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気まぐれひとりごと(スピリチュアルなんて信じていなかった私が信じるハメになった出来事)
零感だけど
何故かスピリチュアル系の人と縁が深いです。
事の発端は
20代の頃派遣先の職場で出会った
男の人でした。
その人はSさんといって
当時すでに30代終わりくらいの人でした。
Sさんは見た目も雰囲気もふつうの人で
とりたてて目立つところはなかったのですが
いつでも沈着冷静で
ときどきぼーっと虚空を眺めているのが
不思議でした。
でもそれだけで
ふつうに会話もできる人だし
周りへの気遣いもできる人。
独身でひとり暮らしとは聞いていましたが
いい人なのになんでかなーと
自分も派遣社員のくせに「非正規だからかな?」
と思っていました。
そんなSさんとは
ふたりタッグである作業を進めていたのですが
ある日突然
こんなことを言われました。
「ねぇ、妹さんは大丈夫?」
わたしと妹は当時仲がすこぶる悪く
頑固で意固地なわたしと
自由を求めて身勝手なことばかりをする妹という関係で
そのうえ妹はそのとき
浪人して入った学校を中退してまで
上京した彼氏についていったので
2年くらいまったく連絡をとっていませんでした。
Sさんにそんなこと話したっけな?
と思いつつ
「全然連絡とってないんですよ〜」
と答えます。
するとSさんは
「あのね、変なこと言ってると思うけど聞いてくれる?」
と、作業の手を止めずに続けました。
「麦さんの妹さん、今色々と大変なことになってるみたい。でも家族に連絡するのは気が引けてできないんだね。心細いし助けてほしいんだけど、拒絶されるのが怖くて身動きがとれないんだ。でね、たぶんだけど、そのうち妹さんから麦さんになんらかの形でSOSが来ると思う。そうしたら妹さんからのヘルプを受け入れてあげて。そうじゃないと大変なことになるから」
わたしはこのとき
「何言ってるんだこいつ」
と思いました。
わたしに妹がいることは
何かの拍子に知ったのだとしても
なんでこんな意味深なことを言ってくるのだろう。
でも
普段はこんなことを言ったりしないSさんだったので
なんとなく
「分かりました」と頷きました。
それから数ヶ月。
妹からの連絡もなく
何事も起きず。
平穏な毎日が過ぎていきました。
その頃にはSさんから言われた言葉も忘れて
Sさんもその話を
蒸し返すことはありませんでした。
しかし
それから1年くらいした後。
妹から突然手紙が届いたのです。
宛名は姉である
わたしのものになっています。
その辺でよく見るレターセットで届いた中身には
ひたすら謝罪の言葉が並んでいました。
『お姉ちゃん、今まで迷惑をかけてごめんなさい。こんなに弱くて、駄目な妹でごめんね。許してほしいとは言いません。でもどうしたらいいか分からなくて手紙にしてしまいました。わたし今すごくすごくつらくて、どうすればいいのか分かりません。ごめんなさい。駄目な妹で本当にごめんなさい…』
祖母が危篤のときにも
初彼氏フィーバーでお見舞いにも来なかった妹。
父親が大怪我をして入院したときにも
明らかに朝帰りという風体で
露出の多い格好で病院にやって来た妹。
どんなに恥ずかしかったか知れません。
祖母が今際の際
父親が不在で母親も心身を病み
大変な時によそで寝泊まりして
帰っても来ない妹の顔を
張り倒して
「色欲女は出ていけ‼」と罵倒しました。
「家族の一大事にろくに学校も行かず、そんなに男と乳繰り合いたいならずっとその男の所にいろ‼もう帰ってくんな‼」
そう言って叩き出したのが
妹との最後でした。
それなのに何故
そんな姉のわたしに手紙なんて
送ってきたのでしょう。
わたしはそのとき
「今更なんだ」
と思ってしまって
「虫が良すぎる」
と思ってしまって
妹の手紙を見て見ぬふりしてしまいました。
その数日後
妹の同棲相手から
「妹が薬の過剰摂取をして救急搬送された」
との連絡がありました。
この同棲相手に他に女ができ
一緒に住んでいたアパートに
彼氏がなかなか帰ってこなくなって
心を病んだうえでの
衝動的な行いだったそうです。
幸い一命はとりとめましたが
妹はそれから
何度も自殺未遂をはかりました。
同棲相手にも手の施しようがなく
両親も目が離せないというので
妹はそれでも
彼氏から離れることを嫌がっていましたが
当の彼氏から
「もう付き合っていけない」
と突き放されたことで
ようやく諦めがついたようでした。
その件でわたしは
ちょこちょこと仕事を休むようになり
事が落ち着いて久しぶりに出勤したとき
Sさんから
「大丈夫だった?」
と尋ねられました。
その瞬間ようやく
以前の忠言を思い出して
バツが悪くなったわたしは
Sさんに妹との顛末を打ち明けました。
Sさんは
忠言を無視したわたしを責めるでもなく
「そっか。でも妹さんが無事で何よりだったね」
と言ってくれました。
「麦さんには話せると思ったから話したけど、僕の言ったことはそんなに気にしなくていいよ。なんかごめんね」
「いえ、すみません…せっかく。あの、でもなんで分かったんですか?妹のこと話したことありましたっけ?」
Sさんは少しだけ迷ったようでしたが
いつもの世間話のように
自分のことを教えてくれました。
Sさんにはいわゆる“霊感”というものが
子どもの頃からあって
それによって色んな経験や
大変な目に遭ってきたそうです。
Sさんに分かるのは
亡くなっている人の存在
その土地の記憶のようなもの
予知夢
近しい人の体調や思考(これはなんとなく)
色んなものに纏うオーラ
などだそうです。
「オーラなんかは、その人の三等親なのかなってくらいまでは、その人を通して視れるんだ。視ようとすればなんだけどね」
「麦さんの妹さんは、なんていうのかな〜生霊って言ったら分かる?生霊みたいにして麦さんの体に、妹さんの苦しみがくっついてたんだよね。妹さんすっごく病んでるんだろうなぁって、このままじゃ死んじゃうかもってつい慌てて」
「麦さんはね〜すごくエネルギッシュなんだ。オーラも弾けるような強い色をしてるよ。赤メインだね。青っぽいところもあるけど…しかもその青が深いんだ。黒っぽい青をしてる。基本はポジティブなんだけどその反面…ってところかな」
「麦さんはいい意味で鈍感だし、ちょっとした厄とか悪意なんてものは跳ね返しちゃうから、そのままでいいと思う。けど、たとえば気持ちが良く感じる場所とか神社に行ったときは、もう少し気を緩めていいかもね。そのままだといいパワーも跳ね返しちゃうから。本当に危ない心霊スポットでもたぶん大丈夫な人だけど、その代わり凄くいいパワースポットのご利益も得にくいタイプかな」
などなど…
Sさんは
それでもまだ半信半疑という顔をしていたわたしに
色々なことを教えてくれました。
Sさんはその後
東日本大震災を区切りのようにして
わたしの住む地域から去っていきました。
本当に煙のように
いつの間にかいなくなってしまっていたので
今となってはSさんが
この世界をどう見ていたのか
どう感じていたのかは分かりません。
けれど
このSさんとの出会いがあったから
わたしの人生は間違いなく一変しました。
Sさんとのお話は
まだもう少し続くのですが
Sさんがいなくなった数年後
また新たな出会いがあろうとは
このときのわたしは
思いもしませんでした。
それでは
続きはまた次回。
今日もいちにち、ご無事で何より。