再び、インド料理屋の日々が始まるなんてね。スパイス村エピソードゼロ①
「今からちょっと、群馬県についてきてくれる?」
2024年2月下旬。
子供たち3人と1年4か月という期間をインドで暮らしていた夫のカーンくんが子供たちを置いてひとりで10日間くらい日本に帰って来ていた時のこと。
そもそもは何をしに帰って来たのかいまだによく分かっていないけれど、春には子供を連れて帰国し、その際には何かしら仕事をして、今インドの実家の隣に絶賛建設中の4階立ての結婚式会場の建設費用も作りつつ、インドと日本を行ったり来たりするための経済的・物理的拠点を作りたいと考えての帰国だったんだと理解しているのだけど、
とにかく2月のある日、私はカーンくんの運転する車の助手席から、東京から群馬県のある場所を目指す果てしない道のりを眺めながら
「群馬県・・・?なぜ急に群馬県・・・?」と心の中で呟いていたのでした。
車を走らせること、およそ2時間。着いた場所は3階建ての、横に長い大きな建物で「大小宴会 間下会館」って書かれた看板がドーンと立ってて・・・
カーンくんに着いて建物の中に入っていくと、これがまた広い広い。最盛期には、きっといくつもの宴会が同時に開かれていたんでしょうねっていうお座敷やテーブル席のある広間が1部屋、2部屋、3部屋、4部屋、あれ、まだある?.....いやいやいや、でっかいな。
その大きな宴会場を支えてきたのであろう厨房も大きくて、たくさんの職人さんたちがこの厨房で料理の腕を振るったんだろうなっていう風景が想像できるのと同時に、その場にいた人たちがある日突然まるっとそのままいなくなってしまったんじゃないかって感じるくらい、ウスターソースやお醤油が入ったままの冷蔵庫とか(もちろん電気は止まっている)、鯖や鮭の缶詰めとか、2023年9月までの手書きで書かれたスタッフのシフト表とか、いろんなものがこびりついて錆び付いた大きなガスコンロとか・・・
そんな場所をカーンくんの後ろについてぐるりと一周しながら『これは...この流れは...来るよね、多分この後カーンくんが放つ言葉が読めたぞ』って思ってたんだけど、案の定。
『ココでお店をやろうと思うんだけど、どうかな?』
で、出たー!やっぱりそんな事考えてたー!!
いや〜、インドと縁して20年。これまで数え切れないくらいの山あり谷ありを乗り越えてきたけど、まだまだ新しい山が現れるのね。
カーンくんがカーンくんらしく自他共に喜びのある仕事が出来たら良いねとはいつもいつも思ってはいるけど。とはいえ、現実的に、よ。
なぜ、群馬県!!なぜ、こんなにでっかいの!!
挑戦するにしてもそんな遠くじゃなくても!!挑戦するにしても、知ってる人が誰もいない土地じゃなくても良いのでは?
歴史のある大きな間下会館の建物の前で、この場所に来るまで想像だにしなかった展開を前に正直ものすごく困惑したのが2023年の2月。
スパイス村エピソードゼロ②に続く