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:感想: 三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実

2020年
監督:豊島圭介


基本はドキュメンタリーだが、当時の関係者による語りや、現代の識者らによるコメントもある。展開された議論は抽象的で、理解の難しい場面もあるが、この解説にかなり助けられた。

暴力に訴えるのではなく、言葉によって正面から議論する。この姿勢が、映像だけ見ていても伝わる。お互いに敬意を表しているのがよく分かる。もちろん対立する部分はあるし、言葉で圧倒してやろうという気持ちもあるだろうし、ものすごい気迫も感じるのだが、短絡的な結論を求めようとはしない。

現在、私は学生で、それなりに真面目なつもりではある。しかし、彼らの社会の現状に対する洞察、他者への尊敬、そして勉強量はとても敵うものではないと思った。とても反省している。

SNSを見ていると、情報が毎日大量に流れてゆき、その中で、小競り合いや炎上が毎日繰り返される。情報の洪水の中では抽象的な言葉は排除され、結果がすぐに示される。

社会への影響力は、豊富なボキャブラリーがなくても、お金がなくても、人脈がなくても、誰でも持てる時代になった。

思想を表現するためには、時間もかかるし教養も必要だ。他人を理解することなど、インターネット上では到底できない。しかし、どうやって理解すればいいのか、納得できなくても共存できるのか、それを考える余裕は無い。それなのに、たくさんの人が意思表明を行い、それらは共存できていないように思う。

現代ではこのような議題を議論する場は無いのかもしれない。しかし私は、議論には、言葉や人との繋がりには、意味があると信じたい。実際に、この映画は私の心を動かしたのだから。

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