ラジオ体操、第一!
どうも、私です。
今日は、「久しぶりに、お隣さんのおじいちゃんとラジオ体操デートをした話」をします。
お付き合い下さい。
◆
私には、沢山のおじいちゃん、おばあちゃんがいる。
父方のおじいちゃん
母方のおじいちゃん、おばあちゃん
そして、今回話すお隣さんのおじいちゃんとおばあちゃんだ。
母が子供の頃からの付き合いなので、姉も私も大変お世話になった。一緒にカレーライスを食べたり、昼寝をしたり。
今でも、家族同然の付き合いをさせて頂いている。ありがたい限りだ。
そんな私には子供の頃、夏休み限定の楽しみがあった。
お隣さんのおじいちゃんとのラジオ体操デートだ。
毎朝6時半前に家の前で待ち合わせて、手を繋いで出かけて行く。そして、ラジオ体操が終わったら、来た道をまた手を繋いで帰る。
それが、私とおじいちゃんの夏休み限定のルーティーンであり、デート(と私は呼んでいる)だった。
(姉もこのデートに一時期参加していたので、おじいちゃんはモテ男である)
この光景を見た私達の間柄を知らない人達からは、私達を本当のおじいちゃんと孫だとよく勘違いされ、慌てて訂正したものだ。
ラジオ体操デートをしなくなってからも、見かければ他愛無い話をしたり、体調が悪いと聞いた時には母が差し入れを持っていたり、と今までと変わらぬ付き合いをしていた昨年冬のある夜。
お隣さんのおじいちゃんが、亡くなった。
おばあちゃん、母と一緒に臨終に立ち会ったのだが、悲しみに暮れるおばあちゃんを慰められたかどうかは記憶が曖昧だし、おじいちゃんの寝顔があまりにも安らかで、肩をツンツンすれば起き出しそうなほどだった。
お通夜と告別式には私達家族も参列し、おじいちゃんの遺影を眺めながら、私は少しずつ現実を受け止めた。
おじいちゃんは、旅立ったのだ。
先に旅立った母方のおじいちゃん、おばあちゃんと同じ場所に。
お隣さんであり、お隣さんではない。家族同然のおじいちゃんがいなくなったことに、私は猛烈に悲しくなった。それは父も母も姉も、同じだったと思う。おばあちゃんを始めとするご家族の皆さんは尚更のことだ。
焼香の順番が来た時、私はおじいちゃんに言った。
うちのおじいちゃんとおばあちゃんがいるから、心配しなくていいよ。
また、ラジオ体操デートをしようね。
そう言った次の日の朝。
告別式に参列しようと、家で出かける準備をし始めた時だった。姉が偶然つけたTVから、明るい声で聞こえてきたのだ。
「ラジオ体操、第一!」
その瞬間、私の脳裏におじいちゃんの声が聞こえた。
むぎちゃん、おはよう。
ラジオ体操、しに行こうか。
おじいちゃんの、低くて優しい声と、柔らかい笑顔。差し出される大きな手。
「やるしかないでしょ」
私と姉は準備もそこそこに、思ったよりも早いデートのお誘いに苦笑しながら、久しぶりのラジオ体操に勤しみ、告別式の会場で、おじいちゃんに言った。心の中で笑いながら。
おじいちゃん、ラジオ体操デートに誘いに来てくれたでしょ?
久しぶりだから、ちょっと楽しかった。
次は、私がおばあちゃんになって、そっちに行ってからね。
またね。
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