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単語と会話

先日、ブロッコリーと朝から喧嘩をした。

朝起きるとブロッコリーは洗濯物を干してくれていた。昨夜、ブロッコリーは会社の社員ミーティングで帰りが遅かった。
おはようと挨拶を交わし、ふとテーブルを見るとドリップパックコーヒー2袋が綺麗にラッピングされているものとローストポークとだけ書いた商品券のようなものが置いてあった。

「これなに?」

「どれ?」この時のブロッコリーの言い方が少しキツく聞こえたのでわたしはイラッとした。

「普段家にない物がここに置かれてるんやからわかるやろ、コーヒーとローストポークの事聞いてるねん」

「麦ちゃんはいつも主語がないから分からないんだよ」

これに主語が必要なことがわたしには分からない。

「このコーヒーとローストポークのチケットなんやねんって聞いてるねん」

「もらった」

見たら分かるわ!!!もらうまでの経緯をなぜすぐ話せないんだ!?

「いやいや、見たら分かるわ」

「なんで朝から怒られないといけないの?」

「会話能力低すぎるねん」

「ちゃんと答えてるじゃん」

「君は会話をしているんじゃない、単語で答えているだけ」

「意味わかんないよ」

「知能の低いアレクサみたいに答えんなってゆうてるねん」

ブロッコリー、今日の天気は?と心の中でつぶやき勝手に挑発した。

「なんでそこまでゆわれなきゃなんないのさ」

「きも!!!」

午前7時40分頃だっただろうか、朝一から喧嘩が始まった。もうすぐ1歳の息子は喧嘩をしているということを分かっていないのでわたしとブロッコリーが話す度にキャッキャッー!と笑い、その度にわたしもブロッコリーも息子にはかわいいね〜笑ってるの〜とデレデレしながら話しかけ、空中戦では真顔で戦闘モードに切り替えていた。

わたしは基本的には綺麗な言葉遣いをしてきた人間だ。しかしブロッコリーと結婚して過ごしていると理解できないことが多すぎてブロッコリーだけに口が悪くなってきている。これは本当に良くない。

身軽に家出をしようと思ったが、次の日わたしは友達と遊ぶ予定があったので家出はしなかった。
その代わりに普段は財布の紐は硬いが、ショッピングモールで謎の爆買いをした。

その日の夜ご飯もショッピングモールで自分だけにお刺身やステーキ、ケーキを買い、息子を早めに寝かしつけひとりで美味しくいただいた。
もちろんブロッコリーの夜ご飯は作らなかった、わたしは喧嘩をするとブロッコリーの全てのことをしない。

次の日の朝、ブロッコリーが馴れ馴れしく話しかけてくるので無視をし続けた。
それでもなにもなかったかのように話しかけてくるので、先に謝るように言い、ブロッコリーはごめんねと言ってくれたので仲直りをした。

「なんで怒ってるかわかってる?」

「僕が夜お風呂に入らずにソファで寝落ちしちゃうから」

!?!?!?
おいおい、天然か!?遠回しの挑発か!?
わたしはブロッコリーの会話力にムカついてるのだ、もちろん寝落ちすることも生活レベルが低いと前々から口うるさく言っているが今回はどう考えても違うだろう!?

「まじで、言ってる…?」

「それ以外になにに怒ってるのさ?」

今すぐ語尾に「さ」をつけるのをやめてくれ。

「昨日会話力の話したよね?君は会話じゃなくて単語で返事するからこっちがひとつひとつ聞かないと会話が進まないって話したよね!?」

ブロッコリーはきょとんとした顔で黙り込み

「麦ちゃんはなにをそんなに怒ってるの?」

「会話を、してほしいだけ!!!」

「難しいなぁ、努力はしてみるよ」

会話に努力する必要があるのかと思いながらも、わたしの普通とブロッコリーの普通はかけ離れているのでしばらくは会話の努力を様子見しようと思う。

ブロッコリーはわたしと結婚してから色々努力して人間らしくなってきているが、まだまだ時間はかかりそうだ。

ブロッコリーにはいつもイラッとするが喧嘩するたびに的外れな返答をしてくるのでそれはそれでわたしの楽しみでもある。

ブロッコリーとスムーズな会話のキャッチボールができる日をわたしは楽しみに待っている。

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