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HANAKUSO
朝、布団を畳む時。
わたしが畳む日もあれば、ブロッコリーが畳む日もある。わたしが畳む日は90%もしくは98%の確率でブロッコリーの布団に化石になったHANAKUSOが落ちている。
最近早起きを頑張っている。
早起きといっても8時だが、仕事をしている人や子どもを保育園に通わせている人からすれば8時で早起きなんてと軽く炎上してしまうかもしれないが、わたしにとって8時起きは一般的に言えば5時起きのようなものだ。毎朝太陽が眩しい。
朝が弱いわたしがなぜこんなにも早起きを頑張っているか気になった人はこの世に一人もいないと思うが、一応言わせてもらうと朝から珈琲を淹れることが楽しいからだ。
珈琲を淹れるわたしの横で脚立に乗った息子がドリッパーからぽつぽつと落ちる珈琲を眺めている姿がなんとも愛らしいのでやめられない。
たまにNHKのいないいないばぁが流れる時間と被ってしまった時は、珈琲を見たりわんわんを見たり最終的にはわんわんの方に行ってしまうので寂しい。
わんわんとはおじさんみたいな犬の着ぐるみのことである。
そんなわんわんは現在わたしのライバルであり、助っ人である。
わんわんいつもありがとう。
珈琲を淹れるとブロッコリーを起こしにいき、ブロッコリーは毎朝寝起きで珈琲を飲んでいる。
3人でひと段落ついた後は、洗濯物、お風呂洗い、食器洗い、布団を畳む、息子の着替えと歯磨きなどをブロッコリーと分担して動き始める。
今日はわたしが布団を畳む係になったので、ブロッコリーの布団を畳もうとすると化石が3個ほど落ちていた。ブロッコリーの化石を拾うのは嫌なので
「ブロッコリー!HANAKUSO落ちてます、拾いに来てください!」
隣のリビングにいるブロッコリーに叫ぶ。
「僕のとは限らない」と叫び返してくる。
は?
おめーの布団に落ちてんだよ、おめーの化石だろうがと少しイラッとしたので心の中でぼやく。
「ブロッコリーの布団に落ちてるの、捨てに来て!」
「なんで?僕のじゃないかもしれないのに」
は?
ごちゃごちゃ言ってねーでさっさと拾いにこいやクソ野郎とさらにイラっとしたので心の中でぼやく。
さすがにイライラしてきたので
「HANAKUSOぐらい拾いに来てくれない!?」
「今、オムツ変えてるの!」
は?
なら先それ言えや!オムツ変えてくれてるならわたしが拾うわ!オムツを変えているという情報さえわたしの中に入っていればわざわざ頼まないわ!
この時のブロッコリーの回答が
「今オムツ変えてるからごめんだけど麦ちゃん拾ってくれる?ごめんね!」
だったら、この件は平和に終わっていた。
「僕のHANAKUSOじゃないかもしれないじゃん」
から始まった回答だ、もうこれはブロッコリーから戦争を吹っかけてきたようなものだ。
「なら最初からそう言ってくれたらいいんじゃない?」
「僕のHANAKUSOだって決めつけるから」
もう誰のHANAKUSOでもなんでもいいわ。
少しの会話の歯車が噛み合わないせいで人と人は争いをはじめるのだろう。
わたしが化石を拾い(なんとなく嫌だったのでティッシュで拾った)ブロッコリーにオムツを変えていることを伝えてほしかったと言った。
しかしブロッコリーはHANAKUSOぐらい拾ってくれたっていいじゃんという意見だったので、これはもうお互い寛容にならなければ拉致が開かないと思ったが、お互い怒っているので両者一歩も譲らない状態が続きわたしは洗い物をしながら怒っていた。
「なんでHANAKUSOでそんなに怒られなきゃいけないのさ」
「HANAKUSOで怒ってるんじゃない、君の会話能力の低さに怒ってる」
「意味わかんないよ」
「だからオムツ変えてるからHANAKUSO拾ってって言えばすんだ話でしょ?」
とあまり普段から大声を出さないわたしだが、つい大声をだしてしまった。
それと同時に振り向いた時、HANAKUSOという単語が飛び交いながら喧嘩をしている様子がかなり面白い事に気づきもう我慢ならず笑ってしまい許してはいないがもう怒れなくなってしまった。
わたしが笑ってしまったのでもうなんでもいいが、ブロッコリーはまだ僕のHANAKUSOじゃないかもしれないのにと言っている。シンプルにしつこい。
絶対ブロッコリーのHANAKUSOなのに。
1st HANAKUSO
〜 僕のHANAKUSOじゃないかもしれないのに 〜