しい人だな。
麻実れいさんって、こんな人だったんだ。
と思っていると、
「みっともない!」
と麻実れいさんが絶賛喧嘩中の野村萬斎さんと吉田鋼太郎さんに怒鳴った。その声に、一瞬で私は目がバキバキに覚めた。
はい、すみません。
最後まで見ます。
ここまで見ておいて劇のタイトルを知らない私は、リビングに行き、新聞を強奪。タイトルを確認した。
『オイディプス王 アテネ公演』
演出:蜷川幸雄
出演:野村萬斎 麻実れい 吉田鋼太郎
え、蜷川幸雄ってあの蜷川幸雄?
え、ギリシャ悲劇?
アテネってどういうこと?
そう寝ぼけ眼の小学生が見ていたのは、世界のニナガワこと蜷川幸雄先生が演出されたギリシャ悲劇の最高傑作『オイディプス王』。
日本でも同じキャストで上演された作品を、ギリシャ・アテネにある屋外劇場、ヘロデス・アティコス劇場で上演したというとんでもない代物だったのだ。
難しい物語かもしれないのは分かった。
とりあえず、最後まで見よう。
というわけで、最後まで見た。
昼ドラなんて比じゃないレベルかつ衝撃度数高めのあらすじに、小学生ながらに絶句した。
壮絶すぎる出生の秘密と運命に翻弄されるオイディプスが、とにかくもう…。
こんなに壮絶な人生を送る人達、初めて見た…。
ギリシャ悲劇というだけあって、悲劇以外の何者でもなかった作品だった。
昼ドラなんて比じゃないわ。
あと、小学生が見るには早すぎたわ。いろいろと。笑
それから今日まで、いろいろな作品を見てきたが、あの夜に見た『オイディプス王』の悲劇性と現地への凱旋公演という熱狂は忘れられそうにない。
ただ、重かった。
小学生にギリシャ悲劇は、重かった。笑
今見たら、少しは理解出来るだろうか?
出来ない気がする←