また逢う日まで
どうも、私です。
今日は「家族同然に大切な人の話」をします。
お付き合い下さい。
◆
以前にも話したが、私には実の祖父母の他に、子供の頃から現在までお世話になった、お隣さんのおじいちゃんとおばあちゃんがいる。
私は、お2人と娘さん、そして娘さんのご家族のことを『我が家の準レギュラー』と勝手に思っている。そう思えるくらいの長い時間を、彼らと過ごしてきたからだ。
(「勝手に準レギュラーにしてくれるな」と言われたら、それは、もう、ごめんなさい。笑)
おじいちゃんとはラジオ体操デートに出かけ、おばあちゃんとは布団の上に寝転がってお喋りをし、最近では、おばあちゃん、娘さん、母、姉、私というメンバーで女子会を開いたこともあった。
ある日。
おばあちゃんに会いに行ったとき、彼女は楽しそうに笑いながら言った。
おばあちゃん「川柳を始めたの」
私「お、いいね」
おばあちゃん「TVで見て、いいなと思って」
私「何歳になっても趣味を持つのはいいことよ」
おばあちゃん「小学生の私が知ったら、驚くべきことよ」
私「確かに。笑」
過去に、おばあちゃんは、小学生の頃の思い出を話してくれたことがあった。
当時の担任の先生から本を貸し出されて、読書感想文を書いて提出するように言われたことがあり、今でも時々思い出して恥ずかしくなると言っていた。
おばあちゃん「あの先生、何がしたかったのかしら。私、文章書くの下手くそなのに」
私「っておばあちゃんが思っているだけで、先生は、おばあちゃんに文才があるのを見抜いていたんじゃない?」
おばあちゃん「違うと思う」
私「違うんかい。笑」
ノートに並ぶ川柳を眺めながら、2人でそんな話をして笑った。
また別の日には、こんなことを言っていた。
おばあちゃん「ここから見たら、おじいちゃんと目が合うと思わない?」
おばあちゃんの布団から見上げた先には、亡くなったおじいちゃんの遺影が飾られていて、確かに目が合うと言えば合う位置だった。
私「そうだけど、いいじゃん。おじいちゃんが、見守ってくれてて」
おばあちゃん「えー、怖い」
私「怖いんかい。笑」
おばあちゃん「だから目が合うと、いつも『あっち向いて!』って言うの」
私「優しくしてあげて。笑」
おばあちゃん「だって、怖い。今も、目合ってるし。あっち向いて!」
私「やっぱり怖いんかい。笑」
2人で久しぶりに並んで布団に座って、話す内容がこれなのは、さすがにおじいちゃんも苦笑したと思う。
でも、おじいちゃんやおばあちゃんと過ごした時間はどれも愛しくて、忘れられない。
おばあちゃんが亡くなったのは、こんな日常がずっと続くと思っていた矢先のことだった。
あまりに突然のことすぎて、しばらく呆然としてしまった。
幸運だったのは、娘さんとご家族がおばあちゃんのそばにいたことだ。
とはいえ、お通夜と告別式を終えても、どこか受け入れられていなくて、
「おばあちゃんが亡くなったのは嘘で、帰って来るのでは?」
という希望的観測が強すぎたからか、私を心配したからなのか。
初七日を迎えた日、おばあちゃんが夢に出て来た。
車椅子に乗ってやって来たおばあちゃんが、
おばあちゃん「むぎちゃんはいるかな?留守かな?」
と家の前で話すのが聞こえて、私は母を呼んで慌てて家を飛び出した。
おばあちゃんのそばには、車椅子を泣き笑いを浮かべて押す娘さんもいた。
私「おばあちゃん、大丈夫?」
おばあちゃん「心配かけてごめんね」
ほら、やっぱり大丈夫だったじゃない。
でも、お通夜と告別式も終わったし……。
ああ、これは夢なんだ。
と理解しているはずなのに、夢というのは不思議なもので、私は、おじいちゃんの姿がないのを本気で不思議に思って、お隣さんの家に勝手に上がり込むというド失礼なことを夢の中でやってのけた。
誰もいない部屋を見渡して、外に出ると、おばあちゃんに聞いた。
私「おじいちゃんは?」
おばあちゃん「おじいちゃんは、いないの。今は」
私「そうなんだ」
今はいない、ということは四十九日を過ぎたら会えるんだろうな。
と思っているうちに、おばあちゃんは、
おばあちゃん「また来るからね」
と言って手を振り、それに応えて手を大きく振っていると目が覚めた。
また来てね。
私は、おばあちゃんに向けて、そう呟いた。
それからしばらくして、お隣さんの家は綺麗に片付けられて、何も無くなった。
「おじいちゃんとおばあちゃんは元気だな」と家の前を通りかかったときにいつも見て、安心していた部屋の暖かい灯りも、ベランダから微かに見えていた花も見えない。
母方のおじいちゃん、おばあちゃんの家を片付けたとき以来の何とも言えない感情を久しぶりに感じた。
でも、大丈夫。
愛してもらった記憶がある限り、その存在を思い出す限り、私達は記憶の中でいつでも逢える。
だから、また逢う日まで元気でいてね。
私も、それなりに元気でいるからね。
またね。
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