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青春の流しそうめん
小学六年生の夏。
女子4人で公園で流しそうめんをした。
竹でする流しそうめんって夢あるよね、やったことないよねって話をしていたら、ムードメーカーのななちゃんがやろうよ!と言った。
いいね!やろうやろう!ってなった。
その週の土曜日、いつもの公園にそれぞれ自転車で集合して、大きな坂道を登らないと行けないホームセンターまで竹を買いに行った。
夏なので暑かった。
大きな坂をカマキリ自転車で立ち漕ぎでゼーハーゼーハー言いながら登った。
今思うとなぜあの形の自転車を好んでいたのだろう。
太陽も容赦なくわたしたちに攻撃してきた。
登り始めてすぐに、流しそうめんなんてしたくない涼しい家で美味しく食べたい今すぐ帰りたいと思ったけれど夢を叶えるためにその言葉は口にしなかった。
汗だくになりながら無事ホームセンターに着いた。
竹を1本買った。ホームセンターのおじさんに竹を縦に切って欲しいとしっかり者のるうちゃんがお願いしてくれた。
おじさんは流しそうめんするの?公園で?すごいねと言いながら竹を縦に切ってくれた。
長い竹を道の邪魔にならないように、自転車にひっかけて片手で支え順番交代で公園に向かった。
器、割り箸、めんつゆ、そうめんを4人で分担して持参した。
わたしはそうめん係だった。
朝からそうめんを茹で、母が用意してくれていたおにぎりをタッパーにつめて保冷バックに入れて持ってきた。
母に公園で流しそうめんをすると伝えると、そんなうまくいくかなぁと笑っていた。
水道のところに竹をセットし、1本だった竹はおじさんが切ってくれたおかげで2本だったので、せっかくだから長い流しそうめんしたいよねってことでしっかり者のるうちゃんが紐を持ってきていた。
小学生六年生準備良すぎないか?
グラグラだったが、なんとか竹は繋がった。
しかし問題が発生した。
竹を斜めにしないと水もそうめんも流れない。
みんながそれぞれ持っていたカバンなどでなんとか斜めになり、無事水が流れた。
いよいよ夢が叶う瞬間が来た。
みんなのテンションはMAXだ。
ムードメーカーのななちゃんが、私流すから先食べていいよと言ってくれた。
ではでは、遠慮なく。
そうめんが、流れてきた。流れるそうめんを見た。
初めての光景にみんなワイワイ言いながら楽しんだ。
途中で他の小学校の女子達がきて
「何してんあの子ら。やばいやつらやん」
「野蛮人やん」
と悪口を飛ばしてきた。
確かに公共の場で水道を陣取って流しそうめんをしているわたしたちは野蛮人で間違いはない。
それは大人になってから反省した。
みんなしっかり聞こえているけど、目の前の流れるそうめんにテンションがあがっていたので、野蛮人ってゆわれたねって笑いながら目の前のことだけを心の底から楽しんだ。
散歩していたおばあちゃんには褒められた。
次の週の月曜日。ななちゃんが公園で流しそうめんをしたと朝礼のスピーチでみんなの前で話した。
ななちゃんとるうちゃんが同じクラスで、さっちゃんとわたしが同じクラスだった。
そんなスピーチをしているなんてわたしとさっちゃんは当然知らなかった。
放課後、わたしたち4人は先生に呼び出されこっぴどく怒られた。
しかし担任の先生は半笑いで怒っていたので、今度する時は混ぜてあげようと思いながらわたしはさっちゃんの後ろに隠れて笑いを堪えるのに必死だった。
ななちゃんはなんで怒られなあかんのよ!と、反抗していた。ななちゃん、無駄な反抗はよせ、わたしたちが悪いのだ。
るうちゃんは笑いを堪えている私に気づいて、笑ってしまったらめっちゃ怒られていた。
さっちゃんはひたすら、すみませんすみませんと反省の意を見せていた。
20年経った今でもわたしたち4人は仲良しだ。
ななちゃんが最近大きな庭があるマイホームを建てたので、今度は公園ではなく庭で流しそうめんをしようと思う。
青春をありがとう。